2022 Fiscal Year Research-status Report
Domestic Slave Trade in the Early 19th Century American South and the Development of American Capitalism
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22K01611
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
柳生 智子 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 准教授 (40306866)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | アメリカ南部 / 奴隷取引 / アメリカ資本主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は1年目であったが、コロナ禍の影響で取得済の科研が延長を重ねたことによりその研究により多くの時間を費やすことになり、本科研のテーマの進展はほとんど見られなかった。しかし、本科研は研究代表者の博士論文の主題(19世紀前半期におけるアメリカ南部地域内の奴隷取引と奴隷商人の活動について)の延長線上にあるものであり、最終的には博士論文を英語で本として海外の出版社より刊行することが目的である。その前段階として、植民地時代から建国期にかけての奴隷貿易、奴隷制経済の連続性についての理解、また近年の研究動向については把握しておく必要があるため、前科研の研究は本研究に大いに役立つことになる。環大西洋経済圏における貿易の展開と動向は19世紀のアメリカ最大の輸出品であった南部生産の綿花の貿易に決定的な影響力があり、植民地時代からの貿易と経済の連続性・断続性について検討することが可能になる。この長期的な点はアメリカ資本主義の発展を見る上でも重要になる。近年の19世紀アメリカ史を分析する上で欠かせないアメリカ資本主義発達史の視点は近年研究が飛躍的に増えており、経済史的アプローチによる奴隷制分析はその中心にある。しかしながら、国内ではこの領域の研究は決して多くはなく、アメリカでの研究の隆盛を鵜呑みにし、批判的な視点が欠けているように思われる。そのため、今後本科研で国内外での研究会や学会での発信、海外研究者との共同研究などを進めつつ、論考や本の計画を進めていきたい。また、海外で19世紀の奴隷制研究とアメリカ資本主義の発展について研究している研究者を日本に招待してワークショップや研究会を開く計画や、2025年に予定されている国際経済史会議(World Economic History Congress, プラハ開催予定)においてこのテーマでパネルを組み、報告を申請する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本科研は1年目であったが、これまでの国内奴隷取引やアメリカ資本主義に関連する資料・文献を整理し、最新の研究動向を読み込む作業などが中心となり、論考の執筆や学会発表を行う機会はなかった。海外の研究者との交流もコロナ禍で進展せず、今年度以降に取り掛かることができればと考えている。別の科研がコロナの影響で延長され、そのテーマである植民地時代の奴隷貿易の研究と執筆作業に追われていたこともあり、全体としては進捗状況は遅れている。しかし、本科研の研究内容は研究代表者が博士論文で扱ったテーマであり、その蓄積の上に発展させるものであるため、挽回することが可能な遅れであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
19世紀前半のアメリカ南部の奴隷制度の発展と綿花貿易の隆盛の根幹には南部地域内の奴隷取引・貿易があったことはこれまでも検証されてきた。近年はアメリカ資本主義発達史の視角、特に奴隷制をアメリカ経済発展の中心に据えるアメリカ史研究が注目を集めているが、本研究はアメリカ資本主義発達史の研究者らが軽視しがちである従来の伝統的な経済史研究、計量・統計的手法を取り入れながら、アメリカ資本主義の発達と奴隷制の展開と関係性明らかにすることを目指す。その際、複数の論点を国内外の学術誌に投稿して提示しながら、最終的に博士論文をベースにその後の研究動向や新しい発見を取り入れて、海外の出版社から本を刊行したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は本科研からの出費はなかった。予定していた海外研究者との打ち合わせや国際学会の参加、海外資料収集はコロナ禍で断念したため、費用が生じなかった。海外のアメリカ資本主義発達史研究の研究者らを招待することも検討したが、来日が容易ではなく実現しなかった。今年度以降、長期的な研究計画を見直し、予算の執行方法について再検討したい。
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Research Products
(1 results)