2023 Fiscal Year Research-status Report
独立型社会福祉士におけるソーシャルワークアドボカシー実践モデルの構築
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22K01954
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
小川 幸裕 弘前学院大学, 社会福祉学部, 教授 (90341685)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 独立型社会福祉士 / ソーシャルワークアドボカシー / 成年後見制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、独立型社会福祉士による本人を中心としたソーシャルワークアドボカシー実践モデルの構築を目的としている。 令和5年度は、わが国の独立型社会福祉士の独自性についてアメリカのプライベイト・プラクティスに関する文献レビューから明らかにした。アメリカのプライベイト・プラクティスが心理療法を中心にしているのに対し、わが国の独立型社会福祉士は、クライエント個人のアドボカシーを基本に本人を取り巻く環境改善に取り組み、既存組織に属することで困難であった活動を担っていることが確認された。 次に、令和4年度に行ったアドボカシーの国内外の先行研究のレビューをふまえ、イギリスにおける独立アドボカシー制度の検討をつうじて、独立アドボカシーの特徴を整理した。イギリスの独立アドボカシー制度の検討については、イギリスにおける判断能力に課題を抱える人への独立アドボカシーに関するIMCA(Independent Mental Capacity Advocate)およびICAA(Independent Care Act Advocacy)の制度とアドボカシーの行動規範(Advocacy Code of Practice)から、独立アドボカシーを構成する主要要素として「独立性」「本人中心」「エンパワメント」「アクセシビリティ」「守秘義務」「苦情対応」を確認した。さらに、アドボカシーを提供する組織の継続性と有効性を確保する基準としてアドボカシーに関するQPM(Quality Performance Mark)を参考に、アドボカシーに影響を与える変数として、利益相反等に関する管理方針および個人情報保護方針(プライバシーポリシー)に関する規定および苦情対応手続きの整備が重要となることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は研究期間内に、①法定後見活動でのアドボカシー活動の実態把握およびアドボカシーの構造と関連要因を明らかにすること、②法定後見活動におけるソーシャルワークアドボカシープロセスを可視化すること、③独立型社会福祉士によるソーシャルワークアドボカシー実践モデルの構築を目的としている。 1年目は、イギリスおよびドイツとの成年後見制度の比較検討をつうじて、わが国の法定後見活動を本人の生活全般を支える視点から「基本的後見活動」「付加的後見活動」として再整理する必要性を確認した。次に、多様なアドボカシーの種類と定義の検討から、法定後見活動におけるソーシャルワークアドボカシーの特徴として、①本人の権利回復や救済に限定せず意思把握から意思実現を含む活動であること、②本人とのパートナーシップ関係を基本に個人に対するケースアドボカシーから社会システムの変革を行うクラスアドボカシーへの一連の過程を含む活動であることを確認した。 2年目は、わが国の独立型社会福祉士の独自性について、アメリカのプライベイト・プラクティスとの比較検討を行い、アメリカのプライベイト・プラクティスが心理療法中心であるのに対し、わが国の独立型社会福祉士はクライエント個人のアドボカシーを基本に本人を取り巻く環境の改善に取り組むなど既存組織に属することで困難であった活動を担っていることを確認した。また、イギリスにおける独立アドボカシー制度の検討をつうじて、独立アドボカシーを構成する主要原則として「独立性」「本人中心」「エンパワメント」「アクセシビリティ」「守秘義務」「苦情対応」を確認し、アドボカシーに影響を与える変数として利益相反等に関する管理方針、個人情報保護方針に関する規定、苦情対応手続きの整備が重要となることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、アンケート調査から社会福祉専門職(独立型社会福祉士)と法律専門職(弁護士・司法書士・行政書士)の法定後見活動におけるアドボカシーの実態把握を行う。アンケート調査は、因子分析によって法定後見活動を構成する因子を抽出し法定後見活動の構造を明らかにする。さらに重回帰分析によって各因子を規定する関連要因を明らかにする。そして、社会福祉専門職と法律専門職の比較検討からソーシャルワークアドボカシーの独自性を明らかにする。対象は、法定後見活動を行う独立型社会福祉士(約400名)と法律専門職(約400名)とし、無記名自記式質問調査を用いる。令和6年度の研究の流れは、5月~6月:プレ調査、6月~9月:アンケート調査の依頼、10月~12月:アンケート調査の実施、1月~3月:まとめ及び報告書の作成を予定している。 令和7年度は、インタビュー調査を実施し、社会福祉専門職と法律専門職の法定後見活動におけるアドボカシーの実践プロセスを抽出する。独立型社会福祉士と法律専門職のアドボカシープロセスの比較を行い、ソーシャルワークアドボカシーの実践プロセスの独自性を浮き彫りにする。調査対象者は、独立型社会福祉士10名と法律専門職10名を予定している。令和7年度の研究の流れは、5月~6月:プレ調査、6~8月:インタビュー調査の依頼、9月~12月:インタビュー調査の実施、1月~3月:まとめ及び報告書の作成を予定している。 令和5年度に行う予定であったアンケート調査の実施および分析が令和6年度に持ち越されたことで、令和6年度は、アンケート調査の実施とインタビュー調査の依頼を行う予定であるが、既に調査を依頼予定の組織・団体と交渉をはじめていることから、現在の遅れには対応が可能である。
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Causes of Carryover |
令和5年度は、海外の先行研究のレビューをふまえアンケートの調査票の見直しに時間を要したことから、アンケートを実施できなかった。また、アンケートの実施に関する費用および旅費に関する費用を次年度に使用することとなった。令和6年度の使用計画は、アンケート調査として約70万円、研究成果の報告に係る会場までの旅費として約30万円を予定している。
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