2023 Fiscal Year Research-status Report
A Welfare Economics Approach to the Optimal Public Debt Level
Project/Area Number |
22K01523
|
Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
板谷 淳一 北星学園大学, 経済学部, 教授 (20168305)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | Growth / factor shares / distributive justice / social conflict / social contract |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、所得分配は市場で決まる生産要素価格と供給量だけで決まるのではなく、年齢構成、投票者の選好、権力の所在や交渉力の強さ、様々な社会階層間の利害対立によって決められる政府による再分配政策や独占企業や労働組合による所得再配分によって、社会あるいは特定グループが直接、労働分配率を選択するマクロ経済モデルを構築して、労働分配率、経済成長率、新規国債の発行額および対GDP比で測った長期の公的債務比率がどのように決まるかを理論的に分析する。 1980年以降日本を含めた主要な先進国諸国における公的債務比率を増大しているが、これらの変化は一様ではない。本研究は、国によって政府債務の残高が異なる理由を社会的厚生関数を用いたアプローチを用いて明らかにする。通常のマクロ経済学が想定する限界生産力説に代えて、所得分配が社会政治的な関係で決められると想定する。より具体的に言えば、①ある特定の所得階層が支持する政党が政権をとって実現するパルチザン型の所得分配、②投票者による民主的な投票によって決まる所得分配(中間投票者の理論及び確率的投票理論)、③交渉によって決まる所得分配(ナッシュ交渉解)、④功利主義的社会厚生関数の最大化によって決まる所得分配、⑤ロールズ型社会厚生関数の最大化によって決まる所得分配、⑥社会紛争を緩和するように決まる所得分配などの異なる所得分配メカニズムのもとで、労働分配率、経済成長率、国債の発行額および対GDP比に対する公的債務比率がどのように異なるかを理論的に分析する。 ①から⑥に対応する理論モデルの構築を終了して、いくつかの比較静学の結果を得ている。たとえば、生産性、将来効用の割引率、競争の程度などの外生的パラメーターの変更が労働分配率、経済成長率、公的債務比率にどのような影響を与えるかを定性的に導出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【現在までの進捗状況】で説明した不十分な点を完成させて、論文を完成させる。 (1)理論モデルの予測結果と対応する現実のイベントの発見や各国のデータの収集をおえる。 (2)特に各モデルが予想する所得分配への影響を、典型的に対応する国に対してジニ係数のデータをえる必要がある。それを今年度行う。 (3)該当する国のジニ係数のデータを集めて、理論モデルの予測がどの程度あったているかを判定する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)論文の理論モデルは完成している。 (2)理論モデルの予測結果と対応する現実のイベントやデータの収集がまだ終わっていない。 (3)理論モデルの対応する計量モデルの計測がまだ、実施途上にある。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で予定した国際経済学会(国際財政学会や公共経済理論学会)への、対面での参加と発表が出来なかったので、出席および発表を取りやめた。その結果として、支出を予定していた旅費が余ってしまった。
|