2023 Fiscal Year Research-status Report
欧州中央銀行による気候変動リスクへの最適対応の理論および実証分析
Project/Area Number |
22K01568
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
高屋 定美 関西大学, 商学部, 教授 (60236362)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 脱炭素移行 / 欧州グリーンディール / 欧州中央銀行 / 金融政策 / ESG / 環境金融 / 環境投資 / 欧州金融機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
欧州中央銀行の気候変動への取り組みを検討する前提として、EUの気候変動対策であるグリーンディールに関する研究を、昨年に引き続き進めている。欧州グリーンディールでは、EUからの復興強靱化基金だけでは、資金調達が十分でないため、金融市場からの調達も重視されている。金融市場での従来の資金配分では、化石燃料を多く用いる産業を温存させることになりかねず、資金供給の面からグリーンへの移行を促しつつ、グリーンイノベーションを促す産業や、脱炭素に移行する産業への資金供給を潤沢にすることが狙いである。本研究との関連では、欧州中央銀行が、そのような金融市場のグリーン化を促すべきなのか、促すとすればその手法はどのようなものがあるのかを検討することである。そのため、欧州中央銀行が監督し、そして金融政策を直接に実行する欧州金融市場のグリーン化の程度や、その方向性を探求しておく必要がある。そのため、2022年度に引き続き、2023年度も欧州金融市場のグリーン化の程度や金融機関のグリーンディールへの取り組みを検討してきた。 さらに、欧州中央銀行の気候変動への取り組みとして、二つの側面からアプローチしている。すなわち、1)ユーロ圏での金融政策のグリーン化の是非と、2)EUの大手金融機関の監督を通じた金融市場のグリーン化の是非を検討している。欧州中央銀行も1)について検討しているが、アカデミックな研究でも徐々に行われており、その先行研究をけんとうしながら、実証的なモデルの構築を試みている。2)に関しても多くはないものの先行研究があるため、それらの検討をしている。2)に関しては、欧州だけでなくわが国を含めた先進国への示唆を与えるものと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、欧州中央銀行の脱炭素への取り組みを検討する前提としての、EUの気候変動対策である欧州グリーンディールと欧州金融機関の取り組みを、各種論文、レポートなどを通じて検討を重ねてきた。それらにより、グリーンディールへの金融機関の取り組みと欧州金融市場の変容を熟知することができた。また、中央銀行が気候変動対策に取り組むべきかどうかの、理論的検討をするための関連論文も昨年に引き続き検討している。概ね、研究の背景ならびに先行研究の検討を終えている。 また、欧州中央銀行の気候変動対策の実証的な効果を検証するための実証モデルの開発も先行研究を参考に進め、近年のデータを用いて実証分析を行っている。特に従来のVARモデルに加え、グリーンディールの実施というこれまでの金融市場、経済構造を大きく変貌させるであろう期間も対象可能とするため、推定される変数が可変的な可変係数ベイジアンVARモデルの開発を進め、気候変動への配慮を行った後の金融政策の効果も検証している。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度のとなる2024年度は、現在までの研究をさらに発展させる予定である。すなわち、欧州中央銀行の金融政策ならびに金融監督の双方で、グリーンディールに関与すべきかどうかの理論的な結論を導く予定である。中央銀行が環境への関与は中立であるべきとする考えがある一方で、脱炭素移行を促すための中央銀行が関与し、経済政策すべてを用いてでも脱炭素経済を実現すべきという考え方もある。本研究では、脱炭素経済移行への便益と費用を衡量し、また金融市場の安定性への影響も考慮して、その結論を出す予定である。 さらに、欧州中央銀行が金融政策を実行する際に、脱炭素経済移行を考慮した場合の実証研究を進める。現段階では、まだまだ二酸化炭素を排出産業が多い中で、厳密に金融政策をグリーン化すると、金融機関の融資も間接的に減少し、それが経済を阻害し、金融安定を阻害する可能性もある。それを量的に検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
2023年度、海外での学会参加を二回予定していたが、2023年度は一回とし、2024年度には予定していない学会参加を予定するために次年度の使用が生じている。 また、購入予定しているデータベースの購入価格の値上げが契約先から通知されており、予定額よりも購入費用が上回ると予想された。そのため、次年度の研究にも当該データベースを購入する必要があるため、値上げ分の次年度使用額が発生している。
|
Research Products
(4 results)