2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Formation of Local Governance of U.S. Community-Based Workforce Development
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22K01928
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
前山 総一郎 福山市立大学, 都市経営学部, 教授 (80229327)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ワークフォース / リスキリング / ローカルガバナンス / コミュニティカレッジ / 就労支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究計画は、「コミュニティベースド・ワークフォース開発」というものが、いかなる形成過程と力学において、ローカルガバナンスとしてのものとして形成されてきたのかを明らかにすることを目指している。 今年度、年次計画の遂行として、資料・データ(各機関の報告書や各種)の調査を国立国会図書館や現地公立図書館にておこない、かつ、それと並行して、現地に赴いての現地調査を開始した。具体的には、 全米で、先進的と目されているシアトルーキング郡ワークフォース開発協会 主席局長 Marie Kurose氏、シアトル市経済開発局ワークフォース開発関係マネージャー John Lederer氏への、現地でのヒアリングをおこない、①ワークフォース開発のローカルガバナンスの形成プロセス、②連邦政府の政策との関係性(連動やずれ)、③ワークフォース開発特有の技法と社会思想、についての確認を行った。 とりわけ、同開発に当初から関わったシアトルーキング郡ワークフォース開発協会から話を聞くことができたことから、ワークフォースの概念が、同開発の端緒となったクリントン政権が連邦議会と切り結びながら、就業の促成栽培を求めるものではなく、プログラムの体系化・推進諸組織の連携化(ローカルガバナンス)を求める制定の努力のなかで結実してきたことが、現地でのとらえ方を踏まえて現実的に把握することができた。なお、これによって、クリントン政権以降の米国の福祉・就労政策を、もっぱら「ワークファースト」政策(福祉切り捨て就労第一主義)であると現在広範に捉えられている理解が、展開過程における施策の片面のみを見たとらえ方であることが明らかになった。 その成果については、前山総一郎,「アメリカの「ワークフォース開発」の概念の形成」(『都市経営』No.15,2022)として刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、資料の調査や、またとりわけ現地でのキー組織およびキーとなる関係者へのヒアリング調査を行うことができた(シアトルーキング郡ワークフォース開発協会 主席局長 Marie Kurose氏、シアトル市経済開発局ワークフォース開発関係マネージャー John Lederer氏)。Kurose氏は、1990年代からワークフォース開発(とその原型)の形成に、自治体および同協議会を率いてすすめた方であり、Lederer氏は同開発の制度的柱であるシアトルエリアのコミュニティカレッジの開発推進担当者であり、現実的な展開と課題についての知見を提供頂いた。このことは、研究の進展にとって大きな支援となるものであった。 さらに、この調査に基づく研究を、論文で発信するとともに、第95回日本社会学会大会 (産業・労働・組織(1)分科会)にて口頭発表の機会を得て提起したが、その場においての質疑応答を通じて、報告した研究についての、学会と実践における研究の意味(視角・構成)や価値を確認し、また今後の研究にむけての進捗についての確認を得ることとなった。労働社会学、経営学、組織論などの研究者が集まった場であったが、新たな視角を提供すると捉えられることとなった。以上から、研究計画の進捗を良好な形で得たと捉えた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に推進した研究にあっては、ワークフォース開発に当初から関わったシアトルーキング郡ワークフォース開発協会から話を聞くことができたことから、これまでの学会や社会的視座においては未聞のことが見えてきた。第一に、ワークフォース開発というものにつき、同開発の端緒となったクリントン政権・連邦議会という連邦政府の政策と、現地ローカリティでの推進と、連動と反発という、実際的展開における政策的ずれが生じてきたことがわかった。また、第二に、他方で、"dual customer approach”といったワークフォース開発固有の手法、いずれのサイドにあっても大切に捉える手法が編み出されてきたことが見えてきた。これらのことから、ワークフォース開発の政策、ワークフォース開発のローカルガバナンスの展開について、全体像を得た。 この全体像をもとに、今後、2023年度には、現地における、ワークフォース開発体制の柱となっている諸機関(コミュニティカレッジ等)での職業教育プログラムや仲介支援の具体に触れることを目指している。目下、上記のキーパーソンを梃にしつつ、調整を鋭意すすめている。(うまくゆかない場合には、他の手法や機関を検討している。)また、あわせてさらに、それにむけての資料の収集も進めている。
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Causes of Carryover |
今年度に予定していた調査日程が、相手の状況により短縮できたメリットがあり予算を効果的に使用することができたことから、2022年度には支出額を予定より削減することができた。 2023年度には、現地でのヒアリングおよび実態調査を集約的におこなうことが求められることの点で多くの予算が必要となることから、昨年度からの額(240,960円)を有効に用いて、新年度の額をあわせて2023年度の調査研究計画の効果的な実施にむけての費用に充てたい。
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