2022 Fiscal Year Research-status Report
近現代都市における産業化と水害に関する歴史災害・歴史社会学的研究
Project/Area Number |
22K01890
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
武田 尚子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (30339527)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 名古屋市 / 土地区画整理事業 / 庄内川 / 微高地 / 低湿地 |
Outline of Annual Research Achievements |
名古屋市中心部の中村区を調査対象地とし、歴史的アーカイブを用いて、近代における土地区画整理事業と水害対策について歴史社会学的研究を行った。調査地域である中村区はJR名古屋駅の西側地域である。現在は都心部商業地域であり、都市再開発された「ささしまライブ24地区」がある。中村区にはリニア中央新幹線駅の西側地上出口が設置予定で、現在、リニア駅建設が進んでおり、駅周辺の再整備が行われている。中村区はリニア開業による都市再開発で注目を集めている地域の一つである。他方、中村区は名古屋市のなかでも一貫して生活保護率の高い区であった。低所得層が集積する地域社会構造が近現代に形成されたと推測される。 調査地域の地形的特徴は庄内川から数本の小河川が貫流して南部に流れ、低湿地と微高の自然堤防が併存しているという点にある(現在は暗渠化)。微高地には中世の荘園にルーツをもつ自然村が形成され、小河川流域の低湿地が水田として土地利用されていた。近代都市化の時期、このような「微高地の自然村」と「低湿地の水田」が商工地域に開発されていった。 名古屋市の戦前期都市化は、大正8年(1919)に東京市区改正条例の準用指定を受け、都市計画事業の実施が可能になり、のち中村区となった地域では名望家層による土地買収、開発計画が立案され、土地区画整理事業が実施された。このとき区画整理の対象になったのは「低湿地の水田」である。つまりスプロール開発ではなく、条件不良地域に対し、近代都市化の時代に区画整理が実施された。一方、居住条件が良好な「微高地」には従来からの自然村が立地していたため、区画整理の対象にはならなかった。結果的には、この時期に区画整理が実施されなかった「旧自然村」地域の都市基盤整備が遅れ、高度経済成長期に生活保護率の高い地域になった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題に関するアーカイブの探索、資料収集を進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
水害に関するアーカイブ資料を諸機関で探索したところ、直接に河川の氾濫による被災だけではなく、多量の降水による地盤の変化による土砂崩れや、海岸部では荒天による高波被害等々、多様な被災状況があり、それに関するアーカイブが多種多様に保存されていることがわかった。今後は歴史災害の範囲を当初より拡大して、資料収集に注力し、詳細な分析が可能な調査地を的確に選択することに努める予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナ感染率が低下しない時期があり、所属機関による出張が認められない時期があり、予定していた資料収集に出張できないことがあり、次年度使用額が発生した。今年度はコロナ流行は落ち着いているので、予定通りの研究が遂行できる予定である。
|