2022 Fiscal Year Research-status Report
アクターネットワーク理論による高齢者住宅居住者の自律性の解明
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22K01915
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
伊藤 嘉高 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40550653)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アクターネットワーク理論 / サービス付き高齢者向け住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢化のなかで、「地域居住」による高齢者の自律性維持について議論されてきた。施設型のケアは一律的になされるため、過剰なケアとなりやすく高齢者の自律性をそぎかねない。その点、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、住まいとケアが分離されるため、そうした問題は回避できるとされてきた。しかし、申請者の研究では、サ高住居住者は必ずしも自身の自律性を保てていない。逆に自律性の確保は、ケアを主体的に選択する本人の能動性ではなく、当人を取り巻く人的・物的ネットワークが鍵を握っていることが示唆された。
しかし、どのような人や事物とのネットワークが、サ高住居住者の自律性を高めたり削いだりするのかについては十分に明らかになっていない。そこで、本研究では、能動/受動の二分法を超えて事物の連関のなかで「自律性」を記述するアクターネットワーク理論を採用し、上記のネットワークを質的調査により記述し、さらに量的調査によって共起的・定量的に把握することで、自律を可能にする地域居住の条件を定性的・定量的に明らかにする。
そこで、今年度は、申請者が現在居住する新潟市(地方大都市)を対象とした自宅居住者とサ高住居住者に対する質問紙調査(選挙人名簿により抽出:自宅居住者は無作為抽出;サ高住は全数調査)に基づき、生活の自律性とその条件について、従来の意味での「客観的な」状況を明らかにするとともに、同調査で募ったインタビュー調査への協力対象者のデータを整理し、次年度のインタビュー調査の基本データを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部の量的調査は未実施であるが、サービス付き高齢者向け住宅に関する関連資料、文献の渉猟も同時に行っており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
インタビュー調査の応諾が得られた対象者に対して、1年半にわたり継続的なインタビュー調査を実施する。そこでは、各種介護サービスの利用状況の詳細とともに、居住者の心身の状態(要介護度、医療必要度)、生活実態などの基礎情報を得るとともに、ANTの方法に基づくインタビューを可能な限り行う。
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Causes of Carryover |
2022年度に実施予定であった質問紙調査のみ実施分の経費が未執行である。同調査は2023年度に実施する予定である。
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Research Products
(6 results)