2022 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of a regional industrial revitalization model linking national support organizations and regional industrial systems
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22K01739
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
山田 雄久 近畿大学, 経営学部, 教授 (10243148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東郷 寛 近畿大学, 経営学部, 准教授 (10469249)
吉田 忠彦 近畿大学, 経営学部, 教授 (20210700)
山本 長次 佐賀大学, 経済学部, 教授 (70264140)
井上 祐輔 札幌大学, 地域共創学群, 准教授 (90737975)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地域産業システム / 国の支援組織 / 観光・まちづくり / 陶磁器産地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では地方産業の再生に向けた行政レベルでの政策ならびに国による支援体制についてリサーチを行い、地方産業システムの現状分析と今後の変化に向けた方向性について見通しを得ることを第一目的としている。具体的事例研究として、地域活性化支援機構(以下REVICと呼称する)による地域産業再生に向けた支援事例として有田まちづくり公社を取り上げ、その経営主体となる有田商工会議所でのヒアリング調査と、支援対象となる有田町の有田焼関連企業の動向に関する経営分析を通じて、地域産業システムの再編プロセスを解明することを課題とする。令和4年度にはコロナ感染が拡大傾向から落ち着きを見せ始めた冬期を中心に、まちづくり公社を運営する有田商工会議所で聞き取り調査を実施し、コロナ禍で中止状態が続いたインターネットによる陶器市の実施状況と、アリタセラ(有田焼卸団地)における若手経営者による新規事業への取り組みについて最新情報に基づき検討を行った。 REVICによる観光事業の展開は、有田町における有田焼企業である商社・メーカーの意識を大きく変える可能性を秘めており、事実若手経営者を中心にものづくりを深化させるためのオープンファクトリーによる一般顧客との交流や異業種の事業を同時展開しながら顧客の新規獲得に成功するなど、有田焼ブランドの向上に向けた各種の取り組みが確実に進みつつあることを確認できた。本研究では地方産業システムの構築に向けた経営レベルでの動向について検証することにより、国の支援事業によるインパクトが地方産業のイノベーションを導き出す経緯について明らかにすることができた。現地調査では支援事業の中心となる観光・まちづくりの事業に関して有田町商工観光課ならびに有田観光協会の事業内容から明らかにするべく、現地での資料調査を実施した。それらの内容について原稿執筆を進め、関係者より貴重な証言を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では有田焼産地の事例を中心に、有田商工会議所が運営を行う有田まちづくり公社の設立と事業内容、経営状況について検証した。2015年に誕生した同公社では、REVICの指導に基づき、佐賀観光ファンドより資金投下を受ける形で有田焼創業400年事業に関連するまちづくりイベントや地方産業を軸とする物販事業、観光政策との関わりでふるさと納税事業を展開する形で公社の事業が順調に拡大し続けた。2022年にREVICからの借入金完済が完了し、独自の観光事業を継続実施する体制で新規事業に進出しつつある。以上の有田まちづくり公社における経営実態が明らかになるとともに、民間企業の各種事業が同公社の事業に連動しながら展開しつつある現状についてヒアリング調査を実施した。 本研究では地方産業の担い手となる企業経営者から現状の動きについて情報提供を受けるとともに、有田町役場・有田町議会での地域関係者の議論や実施してきた政策の内容について検証を行っている。国の支援事業と地方自治体における産業政策との連携について具体的に分析する上での基礎的作業を行い、現段階で進みつつある地方産業システムの再構築に向けていかなる展開が可能であるかを令和5年度の検討作業で解明していくことが期待される。 なお、本研究に関連して歴史的分析を可能にするべく陶業時報社より提供を受けている『陶業時報』の1990年代以降における記事データベースの作成作業を実施した。記事には全国陶磁器産地の動向に加えて、地域産業となる陶磁器業に関連する政策について網羅的に情報が掲載されており、データベースの分析を通じて2000年代における地域産業の衰退と再生に向けた取り組みの時系列的変化が明らかになると期待される。令和4年度は5年分のデータ入力に止まったことから、引き続き入力作業を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度には本研究の成果を論文の形にまとめるとともに、REVICにおける地域活性化策の進展と各地における観光・まちづくりの動向について検討作業を実施する。陶磁器業に関しては、佐賀県有田焼産地に加えて長崎県波佐見焼産地の動向について比較検討を行い、行政による支援と民間企業の製品開発・販路拡大に関する研究に取り組む予定である。また岐阜県美濃焼産地における陶磁器業とまちづくりとの連動についても取り上げ、従来成功に至らなかった行政レベルでの政策的支援の問題点、国の支援事業を通じた失敗から成功へと転換する上での経営者による創意工夫のプロセスについて解明を試みる。 令和4年度に収集した地域経済資料の分析作業に加えて、国の支援を受けたまちづくり公社の動向や、ふるさと納税などの寄付金による地方産業の振興について検討を進めることにより、具体的にいかなる要因で地方産業の成長がみられるのかを明らかにしていく。陶磁器業においては、商社とメーカーとの協力関係を通じて海外や都市部への販路が開かれる状況にあり、インターネットによるメーカーの販路が商社による受注拡大、新たな商社ブランドの確立に寄与するケースが少なくないものと考えられる。また、従来までの方法にとらわれない新しい形の商品開発が可能となっており、本研究ではこれら最新の動向に関するアクションリサーチを通じて、企業家が地方産業でリーダーシップを発揮する上での各種事業の展開や、異業種との連携を通じた地域経済の活性化について事例に基づいたモデル分析を実施する。
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Causes of Carryover |
令和4年度においては夏期を中心にコロナ感染の拡大が続き、現地での実地調査が十分に実施できない状況が続いた。秋期以降現地との情報交換を行いながら検討作業を進め、冬期より現地での調査を本格的に開始し、研究を伸展させることが可能となった。令和4年度に実施できなかった地域での現地調査ならびにデータ入力作業については、現地の協力者から情報提供を受ける形で令和5年度より本格的に進める予定である。コロナ禍により令和4年以降調査地での人員配置について少なからず変化がみられたことから、現地で研究協力を頂ける方々との情報交換を通じて、令和5年度以降継続的に調査を実施できる体制が整いつつある。 具体的には有田商工会議所・有田町役場・有田観光協会の現地スタッフから本研究の内容に関連する資料提供を受けることで研究論文の作成に必要な情報を得られる見通しであり、現地でのヒアリング調査に加えて陶業時報や佐賀新聞などの地元メディアの新聞記事データを作成することで分析作業の深化を図り、研究成果を海外で開催される国際学会や国内の行政・団体・民間企業において研究発表を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)