2022 Fiscal Year Research-status Report
Research on the emergence and formation of forward integration by home appliance manufactures in Japan: prewar-postwar continuity and discontinuity
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22K01775
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
大内 秀二郎 近畿大学, 経営学部, 准教授 (20351562)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 東京電気 / 流通系列化 / マツダ会 / 店会組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度には、戦間期における東京電気の流通系列化の実態のうち、小売段階の系列化を主に調査した。東京電気の流通系列化に関しては、先行研究において東京電気のチャネル政策は販社制と店会組織「マツダ会」によって特徴づけられることがすでに指摘されているが、それぞれの実態については必ずしも十分に解明されていなかった。そこで、本研究課題が始まる直前に大内[2022a]において東京電気の販社制に関する予備的な調査をおこなったのに続き、当該期間中に大内[2022b]において「マツダ会」の実態解明を試み、以下の諸点を明らかにした。第1に,マツダ会は1933年より各地で結成された。この動きは松下電器の連盟店制度の発足よりも早かった。第2に,マツダ会は卸売段階に設置された販売会社または弁理店のもとで組織された。第3に,マツダ会は組織として共同販売促進をはじめとする各種事業をおこない,東京電気もまた積極的に関与してこれを支援した。第4に,マツダ会は,東京電気の総合的なプロモーション活動において中心的な役割を果たした。第5に,マツダ会は,松下電器の連盟店制度と同様に乱売の抑止を強く志向した組織であった。これらの諸点を踏まえて総括すれば,東京電気の小売系列化は,先行研究がこれまで注目してきた松下電器のそれよりもむしろ先行的であり,戦前期の日本の流通・マーケティング史を振り返る上で評価の欠かせない代表的事例である。なお、この成果については、日本消費経済学会西日本大会(2022年12月)においても研究発表をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は以下のプロセスによって構成されている。①松下電器産業の戦前期および高度成長期以前の流通系列化に関するこれまでの先行研究の成果と同時代的な各種資料とを照合して、先行研究の確からしさを確認する。②それと並行して、これまでほとんど研究対象とされなかった戦間期の東京電気による流通系列化の実態を調査し、その内容が、販社制と店会組織「マツダ会」によるものへ収斂する過程を解明する。加えて、すでに戦前に一定の販路を構築していたはずの東芝が、戦後の販路再整備に後れを取った要因を検討する。③最後に、両社のチャネル政策を比較し、その歴史的規定因を考察するとともに、チャネル管理を中心としたマーケティングがどのように産業レベルで一般化したかを検討する。これらのうち、②については研究実績の概要にも記した通り2022年度において大きな進捗があった。①については、松下の代理店であると同時に東京電気の弁理店(代理店の東京電気における呼称)としても指定されていた卸売商が複数存在していたこと、小売段階においても松下と東京電気の販路は重複が少なくなかったことが、いくつかの史料から明らかになった。この成果の一部を、日本商業学会全国研究報告会(2022年12月)において発表した。ただし、松下の販路については事後に編纂された社史史料に多くを依拠しているのが現状であり、なお一層の史料収集が必要であることから、進捗状況は「概ね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年の年末以降、国立国会図書館デジタルコレクションの機能が強化され、全文検索可能なデジタル資料が大幅に増加し、また個人向けデジタル化資料送信サービス」(略称:個人送信)に印刷機能が付加された。これにより、予定していた『マツダ新報』、『電氣經濟時論』、『月刊トウ』などの閲覧・保存について来館が不要となり、史料収集の面においては今後飛躍的な進捗が期待され、東京電気の流通系列化の実態解明には一定の目処が立った。2023年度はその成果を早急に取りまとめるとともに、松下に関する史料収集に注力する予定である。
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