2022 Fiscal Year Research-status Report
独立型社会福祉士におけるソーシャルワークアドボカシー実践モデルの構築
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22K01954
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
小川 幸裕 弘前学院大学, 社会福祉学部, 教授 (90341685)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 独立型社会福祉士 / 法定後見活動 / ソーシャルワークアドボカシー / リーガルアドボカシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、法律専門職によるリーガルアドボカシーとの比較検討が可能な法定後見活動の分析をとおして、独立型社会福祉士による本人を中心としたソーシャルワークアドボカシー実践モデルの構築を行うことを目的としている。令和4年度は、アンケート票およびインタビューガイドの作成にむけ、法定後見活動およびアドボカシーに関する先行研究のレビューを行い、以下4点を確認した。 第1に、ソーシャルワーク領域においてアドボカシーの議論が活発に行われた1960年代以降のアメリカにおける議論の変遷を検討し、アドボカシー概念を構成する主要な項目として「対象」「関係性」「介入の範囲」「戦術」「種類」の5つを抽出した。第2に、国内外のソーシャルワーク領域のアドボカシーの定義を整理し、法定後見活動におけるアドボカシーの特徴として、①法定後見活動でのアドボカシーをクライエントとのパートナーシップ関係を基本に個人に対するケースアドボカシーから社会システムの変革を行うクラスアドボカシーまでの一連の過程を含むこと、②被後見人の権利回復や救済に限定せず被後見人の意思形成や意思実現に向けた環境整備も含むことを確認した。第3に、イギリスおよびドイツとの成年後見制度の比較検討から、わが国の法定後見活動の構造を明らかにし、従来の民法858条にもとづく「財産管理」「身上監護」の整理ではなく、わが国の法定後見活動の実情に応じた「基本的後見活動」「付加的後見活動」に再整理する必要性を確認した。第4に、国内外の文献レビューからアドボカシーの種類を整理し、専門職アドボカシーに位置づけられるソーシャルワークアドボカシーとリーガルアドボカシーを中心として他のアドボカシーとの関連を図示し、法定後見活動におけるソーシャルワークアドボカシーの有効性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の研究期間は4年とし、研究期間内に、①量的研究から法定後見活動でのアドボカシー活動の実態把握およびアドボカシーの構造と関連要因を明らかにし、②質的研究から法定後見活動におけるソーシャルワークアドボカシープロセスの可視化を行い、独立型社会福祉士と法律専門職の比較から、独立型社会福祉士のソーシャルワークアドボカシーの有効性を明らかにすることを目的としている。 令和4年度は、アンケート調査とインタビュー調査の実施にむけて、わが国の法定後見活動の構造とアドボカシーに関する先行研究のレビューを行い、アンケート票とインタビューガイドの作成を行った。 まず、国内外のソーシャルワーク領域でのアドボカシーの定義を整理し、法定後見活動におけるアドボカシーについて操作的に定義した。この操作的定義と法定後見活動およびソーシャルワークアドボカシーに関する先行研究レビューからアンケート票を作成した。アンケート票は、①基本属性、②法定後見活動に関する取り組みとした。法定後見活動に関する質問項目は、法律行為に該当する後見事務に関する質問項目を「基礎的後見活動(日常的に行う財産管理や契約行為)」「付加的後見活動(必要に応じて行う不動産処分や相続など)」とし、法律行為に付随する事実行為に関する質問項目は「アドボカシー活動(地域生活状況把握・関係形成・チーム支援・弁護活動・地域連携ネットワーク形成)」とした。 インタビューは半構造化インタビューを用いることから、インタビューガイドを作成した。質問項目は、これまでの専門職後見人を対象としたインタビューを参考に、①基本属性、②事業内容、③アドボカシーに関する活動内容、④アドボカシーを実践する上での成功要因と阻害要因とした。アドボカシーに関する活動内容については、先行研究のレビューから抽出した「対象」「関係」「範囲」「戦術」「種類」を参考に作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、アンケート調査から社会福祉専門職(独立型社会福祉士)と法律専門職(弁護士・司法書士)の法定後見活動におけるアドボカシーの実態把握を行う。令和4年度に作成したアンケート票を用いたプレ調査でアンケート票の見直しを行った後に本調査を実施する。 アンケート調査は、因子分析によって法定後見活動を構成する因子を抽出し法定後見活動の構造を明らかにする。さらに重回帰分析によって各因子を規定する関連要因を明らかにする。そして、社会福祉専門職と法律専門職の比較検討からソーシャルワークアドボカシーの独自性を明らかにする。対象は、法定後見活動を行う独立型社会福祉士(独立型社会福祉士名簿登録者)約400名と法律専門職(弁護士約200名、司法書士約200名)とする。質問項目は、①基本属性(年齢、性別、専門職としての活動年数、法定後見活動の経験年数、後見受任件数、年収、実践地域の人口規模など)、②法定後見活動のアドボカシーに関する活動、③法定後見活動の課題、とし無記名自記式質問調査を用いる。分析方法はSPSS Statistics Baseを使用し分析を行う。 令和5年度における研究の流れは、5月~6月:アンケート票の作成、6月~9月:アンケート調査の依頼、10月~12月:アンケート調査の実施、1月~3月:まとめ及び報告書の作成を予定している。 令和4年度に行う予定であったアンケート調査の実施および分析が令和5年度に持ち越されたことで、令和5年度は、アンケート調査の実施とインタビュー調査の依頼を行う予定であるが、既に調査を依頼予定の組織・団体と交渉をはじめていることから、現在の遅れには対応が可能である。
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Causes of Carryover |
令和4年度は、アンケートの調査票の作成に時間を要したことから、アンケートを実施できなかった。また、新型コロナウィルス感染症の影響により学会報告が行えなかったことから、アンケートの実施に関する費用および旅費に関する費用を次年度に使用することとなった。 令和5年度の使用計画は、アンケート調査として約60万円、研究成果の報告に係る会場までの旅費(東京都、大阪府など)として約30万円を予定している。
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Research Products
(1 results)