2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K01927
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮本 匠 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (80646711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
草郷 孝好 関西大学, 社会学部, 教授 (30308077)
平井 太郎 弘前大学, 大学院地域社会研究科, 教授 (70573559)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 復興 / 復興感 / インタビュー / 東日本大震災 / 被災者 / 移住 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は大規模災害によって被災した被災者の復興感に寄与する要因と被災者の価値観の 変化について復興過程を可視化する手法である「復興曲線」インタビューによって明らかに することを目的としている。これまでの研究から、被災者の復興感が、住宅再建など「元に戻る」ことだけでは必ずしも高まることがなく、むしろ「重要他者」との出会いによる震災体験の意味づけが復興感に影響していることがわかっている。そこで、本研究ではこの「重要他者」が具体的にはどのような役割を果たしているのかを被災者への「復興曲線」インタビュー調査から明らかにすることを試みた。 「復興曲線」とは、被災者に災害から現在までの心理的変化をあらわす曲線を描いてもらいながら復興過程をふりかえってもらう、復興過程を可視化するインタビュー手法である。本年度は、東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市唐桑半島の被災者15名と、唐桑半島に移住し、地域の復興に大きな影響を与えていると考えられる移住者5名に「復興曲線」インタビューを実施した。 インタビューから明らかになったことは、被災者の中には、生活再建を遂げた後に、曲線が一時的に平らになる時期を経験するものがいたことだった。この時期を「プラトー」と名づけた。そして、この「プラトー」の時期に、被災者の震災体験の意味づけに関わるような移住者と出会うことで、被災者の復興感が高まったり、安定するようになることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は宮城県気仙沼市と岩手県釜石市の被災者各15名へのインタビューを予定していたが、気仙沼市での調査の準備をする中で、本研究の重要なキーワードである「重要他者」自身にもインタビューを実施したほうがよいこと、気仙沼市には「重要他者」と想定できるような移住者が多数存在することが明らかとなり、釜石市での調査の代わりに、気仙沼市における移住者を含めた外部者へのインタビューを同時に行うことで、被災者の復興過程をより立体的に把握することを試み、その目的を達成することができたため、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度のインタビューで得られたデータを分析し、学術論文の執筆を行う。さらに、「重要他者」と出会うことのなかったような被災者の復興過程との比較のために、さらなるインタビュー調査を行う。
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Causes of Carryover |
オンラインツールによる打ち合わせが可能だったこと、現地支援組織の協力者に謝金を支払うことで調査準備が整ったこと、別途出張と兼ねて調査を実施できたこと等があり、今年度は旅費が少なくなった。次年度は、本年度の分も含めて、現地調査に加えて、学会発表等の旅費に充当することにしたい。
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Research Products
(4 results)