2024 Fiscal Year Research-status Report
| Project/Area Number |
22K01497
|
| Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
藤生 源子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (80431394)
|
| Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
| Keywords | 動学ゲーム理論 / 異時点間の資源配分 / 投資の不可逆性 / 技術選択 |
| Outline of Annual Research Achievements |
「本研究の目的」は、自然資源の異時点間における配分問題を、動学ゲーム理論を用いて解析的に分析することである。これまでの研究では、異なる政党間での自然資源によるエネルギー供給なども含めた公共財の供給、及び、将来の技術開発への投資といった資源配分問題を動学ゲームモデルとして定式化し分析を行ってきた。 政府は自らの長期的な目標の達成のために政策立案を行うが、将来政権交代によって政策が覆される可能性があり、自らの政策を長期的に維持することの困難さに常に直面している。近年の米国を例にあげると、バイデン政権からトランプ政権へ政権が移行したことで、多くの環境規制が撤廃された。本研究では、こうした将来的な政権交代という可能性に直面している状況下において、現政権は異時点間の資源配分においてどのような決定を行うか、投資の不可逆性(つまり政策を覆すことが難しい場合)や政党間の政策に対する選好の違いは政策決定にどのような影響を及ぼすかなどの問題に対し理論分析を行ってきた。 基本としているモデルは次のような無限期間の動学ゲームモデルである。公共財に対して異なる選好を持つ2つの政党が存在し、現政権の政党は政権交代の可能性に直面している。各期において現政権はその期における公共財の生産と、生産技術(資本ストック)への投資量を決定する。技術投資はその期には利益をもたらさないが、将来の公共財生産のコストを引き下げる効果を持つ。投資は不可逆的であり、すでに資本ストックが十分蓄積されている経済においては、最適な技術水準が即座に達成されるとは限らない。 2024年度は、学会報告や論文投稿を通じて得られた指摘にもとづいて、基本モデルの設定を簡略化するなど論文の大幅な改訂作業を行った。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本モデルに関する分析はほぼ終えており論文も完成している。主要な結果は以下の3点である。(1)各政党にはそれぞれ最適な技術水準が存在し、政党間の選好が似ている時、均衡における技術水準は投資の不可逆性に左右されない。つまり、政権が交代するごとに各政党の最適な技術水準が達成される。(2)一方、2つの政権で選好が大きく異なる時、投資の不可逆性は均衡における期待技術水準を引き上げ、公共財の供給は増加する。高い技術水準を維持し公共財生産のコストを下げることで、将来政権を失ったとしても、より多くの公共財生産につなげるというインセンティブが働くからである。(3)政権が入れ替わる確率が高くなると、期待技術水準は高くなり、公共財の供給は増加する。
また、モデルを拡張し以下の結果が得られた。(1)民間部門を導入し、現政権が技術投資の水準を決定する一方で、公共財の供給は民間部門が行うケースを分析した。このケースにおいても技術水準の増加はその補完性により公共財供給を増やす働きを持つことが明らかとなった。(2)公共財の供給に関する費用を2つの政党が負担し合うケースを分析した。現政権の費用負担が十分大きい場合は、現政権が全てを負担する基本モデルにおいて得られた比較静学の結果はそのまま成立することが明らかとなった。しかし、費用が両政党に平等に課される場合、均衡結果には2つの重要な変化が生じる。第一に、より公共財の供給に積極的な政党の目標技術水準と公共財供給の水準が社会的に最適な水準(プランナー解)を上回る可能性がある。第二に、政党間の選好の違いが十分に大きいときには、技術水準が低い水準であったとしても投資を行うインセンティブを持たなくなる可能性がある。
|
| Strategy for Future Research Activity |
2025年度も引き続き学会報告を行うとともに、現在投稿中の論文の学術雑誌への掲載を目指す。また、今年度は本研究課題の最終年度であるため、これまで得られた結果をまとめ、来年度に向けた研究課題の整理を行う。 これまで行ってきた理論分析より、現在のモデルでは均衡の存在を一般的な設定のもとで示すことが困難であることが判明している。研究計画当初は異なる2つの資源(枯渇資源と枯渇資源と代替的な再生可能エネルギー)が存在するケースを分析する予定としていたが、現在のモデルに導入するとさらに複雑になるため、計画を変更する。まずは複数の異なる資源と線形の生産技術が存在する動学モデルにおいて、最適な生産技術の選択問題を分析する予定であり、すでに分析を進めている。
|
| Causes of Carryover |
予定していた国際学会への参加が難しくなり、学会参加は国内のみであった。次年度使用額については国際学会参加費用等に充てる予定である。
|