2022 Fiscal Year Research-status Report
COVID-19パンデミックの東アジア金融システムへの影響
Project/Area Number |
22K01499
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
金京 拓司 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (50527637)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | COVID-19パンデミック / ヘッジ効果 / 株式市場 / ウェーブレット解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、COVID-19のパンデミックが東アジア金融セクターに及ぼした影響について多角的に検証し、域内金融システムの安定性確保に向けての政策指針を示すことを目的としている。具体的には、①パンデミック後の東アジアにおいて、輸出競争力の向上を意図した為替レート政策強化の可能性について、域内での存在感が増している中国人民元との連動の強まりに着目しつつ解明すること、②アジア株式市場へのパンデミック・ショックに対して、伝統的な安全資産である金や近年取引が拡大している仮想通貨が有していた分散・ヘッジ効果を明らかにすること、③各国間のマクロ経済状況・制度の質の相違等を考慮しつつ、より汎用性の高い銀行破綻予測モデルを構築し、実体経済の悪化が銀行セクターの安定性に及ぼす影響を評価すること等を通じて、学術的な貢献を行い、その裏付けに基づく政策提言を行うことを主な研究の柱としている。令和4年度は、研究計画の第一段階に位置付けられていたCOVID-19のパンデミックが世界経済に及ぼした影響の全体像に関する実態把握を文献調査を中心に進めるとともに、上記②に関連してビットコインと金が主要国の株価変動に対して有するヘッジ効果について、ウェーブレット解析に手法を応用して比較分析を行なった。その結果、COVI-19のパンデミックやロシアのウクライナ侵攻後の株式市場の混乱に対して、ビットコインが金に比べて、特に短期でのヘッジ効果が強いことを明らかにした。この分析結果は論文にまとめ、査読付き国際学術誌に投稿し、採択・掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由により、研究計画にしたがって、研究目的の達成が概ね順調に進展していると考えられる。すなわち、1. 研究計画の第一段階に位置付けられていたCOVID-19のパンデミックが世界経済に及ぼした影響の全体像に関する実態把握を相当程度行うことができた。2. さらにその結果を踏まえて、研究計画 の第二段階に位置付けられていた株式市場に対する仮想通貨等の分散・ヘッジ効果の検証、実証分析に着手し、その成果を論文として 公表できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
第2年度以降も引き続き、研究計画に従って、①パンデミック後の東アジアにおける域内為替レートの連動の変化についての解明、②アジア金融市場における仮想通貨等の代替金融資産の分散・ヘッジ効果の分析、③汎用性の高い銀行破綻予測モデルの構築等の研究テーマに取り組む。そのために必要なデータベース・計量分析ソフトウェアの購入や海外現地調査の実施を中心に研究支出を行う計画である。
|
Causes of Carryover |
COVID-19の影響もあり、国内調査旅行費が計画を大幅に下回った。翌年度は、感染状況の改善が見込まれ、支出の増加が見込まれる。
|
Research Products
(2 results)