2022 Fiscal Year Research-status Report
The Effects of Advances in Automation Technology on Economic Society: Analysis with Two-Sector Growth Models
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22K01476
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 啓明 京都大学, 経済学研究科, 教授 (70534840)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 経済成長 / 自動化技術 / 所得分配 / 経済厚生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,2部門内生的成長モデルを構築して,人口知能(AI)やロボットに代表される自動化技術の進展が,経済成長,雇用,賃金,所得分配,そして所得格差に与える影響を理論的に分析し,さらに,数値シミュレーションに基づく将来予測を行い,自動化技術が進展する経済社会のより良きあり方を経済学の視点から政策提言することである.昨今,自動化技術の進展が経済成長等に与える影響が盛んに分析されている.しかし,先行研究の多くは,生産された最終財が費用ゼロで自動化技術(自動化資本)に転用可能な1部門・1財モデルに基づいており,最終財と自動化資本の差異を十分に考慮していない.自動化技術の進展が経済に与える本質的影響を分析するためには,最終財と自動化資本の異質性を考慮した2部門モデルが必要となる.
本年度は,既存の2部門内生的成長モデルを参考にして,最終財生産部門と自動化資本生産部門が存在する2部門内生的成長モデルの構築を試みた.その際,当初計画に従い,代表的家計が生涯予算制約の下で動学的最適化を行うという設定をした.分析を簡単にするため,さらには,妥当な結果が得られるかどうかを確認するため,最終財生産部門と自動化資本生産部門の生産関数がともにコブ=ダグラス型である場合をモデル化した.これを基本モデルとして計算を進めたところ,解析的手法により分析可能なことが明らかとなった.ただし,代替の弾力性が1であるコブ=ダグラス型生産関数を用いると,自動化資本が蓄積され,したがって自動化が進展していくにつれて,労働分配率が継続的に低下していきゼロに向かうため,これは現実的ではないと言える.今後はより現実的な結果が得られるようにモデル設定を工夫する必要があることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,2部門内生的成長モデルを構築して,自動化技術の進展が,経済成長,雇用,賃金,所得分配,そして所得格差に与える影響を理論的に分析し,さらに,数値シミュレーションに基づく将来予測を行うことが目的である.そして,本年度は,既存の2部門内生的成長モデルを参考にしつつ,最終財生産部門と自動化資本生産部門が存在する2部門成長モデルを構築し,そのモデルを分析することが当初計画であった.
実際,本年度は,当初予定通りの基本モデルを構築し,解析的手法による分析を行うことができたので,おおむね順調に進展しているという判断を行った.ただし,研究実績の概要に記したように,生産関数をコブ=ダグラス型にするという簡単化を行ったため,得られた結果が現実を上手く描写できていないことが明らかとなった.これを解決するために,今後は使用する生産関数をより一般的な代替の弾力性一定の生産関数に変更し,分析を進めることとする.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,現在までの進捗状況に記したように,モデルの設定を変更して分析を進める.当初計画では,家計の消費・貯蓄行動に関して,3種類の異なる設定を行うこととしており,初年度は代表的家計が連続時間の動学的最適化を行う設定を用いた.次年度は初年度のモデルの生産関数を変更した場合の分析を進めつつ,それと同時に,労働者と資本家という2階級に分けた設定でもモデルを構築し,このモデルの分析も進めていく.生産関数をコブ=ダグラス型から代替の弾力性一定型に変更すると,解析的手法による分析は困難になることが予想されるので,数値計算による分析を併用して研究を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
当該年度の使用計画では,海外学会および国際会議への出席として旅費を計上していたが,新型コロナウイルスの感染状況が終息せず,海外への渡航が困難であったため,計上した旅費を使用することができず,次年度使用額が生じた.次年度では,感染状況を考慮しつつ可能なかぎり海外へ渡航したいと考えている.さらに,海外からの研究者の招聘を予定しており,こういった国際研究交流も行って,計画的に助成金を使用する.
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Research Products
(1 results)