2023 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of a regional industrial revitalization model linking national support organizations and regional industrial systems
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22K01739
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
山田 雄久 近畿大学, 経営学部, 教授 (10243148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東郷 寛 近畿大学, 経営学部, 准教授 (10469249)
吉田 忠彦 近畿大学, 経営学部, 教授 (20210700)
山本 長次 佐賀大学, 経済学部, 教授 (70264140)
井上 祐輔 札幌大学, 地域共創学群, 准教授 (90737975)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国の支援組織 / 地方産業システム / 観光・まちづくり / 陶磁器産地 |
Outline of Annual Research Achievements |
地域活性化支援機構(以下REVICと呼称する)による地域産業再生と地方産業システムの再構築に関する現地調査を実施した令和4年度に続き、地域レベルでの活性化事業の試みについて、佐賀県有田町南川原地区ならびに嬉野市吉田地区の事例から検証作業を実施した。REVICによる有田町の支援事業は2022年に完了したため、有田まちづくり公社の運営主体である有田商工会議所による本格的な事業展開の可能性に加えて、有田焼産地の中心的地区となる内山地区での観光事業と有田焼関連店舗の販売活動について検討を行った。有田駅前における窯元・商店等の企業による地域内での陶器市や陶磁器まつりに向けた共同事業の展開について、協議会での議論や構成メンバーによる事業経営の取り組みについて調査を行うことで、地域産業の再生に向けた注目される動きとしてアクションリサーチを実施した。 有田焼創業400年事業に基づいて、嬉野市吉田地区の若手経営者が中心となって佐賀県・長崎県のアーティストによる陶磁器産地のアートイベントが2018年から継続的に実施されており、コロナ禍での中でも毎年継続的に実施することで地域産業の再生に対する取り組みを続けてきた。行政レベルでの支援に基づき、コロナ後の地域産業における人材の育成と地方産業の新たな方策の立案が可能となりつつあり、地域レベルでのネットワーク形成と産地間連携、海外や都市部との緊密強化による地方産業システムの再構築が期待される状況にあることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
REVICによる支援を経て、有田まちづくり公社は経営的基盤を確立するとともに各種事業の地域レベルでの展開につながった経緯について検証作業を加えるとともに、若手経営者を中心に新たな取り組みが始まったことを確認した。有田町に拠点を持つ佐賀大学肥前セラミック研究センターの地方産業に向けた支援事業についても地域レベルでの動きにリンクする形で成果を上げつつあり、本研究では佐賀県有田町における事例研究を通じて地方産業システムの再構築に加えて、若手経営者による産地戦略の提起と共同事業の展開が進みつつあることが明らかにされた。 このような動きは国内の陶磁器業において全国的に展開しつつある状況であり、国内唯一の陶磁器業界紙である『陶業時報』は各産地の経営者をつなぐ情報交換の場として引き続き重要な役割を担っている。国内最大の陶磁器産地である美濃・瀬戸と有田・波佐見の動向を追跡することにより、研究課題である地域産業再生の動向について明らかにするとともに、国の支援組織と地方自治体による行政の役割に関するアクションリサーチが可能となるものと考えられる。令和5年度には長崎県波佐見焼産地における業界と自治体との連携と地方産業の振興策について検証作業を進めることができた。次年度において佐賀県有田町と有田商工会議所、有田焼の業界団体との連携による支援事業の展開について検討を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度にはコロナ禍による影響が次第に薄れることで、地方での観光客の来訪や地域レベルでの交流の活発化がみられ始めた。この流れは令和6年度にも引き続き加速し、地方産業に対する顧客の関心は海外からの観光客も含めて高まるものと予想される。このような状況下で、地方産業システムの再構築は急務の課題と考えられるが、地域レベルでの後継者不足や従業員確保の困難化が指摘されるに至っている。これは本研究の対象となる陶磁器業が地方産業を中心としているだけに、より困難な状況にあると推測される。 旧来のシステムが制度的に維持できない可能性も考えられ、若手経営者による新規市場開拓と新製品開発、地方産業と密接な関係にある地域関連産業の現状について検証を加えることによって、国の支援による地方産業システムの再構築が将来的な課題解決に向けていかなる意味を持つのかを具体的事例に基づいて明らかにすることが重要な課題となる。伝統産業としてとらえられてきた日本陶磁器業の戦略について肥前地区(有田・波佐見・三川内・嬉野)の現状からとらえ直すことで、窯元やメーカーによる生産活動の実態について検証するとともに、海外や都市部へのマーケティング活動について検討を行うことで地方産業と消費地とを結ぶ地方産業再生モデルを構築する。 肥前地区との比較として、美濃・瀬戸地区の実態についても近年の動きを中心に検証する。それらの歴史的分析として『陶業時報』の平成版データベースの作製を進める。昭和期の記事データベースに関しては令和5年度に作業を実施し、令和6年度中に平成期の陶業時報記事リストのデータ入力を行い、近年の陶磁器業界について分析を加えるためのデータ収集作業を進める。
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Causes of Carryover |
令和5年度に入り、前年度にコロナの影響を受けて実施できなかった現地での資料調査を再開し、数多くの歴史的資料(地方産業に関わる戦前期からの製品資料・販売関連の経営史料群)を発見することができ、現在資料整理を実施している。資料調査に関しては、九州の現地調査会社からの協力を受けて令和6年2月に本格的調査を実施することになり、令和6年度に経費の支出を予定している。 学生によるデータ入力に関しても新たに令和5年入学の大学院生に作業を依頼する形で令和6年に入ってデータ作業方法に関する説明を行い、次年度前半の時期を中心に集中的に作業をお願いする予定である。また令和5年度で実施する予定であった作業が次年度の移行期に集中し、現地の企業協力者への説明や自治体への調査に関する申請を現在進めており、次年度での予算執行が必要である。 具体的には佐賀県嬉野市におけるドローンを用いた企業関連施設の計測・デジタル技術を用いたアーカイブス資料の分析と明治大正期の製品群・古文書群の整理作業、令和5年度より実施している調査内容について現地でのヒアリング調査を実施する。
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