2023 Fiscal Year Research-status Report
アクターネットワーク理論による高齢者住宅居住者の自律性の解明
Project/Area Number |
22K01915
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
伊藤 嘉高 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40550653)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | アクターネットワーク理論 / サービス付き高齢者向け住宅 / 地域居住 |
Outline of Annual Research Achievements |
新潟市内のサ高住入居者を中心にインタビュー調査を行った(計20名)。その際、サ高住入居者の自律をめぐって、より根源的な問いにアプローチした。つまり、「そもそも、サ高住に住む高齢者が地域のなかで自律的に生活するとはどういうことなのか」という問いである。 具体的には、アクターネットワーク理論の方法を用いて、「地域居住」における「地域」をさまざまなヒトやモノとの連関として捉え返し、サ高住に住まう人びとがサ高住入居によって、自律を可能にする連関をいかに維持・変容・喪失しているのかを見た。 主な結果は以下の通りであった。1)新潟市内に住み続け、サービスを必要に応じて選べているという点では、「地域居住」は実現できているように見えるが、その内実は異なっていた。2)転居前の人間関係を維持できていたのは、近隣のサ高住に転居し、自宅も残っている場合に限られており、大多数は、転居前の人間関係が切れていた。3)転居後のサ高住の立地する地域のコミュニティに属するケースはなかった。4)サ高住内で新たな友人関係を構築できていたのは、趣味を媒介した少数派であった。5)趣味による媒介がない場合は、新たな友人関係を構築できていなかった。 そのうえで、「囲い込み」そのものが必ずしも問題になっているわけではない実態を踏まえて、サ高住入居者の自律を可能にする条件は、サービス選択の自己決定を可能にする制度的対応というよりは、それぞれの自律(できることが実際にできていること)を可能にする連関を集合的に組み直していくことを可能にする「サ高住の自治」の構築にあることを見出した。ただし、これはまだ暫定的な結論である。 今後、新潟においてもっと多くの多様な高齢者の方々の声を集めて可視化し、より多くの関心を集めていくことで、(絶対的な正解がないなかで)よりよい「生の自律」をともに構築していくことが重要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍が収束しておらず、インテンシブな参与観察は依然として実施できていないが、継続的なインタビュー調査は問題なく実施できているため、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の調査で得られた「サ高住の自治の構築」という視点から、特定のサ高住に焦点を当てて、インテンシブなフィールドワークを実施する。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍によりインテンシブな参与観察ができなかったため、残額が発生した。次年度に参与観察を行い、適切に予算を執行する。
|