2022 Fiscal Year Research-status Report
社会学的時間批判―公理論化と学説・応用研究の総合による現代的時間現象の批判的研究
Project/Area Number |
22K01917
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
高橋 顕也 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (60739796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥越 信吾 十文字学園女子大学, 社会情報デザイン学部, 講師 (00839110)
梅村 麦生 神戸大学, 人文学研究科, 講師 (70758557)
吉田 耕平 東京都立大学, 人文科学研究科, 客員研究員 (90706748)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 時間の社会学 / 社会批判 / 公理論化 / 時計時間と関係時間 / 進歩の観念 / 社会的加速 / 負債 / 真木悠介 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の初年度である2022年度は、社会学的時間概念、および社会学が主題とする社会的時間の理論的・学説的・経験的解明を行い、現代社会の時間的現象の批判的考察を行うという目標のもと、主に(A)社会的時間概念の公理論化研究と、(B)「時間の社会学」に関わる理論・学説研究(学説史、概念史研究を含む)を行った。 1)これまでもさまざまな形で試みられてきた「時間の社会学」の学説史を、“時計時間”と“関係時間”との葛藤、その克服の可能性という問題系が確立されていく過程としてあらためて捉え直して再構成をおこない、あらたな展望を提起した 2)〈進歩〉と〈退歩〉という一対の観念が同時に、かつ関わり合いながら近代西欧の思想史の中に現れた経緯を辿った。それらの歴史観を表明する中で線形的な時間の意識が定着していったことが示唆された。このほか、災害の影響に関する学説の解説ならびにビッグデータの分析を行った 3)2022年度は、時間の社会学の学説史を記述してきたこれまでの成果をまとめたうえで、ドイツの社会理論家ハルトムート・ローザの社会的加速理論の検討を行った。より具体的には、第一に、加速理論の時間の社会学的な特徴を取り出すことと、第二に、類似の研究である『時間の比較社会学』との比較を行った 4)真木悠介(見田宗介)の時間論において核心となる「コンサマトリー」と「交響」という概念の内実を中心的に詮索し、すべてを抽象化する近代精神の帰結としてのニヒリズムを、かけがえのなさを感受する能力の再建とも称すべき方向にのりこえようと真木が展望していたことを明らかにした 5)デュルケームの宗教的時間論について論文を執筆し、本事業の論文集『社会の時間』所収の論文として発表した。また、デュルケーム学派のマルセル・モースの贈与論を「負債」という観点から読み解き、贈与における時間性について「信用」という観点から研究を行った
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本事業がとりくむ3領域のうち、主に(A)社会的時間概念の公理論化研究と、(B)「時間の社会学」に関わる理論・学説研究(学説史、概念史研究を含む)を行い、次年度目以降の社会批判研究の土台となる知見(詳細は前項)を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目の研究としては、ひきつづき(1)社会的時間概念の公理論化研究と、(2)「時間の社会学」に関わる学説研究を進めるとともに、(3)「時間の社会学」の応用研究を通じた社会批判研究に着手する。また、科研メンバー内外の参加者による研究会の実施と、研究論集、日本社会学会でのテーマセッションを企画している。以下、個別の研究内容ごとに述べる。 1)これまでの学説史研究で明らかにした、“時計時間”と“関係時間”との葛藤、その克服の可能性という「時間の社会学」の問題系に即して、「時間の社会学」の古典理論と現代理論のなかで提起された多元的・関係論的時間概念について再検討をおこなう 2)〈秩序〉の観念に焦点を当てる。19世紀末以降、西欧社会では〈進歩〉や〈退歩〉にかわり、支配体制や協調関係のなかの〈秩序〉が注目されるようになった。この点を手がかりにして時間意識の変化を明らかにする 3)今年度の研究成果の一つとして、ローザと真木の比較を行ったが、両者の異同を大急ぎで取り出すだけにとどまるものであった。これを受けて今後は、両者の比較をさらに行い、①両者の理論の違いおよび、②時間を疎外論から捉えるというパースペクティブの意義について、検討を行う 4)当初はデュルケーム学派とアナール学派との比較研究を中心に行う予定であったが、デュルケーム学派第二世代のマルセル・モースの贈与論の研究を継続し、「負債」という観点から商品交換とは異なる贈与交換(互酬)の時間性について研究を行い、現代の資本主義における負債権力の時間を批判する視座を獲得することを目指す 5)近代精神は現在の意味を未来の結果に求めざるをえず、それを失うとニヒリズムにおちいるという研究成果をふまえて、進歩や発展を楽観的に信じることができなくなった現代における「弱気な未来主義」(若林幹夫)ともいえるSDGsを、時間の社会学の観点から批判的に再検討する
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Causes of Carryover |
物品費(主に資料代)および旅費(主に国内での学会、研究会参加)について、当初の計画よりも予算使用が少なかったため次年度使用額が生じた。今年度生じた次年度使用額分については、購入が未決定であった資料の購入や、国内外の学会、研究会への計画段階以上の積極的な参加により、次年度において使用する。
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[Book] 社会の時間 : 新たな「時間の社会学」の構築へ向けて2022
Author(s)
高橋顕也・梅村麦生・金瑛(編著)鳥越信吾・大窪彬夫・木村純・藤貫裕・吉田耕平・鈴木洋仁・德宮俊貴・樋口あゆみ・金信行・若狭優(著)
Total Pages
185
Publisher
科研費・基盤研究(C)(JP19K02145, JP22K01917)報告書
ISBN
9784909838063
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[Book] 人文学を解き放つ2022
Author(s)
神戸大学人文学研究科(編)梅村麦生 ほか(著)
Total Pages
248
Publisher
神戸大学出版会
ISBN
9784909364197
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