2022 Fiscal Year Research-status Report
Research on financial risk management using bias-reduced nonparametric extreme quantile estimator
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22K01431
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
川崎 能典 統計数理研究所, モデリング研究系, 教授 (70249910)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 金融リスク管理 / 時系列解析 / 統計的極値理論 / リスク尺度 / バイアス補正 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の第一は、統計的極値理論を利用した金融リスク管理の方法としてGARCH-UGH法を提案することにあったが、その内容が査読付き英文学術誌Quantitative Financeに掲載された。提案した手法は、損失率時系列にまずGARCHモデルをあてはめ、その標準化残差に極値理論をあてはめるものであるが、パラメトリックな極値分布(一般化パレート分布)をあてはめるのがMcNeil and Frey (2000, J Empiric Financ)のGARCH-EVT法であり、GARCH-UGH法はバイアス補正したHill推定量を利用するノンパラメトリックなモデリング法である。論文では、4種類の金融時系列に対して、GARCH-EVT, GARCH-UGH, GARCHなしのUGHの3つの方法を、信頼水準(3通り)と推定に使う順序統計量の割合(5通り)を変えながら、1日先のバリュー・アット・リスク(VaR)予測値の精度を比較検討した。経験超過数の観点からは、全60ケース中47ケースでGARCH-UGHが最も優れており、経験超過率の適合度検定をパスしないのは、GARCH-EVTで6ケース、GARCH-UGHは2ケースだけだった。 この結果を受けた次の段階としてリスク管理手法の対比較を、今年度はまずリスク尺度をVaRに固定して行った。対比較のためには、分位点の予測値と実現値との距離を測るスコア関数が必要であるが、VaRに対してはある形のスコア関数族が対応していることが知られているので、典型的な2種類のスコア関数定式化を採用し、Diebold-Mariano検定で比較を行った。円ポンド為替レートのデータに対して様々に条件を変えて比較したところ、GARCH-EVTよりGARCH-UGHのほうが選ばれるケースが多かった。結果は複数の研究集会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の方法論的根幹であるGARCH-UGH法を提案した論文が学術誌に掲載された。次なる課題は、金融リスク管理手法の対比較であるが、リスク尺度をVaRに限った分析ながら、GARCH-EVTとGARCH-UGHの比較ができるようになった。交付申請書に記した研究実施計画に照らして、概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
リスク尺度を期待ショートフォール(ES)にした際の分析を行う。対比較型バックテストの前に、適合度を見るタイプのresidual exceedance法、conditional calibration法、ES回帰法に基づき数値実験・実証分析を行う。これらは個々のESの推定が妥当か否かを検定できるが優劣の比較はできないので、引き続きDiebold-Mariano検定による対比較を行う。 更に、GARCH-UGH法に基づく多期間予測(10-day VaR)の実装に関する研究を行う。そのパフォーマンスが例えばGARCH-EVT法に基づく10-day VaRと比較して優位性があるかを調べ、更にその議論が10-day ESにも拡張可能かどうかに関する研究を行う。現時点での素朴な方針としては、10期先予測のパスを多数発生させ、それぞれに対してGARCHフィルタを適用し、得られた複数のイノベーションの和集合から上位20%~25%にUGH法を適用することが考えられる。VaRで合理的な方法が確立できれば、ESでの多期間予測は、ここまでの成果を利用して研究を進めることができると考えられる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、令和4年度の殆どの期間で海外オンサイト開催の国際研究集会での発表申込を手控えたことと、年明けに台湾で開催された国際会議で研究発表を行ったものの旅費としては大きな支出とならなかったことから、旅費の未執行分は次年度使用額とした。物品費からの計算機購入については、現有機器の性能に鑑み令和5年度に行うのが得策と判断し、令和4年度は分析用ソフトウェアの購入に物品費の一部を充て、未執行分は次年度使用額とした。
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