2023 Fiscal Year Research-status Report
運動行為論の展開:GPS・SNSビッグデータを用いたリアル/オンライン分析統合
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22K01871
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
濱西 栄司 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (30609607)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ビッグデータ / 社会運動 / 空間 / 抗議 / デモ / 集会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、公共的な場における運動行為(抗議デモ・集会等)の特徴とリアル/オンラインの展開・成果をめぐる因果的メカニズムを、非組織論的な観点から国際・歴史比較的に明らかにすることにより、民主社会における運動行為のありようや成果・意義をめぐる討議と合意形成の空間の創出に資する新たな学術的基盤を構築することにある。 これまで大規模なスマートフォン・SNSビッグデータ収集・分析を行ってきたが、2023年度は、新たな大規模イベントの発生に備えつつ、既存の大規模イベントに関するより詳細なビッグデータの購入に向けた検討を業者と行った。並行して、2018年来の筆者の運動行為研究の成果をまとめた学術書の出版準備を進めた(2024年夏刊行予定)。 すなわち2000年代の4つのG8サミット(九州・沖縄、ジェノヴァ、北海道、ラクイラ)、1999年シアトルWTO閣僚会議、2009年のピッツバーグG20とコペンハーゲンCOP15、2015年の反安保法制抗議集会と連合・全労連メーデー中央大会、そして2020年緊急事態宣言下の外出行動を事例として、運動行為の配置・展開(密集・分散)を描き、常設スペース、臨時スペースとの関係性、運動行為の展開(合流と方向、拡散)と社会的環境、運動行為の変動(内部構成、儀礼)、及び個人の運動行為を描いた。 さらに、それらの記述を歴史的行為論と結び付けることで、社会運動の解釈論自体を遂行的な次元まで拡張し、同時に運動行為の代表的な特徴の形成について説明するモデルを構築した。以上、記述・分析共にオリジナルな成果であり、国内外問わず前例のないものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、運動行為の記述・分析成果を著書としてパブリッシュできることは重要で、その点は想定以上に研究が進展している。特にビッグデータを用いた集会記述の方法論の提示は、多様な事例に研究を拡大していくうえで欠かせない。また空間的・時間的要因に関する考察は、社会運動の組織戦略に回収されないような運動の側面(抗議者の集結・解散のタイミングやプロセス)を示唆するものであり、運動行為をめぐる因果関係の研究にも寄与しうる。 他方で、ビッグデータの購入は新しい大規模なイベントの発生とタイミングを合わせる必要があり、業者との検討は進めているが、費用効果を考えて、2023年度は購入を控えた。2024年度も大規模イベントが発生しないときには、過去の大規模イベントについてより詳細なデータを購入する予定であり、その準備も完全にできている。 以上から、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、出版される著書に対するさまざまな客観的な批判・コメントをふまえ、また大規模なビッグデータの購入と分析を行うことで、「運動行為論」の体系化をさらに進めていく。著書の英語化も進め、2018年度から意図的に控えていた、国際的な研究コミュニティの中で成果を積極的に発信していく。それらの著書出版によって研究のオリジナリティを確保することができるので、今後はペンディングしていた、国内外の研究者とのビッグデータ共同研究に向けた準備も進める予定である。政治学、政治地理学、歴史学、情報学などとも連携するする形で、「社会運動の社会科学」を構想し、さらに大規模なデータ購入に向けた新しい研究プログラムのたちあげを進める。
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Causes of Carryover |
2023年度には大規模なイベントが発生しなかったため、代わりに過去のイベントについて属性・関心まで踏み込んだデータ購入を検討し、業者とも相談を行った。残額全てを費やして購入は可能であったが、必ずしも急ぎではないので、費用効果を考え、新しい大規模イベントの発生を引き続き待つことにした。 2024年度もイベントを観察・調査しつつ、大規模なものが発生した場合はそちらに予算を傾注する。そうでない場合は、過去の大規模イベントのデータ収集に費やす計画である。
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