2022 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of Actual Conditions of Satisficing in Web Surveys Incorporating Psychological Experiments
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22K01850
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
稲垣 佑典 統計数理研究所, データ科学研究系, 特任准教授 (30734503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 忠彦 統計数理研究所, データ科学研究系, 准教授 (10247257)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Satisfice / 不適切回答検知 / Web調査 / オンライン実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題における2022年度の研究実績は、下記の3点が主たるものである。 1. 新型感染症防止に関するWeb調査に、「選択型コンジョイント分析」と呼ばれる、異なる条件を組み合わせたプロファイルを2つ同時に提示して、どちらを好ましいと考えるか選択させる実験手法を導入した。通常この選択型コンジョイント分析では、直行表に基づき条件の割当をしたプロファイルが1度だけ提示される。その際Satisficeによる不適切回答の有無を判別するため、同じ組み合わせのプロファイルが、コンジョイント分析項目において、ランダムに2回提示されるような仕組みを導入した。これにより、能動的に選択した回答に再現性があるか否かをもって、不適切回答を検知できるようになっている。現在はこの調査のデータを用いた統計分析を実施している段階である。 2. オンライン掲示板に被験者を集め、特定のニューストピックについてコメントとリアクションをしてもらう実験において、被験者の属性を尋ねる調査票システムを設けたが、そこにInstructional Manipulatoion Checkと呼ばれる教示に従った回答行動が行われているかを判別するための仕組みを導入した。これにより、掲示板実験におけるコメント内容や他者コメントへのリアクションとの関連を調べ、属性を尋ねる事前調査を用いて実験への参加姿勢のスクリーニングが行えるか検討した。こちらも現在統計分析を行っている最中であるが、IMCでの教示違反と心理特性の開放性の間に統計的に意味のある関連が存在することを確認できた。 3.Web調査、留置き調査、そして面接調査という3つの異なる調査モードを採用した調査に同一の項目を盛り込んだうえで傾向スコア分析などの技法をもとにした、不適切回答者のあぶり出しを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の初年度計画としては、2023年度に実施する本調査・実験に向けて、質問項目ならびに不適切回答検知のための新たな仕組みの開発を見据えた予備調査を行う予定であった。これに対して研究実績の項にて述べた通り、2022年度は研究にかかる調査・実験を3つ遂行することができた。これにより当初計画よりも多くのデータを蓄積でき、本調査・実験に向けて新たな知見を導出する基礎固めを行うことができた。 一方で、取得したデータについては、現在のところ基礎統計量の算出やその他簡便な統計分析を適用するだけに止まっており、目立った知見の導出には至っていない。これは、予想を上回る分量の調査・実験データを取得できたことに伴うデータ整備のため、想定していた以上に時間を要したことによるものである。また現状でも、一部のデータは整備の途中にあり、より洗練された統計モデル・機械学習モデルを適用するためには、さらに多少の時間的猶予を要するものと見込まれる。その理由は、複数の調査・実験間で共通している質問項目などの変数をマージして、モード間比較を実施できるようにするためのデータ融合のプロセスにおいて、調査対象者の属性区分や測定単位の共通化を図る必要があり、異なる測定値を有する変数の場合、どちらに基準を合わせるのかについて慎重な判断が求められるためである。こうした課題については最適な選択を行えるよう、今後も研究分担者や連携関係にある研究者との間で熟議を重ねる予定である。 以上のように、研究遂行のためのデータ収集過程では想定以上の進展があったものの、その整備の過程で一部に遅れが生じているのが現状である。したがって、総合的に見ると、進捗状況としてはおおむね順調に進展しているとの評価を下すことが適当であると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策については、次の2点の通りである。 1. 2023年度もオンライン掲示板システムを用いた実験を実施する。そこでは2022年度で用いた不適切回答検知の仕組みを発展させた技法を用いて、被験者属性に関する事前調査を行い、当該調査データとオンライン実験への関与度およびコメント内容(他者からの評価システムによる評価の他、AIを用いたコメント内容のトキシシティ分類)の関連性を分析する。これにより、マクロ社会(心理)実験に参加した被験者の振舞いについてのデータを、不適切回答検知の指標に基づいて適切なものと不適切なものへと選別できるか検証を行う。 2. 2022年度のコンジョイント分析に導入した不適切回答検知の仕組みの頑健性について検証するため、規模を拡大した本調査として2023年度もWeb調査を実施する。その際には、これまでの調査・実験で使用した不適切回答検知の仕組みを再び導入する他、Satisficeによる不適切回答の文化的側面による差異も検出可能とするため、国際比較調査を行うことを検討している。比較対象とする国の候補としては、日本と同じアジア圏に属し文化的に近いと考えられる台湾と、地理的には比較的近いながらも、欧米圏の文化・価値観に基づいた社会が構築されているオーストラリアを検討している。 なお、上記の実験ならびに調査で得られたデータについては、多変量解析による統計分析に加えて、深層学習に代表される機械学習や、生成AIによるデータの判別なども視野に入れて検証を進める計画である。それにより複合的な視点でSatisfice検知および予防の仕組みを構築するとともに、どのような対象者がSatisficeによる不適切回答を行う傾向にあるのかについての知見の導出も目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は次年度に向けた予備調査の実施のため、Web調査の実施費用として100万円を計上していた。なお当該のWeb調査(予備調査)は、調査目的や使用する調査項目に共通点が多数存在していた他の研究プロジェクト(情報・システム研究機構 未来投資型研究プロジェクト 「要因実験的な社会調査を用いた、健康リスクに関する情報提供と行動変容の関連性の研究:新たな科学コミュニケーションモデルの創出」 加藤直子 代表)と共同で調査を実施することで、研究費の支出を抑えつつ規模を拡大することが見込めた。そのため、支出部分を切り分けたうえで互いに研究費を負担することによるWeb調査を実施した。これにより、当初調査費用とする予定であった研究費に20万円の残額が生じた。 上記理由により次年度使用額の生じた研究費は、2023年度に実施する予定の本調査においてサンプルサイズを増やし、新たに調査項目追加するなど、調査規模を拡大するために使用する計画である。
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[Book] 数理社会学事典2022
Author(s)
数理社会学会 数理社会学事典刊行委員会
Total Pages
782
Publisher
丸善出版
ISBN
4621306650