2023 Fiscal Year Research-status Report
発達障害がアントレプレナーシップに与える影響とメカニズムに関わる実証研究
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22K01716
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
江島 由裕 大阪経済大学, 経営学部, 教授 (00382359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤野 義和 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (10781403)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アントレプレナーシップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、3ステップで発達障害と起業行動の関係性について調査研究を進める予定で、本年度は、その第2ステップとして、年度の終わりに計画した研究の方向性に沿って、調査研究を進めた。具体的には、初年度に実施した諸研究活動を引き続きフォローしながら、以下の3つの視点から研究課題にアプローチした。 ①最新の発達障害とアントレプレナーシップにかかわる各種文献・資料を国内外にわたり広く収集し、これまで蓄積したきた関連文献・資料リストに追記して活用した。特に、本年度は、国内の実務書、専門書、発達障害起業家のリアルストーリーにかかわる各種書籍の収集に取り組み、研究分担者ならびに研究協力者とともに必要に応じて、輪読と議論を行い、データマイニング作業とコンテンツ分析もあわせて実施した。②研究課題に関わる、最新の研究動向を把握し、理解を深めるために、実践面に精通する専門家や学術面で知見を有する研究者との研究打ち合わせならびに議論・意見交換等を行った。③初年度の調査結果を補完し、調査研究のケースと質を充実するために、In-depth定性調査を実施した。具体的には、初年度の調査結果から浮かびあがってきた諸課題の背景を深堀りする際に参考となる事例を探索し、インタビュー調査に結び付けた。そこでは、仮説の深堀りと新たな課題の導出に努め、それらの解釈を研究分担者ならびに専門研究者/研究協力者とともに、議論を繰り返し実施し、新たな仮説の構築に向けた検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、予定していた研究計画の主要なパートは実施できた。しかし、その一方で、初年度の調査結果から導出した研究テーマにかかわる重要な課題や論点(新たな問いとその深堀り)についての議論とそこからのリサーチデザインへの展開ならびに事例の探索に時間を要し、調査研究活動を遂行する上で多少影響を受けた。加えて、初年度に導出した発見事実の整理と学術論文への執筆に時間を要した。こうした理由から、総合的にみると本年度に予定していた一連の調査研究活動の一部については、やや遅れていると判断した。以下、その点について、具体的に記述する。 第一に、In-depth定性調査対象リストの検討ならびに本格的定性調査に向けて、当初、夏の時期に複数のインタビュー調査を想定していたが、その全ては実施することができなかった。本研究課題の初年度に実施したプレ調査結果や参考文献調査から導出した発達障害、特にADHDと起業との関わりについて、先行研究であまり触れられていない影響要因や分析フレームワークの新たな論点を導出できたことから、その解釈ならびに今後の事例選定に多くの時間を要し、追加インタビュー調査実施のスタートが遅れ、その結果、調査対象件数も当初予定より少なくなってしまった。 第二に、初年度の調査研究活動からの発見事実やインサイトを、中間報告的に整理するとともに、それが次の研究プロセスへの指針になると考え、研究分担者ならびに研究協力者とともに学術論文執筆の検討、投稿、審査査読プロセスに多くの時間を要し、結果として、当初予定していた調査研究活動の一部を次年度に持ち越すことに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進については、本年度実施した調査研究活動で新たに発見した論点を深く追求しながら、本年度不十分であった点について適宜、補完し、予定していた計画を遂行していく計画である。具体的には、以下の通りである。 まずは、当初予定していた①In-depth定性調査について、本年度新たに発見した論点を深く探索することを目的としたリサーチデザインへと改良し、調査対象事例と手法を検討しながら調査を実施する。また、当初予定していた仮説の精緻化/再構築の検討を改めて進める。その上で、最終的には、調査ケースの量と質の水準を高めながら、調査ケース毎に、研究分担者と研究協力者とともに、適宜、きめの細かい詳細分析と解釈を加えて、本研究の開始時点で設定した仮説に修正を加えながら新たな命題(=仮説)の構築に向けた検討を加える。同時に、②これまでの調査研究活動で導出したインサイト、論点、理論的フレームワークにかかわる国内外の学術研究(先行研究)ならびに発達障害起業家の自叙伝などについて、広く関連する文献・資料を収集・整理し、In-depth定性調査からの実態の解明とその理解を深める一助とし、学術的かつ実践的インプリケーションへつなげていく計画である。
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Causes of Carryover |
本年度は、予定していた研究計画の主要なパートは実施できたものの、初年度の調査結果から導出した研究テーマにかかわる重要な論点の議論とそこからのリサーチデザインの改良に時間を要し、In-depth定性インタビュー調査を遂行する上で多少影響を受け、予定よりも調査対象者数(ケース数)が少なくなった。そのため、調査等にかかる費用が想定より低くなった。 加えて、各種学会や研究会への参加、ならびに当該研究テーマを専門とする研究者との直接的な対話・議論のために予定していた費用の支出は、減少することとなった(なお、国内の当該分野の専門家や研究者との複数回の対話・意見交換は限定的だが実施)。次年度は、こうした諸課題を適宜補完・補正し、In-depth定性インタビュー調査のケース数を増やし、各種学会や研究会等への参加も企図して、本年度と次年度の予算を適切に用い、効果的、効率的に予算額/費用を使用したいと考えている。
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Research Products
(1 results)