2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K01445
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
宮澤 信二郎 法政大学, 経営学部, 教授 (30523071)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 寡占 / リスクシフト / 企業再生支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、企業の財務状況が2種の財市場での競争結果と社会的厚生への影響を分析することで、産業組織論と企業金融論の両分野において新たな理論仮説を提供するとともに、競争政策と企業再建に関する新たな政策的示唆を提供することである。令和5年度は、当初の財務状況および市場の競争度が均衡結果(各財の生産量および資金調達、各企業の利潤、および社会的厚生)にどのような影響を及ぼすのかについて、Mathematicaを用いた数値シミュレーションという手法を用いて分析し、一定の結果を導き出すことに成功した。特に、各企業の利潤および社会的厚生に関して、以下の点を明らかにした。 (1)ある多角化企業の財務の悪化はライバルの多角化企業の利潤を増加させることもあれば減少させることもあり、ある多角化企業の自己資本の水準とライバルの多角化企業の利潤との関係は逆U字型になる場合がある。リスクのない財の市場が競争的であるほど、リスクのある財の市場が非競争的であるほど、ある多角化企業の財務の悪化がライバルの多角化企業の利潤を減少させやすい。 (2)ある多角化企業の財務の悪化は総余剰を増加させることもあれば減少させることもあり、ある多角化企業の自己資本の水準と総余剰との関係はU字型になる場合がある。リスクのない財の市場が競争的であるほど、リスクのある財の市場が非競争的であるほど、ある多角化企業の財務の悪化が総余剰を増大させやすい。 (1)の結果は、従来の理論研究と比べて、実証研究の結果と整合的なものである。また、(2)の結果は、政府による破綻企業への再生支援が社会的厚生の観点から望ましくなる場合と、そうでない場合を識別するうえで有益な示唆を与えるものである。 上記の結果について、国内の研究会で口頭報告し、参加者からレビューを受けたので、現在、論文にまとめているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画に反して、論文が完成していないが、現時点で予定している分析は終えているため、「遅れている」ではなく、「やや遅れている」という自己評価になる。 令和5年度は所属機関で研究休暇を取得したため、もう少し進められると考えていたが、Mathematicaによる1件1件のシミュレーションの実行に思いのほか時間を要し、また、想定以上にエラーが発生したため、予定したシミュレーションをすべて終えるのに、予定よりも多くの日数を要してしまった。このため、論文の完成までは達成できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
予定の分析は終えているため、研究時間をより多く確保し、まずは、速やかに論文を完成させる。そのうえで、従来から利用している英文校正会社エディテージによる各種の研究支援サービスを利用して、ジャーナルへの投稿と公刊を目指す。並行して各地で開催される研究会・学会で口頭報告を行い、レビューを受ける。 必要に応じて、追加の分析を行い、完成させた論文をブラッシュアップするほか、新たな論文の執筆を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、体調不良により学会出張を取りやめたこと、および、論文の完成が遅れたことにより英文校正の利用がなかったことである。 令和6年度は、早期に論文が完成する予定なので、英文校正サービスを利用するほか、公表の早期実現のため、投稿支援サービスを利用する予定である。 研究期間終了時に生じた残額は返還する。
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