2022 Fiscal Year Research-status Report
投資家の曖昧さ回避、実体経済、そして物価変動の信用市場への影響に関する実証研究
Project/Area Number |
22K01574
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小野 貞幸 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (80602002)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 投資家の曖昧さ / 債券 / CDS保証料 / デフォルト / 物価変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は債務不履行の可能性のある債券と、デフォルトに備えた保険の機能を持つクレジィト・デフォルト・スワップ(CDS)を分析対象とする。マクロ経済変数を経済の基礎的条件とする、投資家の曖昧さ回避を考慮した均衡モデルを構築し、観測値と比較しモデルの有効性を評価する。
本年度はまず関連分野の研究論文を調査後本研究の貢献などを明確にし、債券価格とCDS保証料の実証分析が可能になる理論式を導いた。重要な点として近年米国を含む多くの国で物価上昇による経済並びに金融市場への影響が問題になっており、今回導いたモデルは物価変動が経済基礎的条件の一つでありかつ確率的割引率に直接関係している。導かれた債券価格とCDS保証料式は、現実の取引で表示される値と同様に名目値となる。また数値解析による実証分析により、債券発行体の倒産確率、債券価格、CDS保証料への物価変動の影響を定量化することが可能になる。さらに一般的な滑らかな曖昧さに依存する投資家の効用関数に関する4つのパラメター(主観的割引率、相対的リスク回避度、異時点間代替弾力性、曖昧さ回避度)による影響の分析も可能である。パラメター値に制限を加え最も一般的な効用関数から、これまで多くの研究が行われた曖昧さに関して中立的である、標準的なパワー型や離散時間再帰型効用関数を特殊なケースとして回復でき比較することが可能となる。さらに経済の基礎的条件(消費量と物価)の最も一般的な確率過程の設定では、観測不可能な期待値と観測可能なボラティリティも確率的に変化する場合に対処できることを確認した。
実証研究のため、米国マクロ経済のデータとして消費量、CPI、人口、SP500配当金・利益の月次データ、信用市場のデータとして、国レベルでの社債利回り、CDS保証料の産業別日次データはすでに入手している。企業レベルでのCDS保証料も入手可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実証のベースとなるデフォルトの可能性のある債券価格とCDS保証料の数値計算方法は確立したが、実際数値計算するためのコードは本年度中に作成することはできなかった。
一般性が比較的高いことからモデル自体非常に複雑であり、また先行研究と照らし合わせ数値計算のために課すモデルの仮定の選択に予定より多くの時間を費やした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は速やかに計算用のコードを作成する。複雑な計算を伴うためコードに間違えの無いようにパラメーター値を制限し、より初歩的なモデルに戻し結果が妥当であるか確認しコードに問題が無いか検査を行う。数値計算はGallant, et al.(2018)の方法を主に参考にし、ベイズ手法のGeneral Scientific Models (GSM)で評価する。データに関して米国企業ごとの社債価格の入手を試みる。もし入手できない場合、国レベルもしくは産業レベルでのデータを用いて実証分析を実施する。
資産価格の説明に貨幣錯覚(money illusion)の考えを関連させる研究が存在する。理論的な新たな試みとして本研究にも貨幣錯覚の要素を導入し、デフォルトの可能性のある債券価格とCDS保証料の理論式を考察する。
来年度中には米国市場での実証結果を終わらせ、論文を作成する。
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Causes of Carryover |
本年度中に予定された数値計算を実施できず、使用額を使い切ることができなかった。そのため来年度数値計算のため使用額が生じた。
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