2023 Fiscal Year Research-status Report
初期コンピュータ利用者のメディア文化とその後―教養の復活と消失、夢と蹉跌
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22K01918
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
前田 至剛 追手門学院大学, 社会学部, 准教授 (00454455)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マイコン / 労働 / ゲーム文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度明らかとなったのは以下の点である。 1つ目は、マイコンユーザーの熱意が注がれる先としての労働が過酷であり、にもかかわらず労働組織がその苦境を充分に救い上げることができなかったということである。他方、日米貿易摩擦を背景として、労働や産業振興の観点からも、「世界」を意識した言説が語られるが、日米の雑誌記事に比較からは、マイコンと労働に関わる言説上の差異も明らかとなった。 2つ目は、昭和50年代以降のマイコン/パソコン文化を考える際にとりわけ重要な「ゲーム」という要素とのかかわりについてである。ゲーム市場の拡大は娯楽としてのマイコン/パソコン利用のみならず、ゲーム制作者というキャリア選択も強く意識される状況を生み出す。また、マイコンユーザーは誇大な夢をみる一方、過酷な労働など厳しい現実に直面したとき、それらが容易には解決しないという事実を反映するかたちで、様々な代償行為をおこなった。その一つがゲーム市場の拡大にともない、マイコン/パソコン・ゲーム雑誌上で作用しはじめる嗤いやおふざけといった「戯れ」である。ここでいう「戯れ」とは、単なる笑いを目的としたもののみならず、自らの苦悩を嗤い、茶化し、自虐的に楽しむ技法をさす。この「戯れ」は、その後のオタクやインターネット文化におけるそれときわめて似通ったものであった。 上記の内容について、日本メディア学会2023年度秋季大会にて「マイコンブーム――『雑誌でつながる』『家庭で触れる』『先端技術のメディア文化』の最終局面」と題するワークショップを企画し、問題提起者として発表をおこなった。また「マイコン文化は何を受け継ぎ、何を受け渡したのか?」(追手門学院大学社会学部紀要)として成果を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
収集する雑誌資料の範囲を拡大し、日米マイコン雑誌の比較およびゲーム文化へと受け継がれるマイコン文化の諸要素について明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに収集する資料の範囲を拡大し、より技術職・専門職よりのマイコン言説と、他方でより大衆化、娯楽志向を強めるマイコン・パソコン言説との対応や断絶の状況について分析をおこなう。
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