2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K01457
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
徳井 丞次 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (90192658)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地域経済学 / 地域間サービス価格差 / 商業マージン / 付加価値ベースの価格差指数 / 土地サービス投入 / 地域間生産性格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
都道府県別・品目別の価格データから、「絶対的購買力平価」の計測方法であるRao and Timmer (2000)のCountry-Product-Dummy Method(以下、CPD法)を適用してサービス分野の各産業別に都道府県間価格差指数を推計した。CPD法では、他の指数作成方法では必要となる品目ごとのシェアの情報が不要であるが、そのために加えられる仮定は、各地域の個別品目の価格は、地域間価格比要因と、品目間相対価格要因の掛け算からなるというものである。その際、以前の研究で取り扱いが不十分であった卸売・小売業の扱いに特に注意を払った。その元データは、総務省「小売物価統計調査」から、卸売・小売業の流通取り扱いの対象となる約500品目余りを対象とした。これら対象品目は、調査品目ごとに品質、性能、特性を規定し、品目によっては商標、規格、型式番号などを指定して、品質などのばらつきが影響しないようにして、調査品目ごとに地域での販売数量の多い店舗を選定して販売価格が調べられている。また、この価格データをそのまま使うのではなく、SNAマニュアルで卸売・小売業の名目生産金額を「商業マージンの総額」と定義し、日本の国民経済計算や産業連関表でもこの定義に従っていることから、対応する価格データもこれに準じて定義することにした。「産業連関構造調査(商業マージン調査)」において産業連関表中分類レベルで小売段階、卸売段階別にマージン率が調査されているので、これを品目ごとに当てはめて商業マージンを抽出する。小売価格からこれらの流通段階の商業マージンを除いたものは生産者価格になるが、生産段階の中間投入に含まれる流通マージンは「2005年都道府県間産業連関表」から卸売・小売業の投入係数を使って求めた。こうして求めた品目別マージン価格にCPD法を適用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
総務省「小売物価統計調査」から都道府県別、品目別の価格データの入力をおこなった。卸売・小売業については流通取り扱いの対象となる物品約500品目余りであり、その他のサービス産業についいては対応するサービス価格である。サービス品目の品目数は200弱で、これらの合計を47都道府県分入力したので1年当たりのデータ数は3400件余りであり、それを20年分入力した。このなかでサービス品目の価格はそのまま使うが、卸売・小売業の対象となる物品については、物品の種類ごとに流通各段階のマージン率を掛けてマージン価格を抽出した。これらの基礎データを元に、「絶対的購買力平価」の計測方法であるCPD法を当てはめて推定を行い、サービス産業ごとの都道府県間の価格差指数を5年おきに計算した。産業区分は、建設業、電気・ガス・水道業、不動産業、運輸・通信業、サービス業(民間・非営利)に加えて卸売・小売業の6業種となっている。こうして、産出価格ベースの都道府県間サービス価格差指数を作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、前年度の作業で作成した産出価格ベースの都道府県間サービス価格差指数を、生産性計測に適用するために、付加価値ベースの指数に変換する作業を行う。そのための変換式については、研究計画書に書いたように、トランスログ型の単位費用関数から既に導出しており、これにデータを当てはめて変換の計算を行う作業が残されている。このためには、産出価格ベースの都道府県間サービス価格差指数に加えて、地域別産業別の付加価値率と地域別産業別の投入財ごとのコストシェアが必要になるが、それらについては都道府県間産業連関表(RIETウェブサイトで掲載)からデータを得ることができる。さらに3年目には、生産性に与える地域の立地条件を加味するために、都道府県別、産業別の土地投入を推計し、これらを反映させた地域別、産業別の生産性分析を行う計画である。2023年度中に作業時間の余裕ができれば、土地投入推計のための基礎データの収集、入力作業にも取り掛かりたい。
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Causes of Carryover |
2022年度分の予算は大部分を順調に支出し10万円余りの次年度使用が生じただけである。これらを含めた2023年度予算は、土地投入推計のための基礎データの収集、入力作業、関連文献の購入などに充てる予定である。
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