2022 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the Impact of Population Aging on Foreign Investment: the Role of Demand for Non-tradable Goods and the Real Exchange Rates
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22K01575
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
卓 涓涓 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 講師 (70811892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊本 方雄 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (30328257)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高齢化 / 非貿易財 / 実質為替相場 / 対外直接投資 / 対外証券投資 / グローバルリスク |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では、人口減少と高齢化の進展に伴い、対外収支の中心が貿易から投資に移行しつつある。こうした中、海外資産からの収益力強化による成長を継続するために、証券投資におけるホーム・バイアス(国内資産投資への偏向)の解消および対外直接投資の規模拡大の必要性が提言されている。しかし、高齢者は生産年齢人口に比べ、介護やヘルスケアなどの非貿易財をより多く消費するため、高齢人口の増加が、非貿易財に対する需要を増大させ、これが、自国の実質為替相場の水準やボラティリティを変化させる結果、ホーム・バイアスの解消や対外直接投資の規模拡大に影響を与える可能性がある。 本研究は、高齢人口の増加による非貿易財需要の増大が、実質為替相場の水準やボラティリティの変化を通じ、ホーム・バイアスの程度(対外証券投資)と対外直接投資へ与える影響を考察することで、対外資産の収益力の強化について政策的インプリケーションを導出する。 本年度は、申請者卓は分担者熊本と協働し、高齢化の進展が実質為替相場の水準やボラティリティに与える影響を分析した。理論分析においては、Groneck and Kaufmann (2016)のモデルを、貿易財部門と非貿易財部門という二部門の存在と、非貿易財により大きな選好を持つ老年世代の存在を考慮した世代重複モデルに拡張し、高齢化の進展が、実質為替相場の水準に与える影響を分析した。さらに、貿易財部門と非貿易財部門の生産性に確率過程を想定し、生産性ショックが実質為替相場のボラティリティに与える影響が、高齢化の進展に伴い、どのように変化するかを分析した。一方、実証分析においては、データ・セットの構築を行い、また、先行研究を踏まえつつ、分析方法などを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論モデルの構築にやや時間をかけてしまったものの、ほぼ計画通りに分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度以降は、2022年度の理論分析の結果を踏まえ、人口の高齢化に伴う実質為替相場の水準およびボラティリティの変化が、対外直接投資の地域別動向に与える影響を分析する。その上、高齢化の進展が、自国投資家のポートフォリオの構成に与える影響を分析することで、高齢化の進展がホーム・バイアスの程度へ与える影響も考察する。 なお、高齢化の進展がホーム・バイアスの程度へ与える影響の分析に関し、これを直接分析した先行研究は存在しないが、Coeurdacier and Rey (2011)の考察に基づいた理論分析を行う。一方、実証分析においては、1970年から1993までのOECD14ヵ国のデータを用いて非貿易財の存在とホーム・バイアスの関係を分析したPesenti and van Wincoop(2002)に基づき、分析を行う。
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Causes of Carryover |
データ・セット拡充のため、マクロ経済・金融に関するデータベースを追加購入する必要がある。また、実証分析に用いられる計量パッケージMATLABなどを購入する必要がある。これらの費用については、本経費を充てたいと考えている。
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