2022 Fiscal Year Research-status Report
Transnational practices by migrants on issues related to death: a focus on the case of Brazilians in Japan
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22K01936
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
イシ アンジェロ 武蔵大学, 社会学部, 教授 (20386353)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 在日ブラジル人 / 移民 / 死、終活 / 墓活 / 歴史化 / 集合的記憶 / トランスナショナル / 高齢化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主題は日本に在住する代表的な移民集団であるブラジル人の高齢化によって「死」をめぐる諸問題がどのように顕在化しているか、彼ら彼女らの最期や死後に対する意識や行為の解明である。同時に、高齢化する在日ブラジル人コミュニティのリーダーがいかに「集合的記憶」を形成しているか、移住経験の「歴史化」にも着目する。初年度においては、墓を用意していないなか日本で死亡した移民のために用意された「共同墓地」を巡る動きを中心に調査した。まず、6月18日(移民記念日)に群馬県大泉町の日本定住資料館(ブラジリアンプラザ内)で開催された行事を参与観察した。その関係者の案内で施設の見学も行ない、その詳細についても聞き取った。この行事を主催した日本海外協会の主要メンバーは、代表を含め、本研究で注目する東京都八王子市の共同墓地と重なる。同イベント会場ではこの墓地の紹介パネルが展示された。さらに、共同墓地とライブ中継を結んで、その趣旨の説明がなされた。 二つ目の主要な調査活動は11月13日に実施された、東京都の多摩八王子霊苑で共同墓地の1周年を記念する合同供養の参与観察である。新設後初めての「お盆」を機に、多宗教の供養が実施されたが、カトリック代表で参加した関係者等に詳しく話を聞いた(日本ではお盆は8月だが、ブラジルのお盆カレンダーを意識して、11月に設定されたという)。他方、23年2月、静岡県浜松市でブラジル政府より勲章を授与した増子利栄への祝賀会を参与観察した。増子については、岩波書店より刊行された『ひとびとの精神史 第7巻 終焉する昭和 1980年代』で論じたが、彼は移民コミュニティの最も有名なリーダーの一人であり、日本で墓を購入した数少ないブラジル人であった。その数日後に彼が他界したという衝撃的な知らせを受けたが、最後の面談が実現できたことは今後の研究活動にとっても貴重な機会となり、感慨深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の実施計画として、主要な調査の一つとして在日ブラジル系移民の死をめぐる「家族・親族を支援する官民の関係者や組織へのヒアリング」を挙げていたが、終活や墓活をめぐって最も具体的な支援策を施している支援団体の関係者が実施した二つの重大なイベント(移民記念日行事での共同墓地開催、およびブラジルのお盆カレンダーに合わせた共同墓地での合同慰霊会)が参与観察できたことは大きな成果である。 さらに、日本国内で墓を購入した数少ないブラジル人が他界する直前に話ができたことも思わぬ収穫である。なお、文献や関連資料の収集も順調に開始できた。一方で、遺族など個々人の意識を把握する調査はまだ未着手である。よって「おおむね順調に進展」という自己評価が妥当であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は次の研究活動を中心に計画している。1)移民の終活・墓活実践の事例研究:前述のとおり、日本で墓を購入した数少ないブラジル人であった静岡県浜松市在住のコミュニティリーダーが他界したので、その墓参り(墓地の観察)を実施すると共に、葬儀等がどのように執り行われたかについて、遺族の想いと手続き面の双方から、可能な限り(遺族に精神的な負担を強いないように最大限の配慮を働かせる範囲内で)調べる。 2)墓活を支援する組織の活動の事例研究:前述のとおり、共同墓地設置という画期的な動きがあるので、この団体やその関係者の今後の活動やイベントを追跡調査する。 3)もう一つの柱である、移民の「歴史化」をめぐる動きや「集合的記憶」の構築、コミュニティとして「高齢化」とどう向き合うかという課題等については、移民メディアの報道や、政府(日本、ブラジル両国)の動きを注視する。 4)比較考察の材料として、他国に移住したブラジル系移民の終活、葬儀、墓活等の状況把握にも可能な範囲で努める。
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Causes of Carryover |
対面参加を予定していた学会やイベントの一部がオンライン開催だったため、旅費に未使用額が生じた。次年度で本研究課題で重要な位置を占める海外調査の旅費の一部や、消耗品購入費用として使用する計画である。
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Research Products
(11 results)