2022 Fiscal Year Research-status Report
「地域づくりに向けた支援」に焦点化した地域アセスメントの学際的アプローチ
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22K01991
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
岡田 哲郎 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 講師 (00816829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 玲 東京通信大学, 情報マネジメント学部, 准教授 (30597183)
坂本 美枝 東京通信大学, 人間福祉学部, 教授 (60454196)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 地域アセスメント / 地域づくりに向けた支援 / コミュニティワーク / 地域福祉 / 学際的アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「重層的支援体制整備事業」(社会福祉法第106条の4)の一要素である「地域づくりに向けた支援」に焦点をあてた地域アセスメントの視点・方法を、地域福祉(社会福祉学)を基礎に、経済人類学、ジェンダー学との学際的アプローチにより再考する試みである。その方法として、二つの研究対象地域を設定し、事例研究を行う。当地の実践者(コミュニティワークを行う者)が地域住民と創り出す地域アセスメントを、研究者が伴走的に支えつつも客観的に評価する。また、研究者がもつ客観的知見を、適宜実践者を介し地域住民に還元する。そのことで地域の文脈に応じた地域アセスメントの個別具体的方法を見出す。 当該年度は、研究対象地域の概要把握、国内外の先行研究と他分野の方法論の整理、研究の理論枠組み(岡村重夫、C.B.ジャーメイン、P.ブルデュー、J.バトラー等)の整理を行った。また、本研究の足掛かりとなった2021年度の共同研究(東京通信大学助成)の成果をまとめ『東京通信大学紀要 第5号』に報告した。さらには同紀要に、分担研究者(髙橋玲)の論文「地域福祉の問題解決に資する「非制度的資源」の派生的機能(副題省略)」を報告した。事例研究としては、研究対象地域の一つ、江東区でのプレ調査を行い、令和5年度の本調査への道筋をつけた。 既存の地域アセスメントは、社会福祉学の認識枠組みに影響を受け、個人の生活問題の解決のために即時的に活用できるフォーマル(定型的/制度的)な社会資源に着目する傾向がある。ゆえに、地域社会に潜在化している固有の問題や、インフォーマル(非定型的/非制度的)な社会資源の把握にまで深く目が及ばないことがある。また、その地の住民が自ら地域アセスメントを行うという観点が抜けがちである。既存の地域アセスメントを補完する枠組みの構築を目指すことは、国の「地域共生社会」政策の具体化にもつながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載した通り、令和4年度は、本研究が行う「地域アセスメント」を支える理論的基盤を整理した。これは、当該年度中に全8回行った「地域と福祉研究会」(岡田哲郎・髙橋玲・坂本美枝)の成果とも言え、同研究会を重ねる中で、研究メンバーはそれぞれの学問的基盤に対する相互理解を深めていった。 当初は研究対象地域の一つに設定していた陸前高田市であるが、研究協力者(大塚光太郎)の転居の可能性等に伴い、フィールドを変更することになった。本研究の趣旨に合致し、かつ、実践者との協力関係が構築可能なフィールドを、現在選定中である。 この変更に伴い、当初は2年目(令和5年度)以降に行う予定であった江東区での事例研究を当該年度中に進めることにした。研究代表者が関わる「江東区地域福祉活動計画策定委員会」「江東区高齢者地域見守り支援事業令和4年度地域で見守り支え合いセミナー」等を通じ、地域の概要と動きを把握し、本研究が目的とする「地域アセスメント」を協働で進める実践者(江東区社会福祉協議会職員)との調整を進めた。これにより、現在では、「江東区地域福祉活動計画策定委員会」の一環として行われている「まちづくり話し合いひろば」(4地区×3回=計12回)に研究代表者と分担研究者が参加し、合同での参与観察・フィールドワークを実施している。実践者が行っている既存の「地域アセスメント」の方法や地域への働きかけの現状を捉えながら、実践者を媒介に地域住民自身が行う「地域アセスメント」の個別具体的方法を探る道筋をつけ、質的現地調査を開始できている。以上から、現在までの進捗状況は概ね順調と言える。 なお、当初予期していなかった研究対象地域の変更があったことから、事例研究のスケジュールを修正し、江東区を令和4年~令和5年度に集中的に行い、もう1か所の地域(選定中)での事例研究を令和6年~令和7年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に記載した通り、当初予定していた陸前高田市に代わる研究対象地域を選定中である。令和6年~令和7年度の事例研究(予定)に向け、江東区と同様に内発的な「地域づくり」が求められ、かつ、実践者との協力可能なフィールドを候補地に、研究メンバーの合意を得て、研究代表者が調整を進めていくところである。そこは、江東区とは地域社会の構造(産業構造、地域組織、人口規模、等)が異なるため、本研究で試みる地域アセスメントの「地域の文脈に応じた個別具体的方法」の比較により、共時的な分析も可能と考えられる。 今後の研究の推進方策としては、当該年度に整理した地域アセスメントの理論的基盤と方法論に依拠しながら、令和5年度は江東区での本調査(質的現地調査)に注力する。そこで行われた地域アセスメントの過程と結果を整理し、「地域の文脈に応じた個別具体的方法」を見出し、令和6年度以降のもう1か所の事例研究につなげていく。
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Causes of Carryover |
研究代表者、分担研究者ともに当該年度から翌年度への繰越金(次年度使用額)が発生したが、これは、現在までの進捗状況及び今後の研究の推進方策に記載した通り、当初予定していた研究対象地域(陸前高田市)の変更に伴い、研究の進捗上、翌年度に使用するのが適切と判断されたためである。令和5年度の江東区での本調査を実施する中で、当初令和4年度の支出として計上していた物品費、旅費、人件費・謝金等を適切に使用していきたい。ちなみに、令和5年度の事例研究として行う江東区(近場)より、もう1か所(遠方予定)の研究対象地域での旅費支出が多くなる見込みである。事例研究の実施スケジュールを修正したため、次年度(令和5年度)も、旅費の繰越金(次年度使用額)が発生することとなる。 また、研究分担者(髙橋玲)が所持するノートパソコンが当該年度に故障し、廃棄処分したため、本研究で使用するノートパソコンが必要となった。当初予定していなかった支出だが、研究分担者(髙橋玲)に配分された令和5年度の物品費の中で購入する予定である。
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Research Products
(2 results)