2022 Fiscal Year Research-status Report
軍事クーデターはビルマ系難民の移住戦略をどう変えるか―ポスト難民期から再難民期へ
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22K01912
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
人見 泰弘 武蔵大学, 社会学部, 准教授 (10584352)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 難民 / ビルマ(ミャンマー) / トランスナショナリズム / 再難民期 / 宗教 / 仏教 / 社会統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の一年目として、前半は国際社会学、難民研究、トランスナショナリズム研究に関する先行研究の検討に注力し、先行研究の到達点の把握と今後の研究上の課題のあぶり出しを行った。並行して、初年度は国内調査に軸足を置き、とくに関東圏を中心に調査を実施した。ビルマ系難民が実施する各種行事やイベントへの参加及びフィールドワークを行い、関係者への聞き取りや参与観察調査などを行った。このなかで本年度は移民や難民の社会統合論で着目される移民宗教が果たす社会的機能に関する調査研究を重点的に実施した。仏教徒が多い事情を踏まえ、夏季休暇を中心に関東圏に所在するビルマ系僧院でのフィールド調査を行った。出身国ビルマでは宗教的マジョリティであったビルマ系仏教徒も、来日という越境移動を契機として日本ではマイノリティ宗教として宗教市場へ編入することを余儀なくされる。来日後のビルマ系同胞の宗教需要を満たすため、ビルマ系仏教徒は日緬両国をまたぐ越境的ネットワークを介し、出身国から宗教的財の取寄せや僧侶の呼寄せを行うなど宗教基盤の整備を進めてきたことが把握できたとともに、軍事クーデターの影響が長引くなか、子どものアイデンティティ形成や教育、ビルマ系一世の高齢化とその後の対応など長期滞在に関するビルマ系仏教徒の宗教的需要の存在も明るみとなった。今回の調査研究で明らかになったビルマ系仏教徒の越境的な移住戦略については、宗教研究に関する専門雑誌にて学術論文として公表する機会を得た。また並行して、難民支援NGOの会議などにも継続して参加し、難民やビルマに関する最新情報のアップデイトに務めるとともに、次年度の調査研究への準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定したように、まずは文献レビューを徹底的に行い、研究課題の精緻化を進めた。夏季休暇中にはビルマ系僧院でのフィールド調査を実施し、ビルマ及び難民関係のイベントなどへの参加を通じて今後の調査研究に向けた情報収集を継続している。二年目以降も引き続き、調査研究を進めていく所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度もビルマ系難民に関するフィールド調査を継続する。本年度はビルマのディアスポラ政策に関する研究報告を予定しており、マクロな視点から出身国政府がいかに海外同胞への関与を深めているかという課題に取り組む予定である。このほか今後の研究課題の推進に必要な文献収集やフィールド調査を継続して実施する。
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Causes of Carryover |
感染症の影響が残り、各種イベントの開催や遠方での調査研究が限られたことで、次年度の未使用額が生じることになった。未使用額については2023年度に資料購入費や調査旅費の一部として執行する予定である。
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Research Products
(1 results)