2022 Fiscal Year Research-status Report
初期コンピュータ利用者のメディア文化とその後―教養の復活と消失、夢と蹉跌
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22K01918
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
前田 至剛 追手門学院大学, 社会学部, 准教授 (00454455)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マイコン / メディア史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1970年代に日本において創刊されたマイコン雑誌に加えて、関連するコンピュータや情報処理に関する雑誌記事や読者投稿欄にくわえて、以下の資料についても収集をおこなった。労働問題を扱う雑誌で盛んに特集されたコンピュータの導入にともなう労働環境の変化について論じる記事や、米国で刊行されていたマイコン雑誌についても記事を収集し、整理分析をおこなった。それにより以下の点が明らかとなった。マイコンに熱中した当時の若者たちは、世界で発生しつつあるコンピュータ革命による世界の変革を自らが担う気宇壮大な夢をかかえつつ、卑近な将来のキャリア形成、とりわけソフトウェア産業における過酷な労働に参入せざるをえない状況にあった。それに対し、当時の労働問題のフレームワークは、彼らの苦境をとらえることができていたとは言い難い。それどころか、世界中で「日本製」が売れていた=輸入側での自国製品売り上げ低下=失業が想定されることから、日本が「労働問題の輸出国」となることを懸念する言説すら登場していた。他方米国では、ビジネス雑誌にけるジャパンバッシングが頻発していたものの、コンピュータ関連雑誌ではむしろ日本の技術力向上を肯定する言説が語られるなど、マイコン文化をとりまく言説はさまざまなズレと錯綜をともなうものであった。なお、本年度の成果は、R5年にメディア学会において本課題のテーマによって企画するワークショップにおいて口頭発表をおこなう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3カ年の研究期間中の1カ年中に実施すべき資料収集および分析をほぼ完遂することができた。資料収集環境の向上によりマイコン関連雑誌にくわえて、当時のユーザーを取り巻く環境について把握するために必要な資料が収集できたことにより、ユーザーたちがおかれた環境、とりわけ労働環境と想定されうるキャリアパス等についても明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
当時のユーザーを取り巻く環境、とりわけ労働やキャリアパスについて引き続き詳細に検討するとともに、その後インターネットの登場とも相まって花開くオタク文化との関連についても分析をおこない、マイコン文化がその後のメディア文化にいかなる影響を及ぼしたのかについて明らかにする。
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Causes of Carryover |
以下の理由により、次年度使用額が生じることとなった。 R4年度購入予定であった資料のうち一部が国会図書館デジタル化送信サービスにより入手できるようになったため、分析の過程で発見した他の資料および収集範囲を拡大することとしたが、購入資料の納品が年度内に不可能であったため。 本年度未使用額はR5年度請求額とあわせて、R4年度に先送りとなった資料の購入に充てることを計画している。
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Research Products
(2 results)