2022 Fiscal Year Research-status Report
幸福を志向する増進型地域福祉の実践方法開発に関する研究
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22K01968
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
小野 達也 桃山学院大学, 社会学部, 教授 (30320419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝倉 美江 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (00310269)
柴田 学 関西学院大学, 人間福祉学部, 講師 (20580666)
石川 久仁子 大阪人間科学大学, 人間科学部, 准教授 (40411730)
岡野 聡子 奈良学園大学, 人間教育学部, 准教授 (50623964)
渡辺 晴子 広島国際大学, 健康科学部, 准教授 (90326091)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地域福祉 / 増進型 / 実践研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、増進型地域福祉の方法を探究し実践モデルを構築することを目的とする。増進型地域福祉とは、幸福=well-beingを生みだすことを志向する地域福祉である。本研究ではコミュニティレベルに焦点を当て、実践で活用可能なモデルをつくる。理論研究としては、地域福祉での幸福を検討し実践理論の仮説を作成する。実践研究としては、実践者との研究を進め実践特性を把握する。その上で増進型地域福祉の実践モデルを構築する。 本科研の1年目ではあるが、実践者と共同で書籍を作成、発行するという実績を生むことができた(『増進型地域福祉への展開』)。これは、増進型地域福祉に関して前科研の到達点をまとめるという性格と、今後の実践研究を進めていくうえで活用できる理論ベースの形成という意義を持つ。この作成のために科研の研究メンバーと執筆に携わる実践者で共同の研究会を実施し、また執筆の過程でも相互の意見交換を繰り返し行った。 本書籍は地域福祉分野で本格的に幸福を取り上げたものであり新たな局面を開く可能性を持っている。増進型地域福祉は理論的にも実践的にも構築途上であるが、これまでの研究成果を具体的に示すことができた。研究者の担当テーマは地域づくり、居住福祉、地域拠点、社会的連帯経済、多文化共生と多様である。また実践者からは小地域の住民活動、福祉施設、社会福祉協議会、協同組合、NPO、自治体と多彩な事例が示されている。この成果物は増進型地域福祉の実践研究の基礎となるものと言える。 また、研究者らが属する日本地域福祉学会の全国大会において、科研の研究者全員(6人)および実践者の1人が、増進型地域福祉に関する研究発表を行い、研究成果を公表することができた。さらに2023年3月には、近畿地域福祉学会と日本地域福祉学会東海北陸ブロックの共同企画として、増進型地域福祉フォーラムをオンラインで実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、『増進型地域福祉への展開』の発行という実績をあげることができた。本書は地域福祉領域で幸福をテーマにした本格的な研究書であり、地域福祉研究において新たな局面を開くものといえる。そこで取り上げられているテーマは、コミュニティレベルを中心に幅広いものがある。また、これを研究者だけでなく地域福祉の現場に関わっている実践者と共同で制作できたことも意義がある。これによって、これまでの研究の成果を広く示すことができたし、また、今後の実践方法論に関する研究を進める上での基礎の部分を構築することができた。 その作成過程では、研究者間の研究会だけでなく、実践者を交えての研究会も複数回実施している。さらに成果を示すということでは、地域福祉学会の全国大会で科研のメンバーおよび実践者が研究発表を行い、また地方地域福祉学会の主催による増進型地域福祉フォーラムを実施した。 ただしその一方で、実践に関する研究を進める上ではコロナの影響も一部残っている。現場に赴いての事例の収集、フィールドワーク等は十分実現できていない。また地域での増進型地域福祉に関するワークショップ等の試行実践も当初の予定通りできているわけではない。ただしそうした中にあっても和泉市や大阪市住吉区等では住民を交えたワークショップを実施することができた。 理論研究については書籍の作成に伴い一定の理論研究の蓄積は積めたものの、方法論研究については構築途上であり、今後の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研の2年目となる2023年度は、増進型地域福祉の具体的な方法論に焦点を当てていく。主として以下の項目に取り組んでいく。①実践方法論の理論整理、②各自のテーマごとの実践方法に関する探究、③実践事例の収集・検討、④試行実践の取り組みとそこからの知見の蓄積、⑤それぞれの成果の共有化と整理。 ①については、方法論をどのように考えていくのか、何を、どこまで対象にしていくかという原点的な検討、またソーシャルワークや地域福祉というこれ間瀬の福祉ベースの方法論の検討、さらに地域づくりや社会貢献活動等の方法論までの検討を進める。その上で増進型地域福祉の方法論を仮説的に作り上げていく。主に文献研究となる。②は多文化共生、居住支援、小地域福祉活動、福祉拠点開発、社会的連帯経済というそれぞれの研究者の研究テーマについて増進型地域福祉の観点からの方法論を探っていく。③は、増進型地域福祉に関する実践について情報を収集し、フィールドワークを行う。労働者協同組合の事業(名古屋地域)や小地域での福祉実践(大阪市、堺市等)、自治体(富田林市等)による政策展開等の調査を予定している。海外(カナダ)の実践の情報収集についても視野に入れる。④昨年あたりから徐々に再開しつつある地域での増進型のワークショップ等を中心に試行実践の実施とそこからの知見の収集に努める。大阪市住吉区や富田林市、和泉市などを予定している。⑤研究会を開催し、研究の共有化と検討、整理を行う。科研のメンバーによる研究会としては2か月に1回程度をめどに行う予定である。また、実践者を含む拡大研究会、さらには一般の人も対象とする公開研究会等を考えている。 研究会や調査についてはこれまでの経験をもとに、オンラインが効果的な場合はこれを活用するが、可能であれば直接対面型、直接訪問というリアルな方法を進めていく。
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Causes of Carryover |
2022年度では所要額と実際の支出額の間に25万円ほどの差額が生じた。差額の生まれた主な要因は旅費、および人件費・謝金である。この理由としては①コロナ禍の影響により、現場での調査が予定通り行えなかった。②研究会等の会議にしても同様に直接対面でのものが実施できなかった。③また、これに伴って調査の協力への謝金や調査資料の整理などに使う予定であった人件費等の支出も抑えられることになった。主にはこうした理由で、差額が生じている。 2023年度は、調査や会議等も予定通り実施できると考えている。また、2022年度に行けなかった調査についても実施していく予定である。そこに関わる人件費や謝金も執行することになる。概算で言えば、2022年分の使用として調査・会議1人当たり3万円×6人で18万円。調査協力に関する謝金1万円×3人で3万円。資料整理等の人件費4万円という予定である。
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