2022 Fiscal Year Research-status Report
a multicultural approach to social work based on a culture of impartiality under "super-diversity" society
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22K01998
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
松岡 克尚 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (90289330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 順子 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (60309359)
宮崎 康支 関西学院大学, 特定プロジェクト研究センター, 客員研究員 (70868463)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 超多様性 / 多文化共生 / インペアメント文化 / ソーシャルワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
「超多様性」の中に「障害」を位置づける可能性を障害学とソーシャルワークの立場から検討を行った。
まず1つは障害学との関連で、宮崎康支の「合理的配慮保障により超多様性状況への障害者の包摂が可能になる」という結論を踏まえ、超多様性概念から「障害」研究、特に障害学がそこから学ぶべきことを明らかにする検討を行った。そのために障害学の範疇で先行研究レビューを実施した結果、障害の社会モデルの普及と浸透の中では「障害」を統一的に把握して論じる傾向が主流になっているが、実際は「障害者」の中でもインペアメントの種類も含め多様性が見いだせることの再認識が果たされることを指摘した。次に堀正嗣の「共生の障害学」の主張に引き付けて、障害者もまた多様性の中に存在し、同時に多様性であることが人間尊厳・人権保障であるという思想に裏付けられた、インクルーシブな社会関係こそが「共に生きる社会」、すなわち「共生」の構想であることが示唆された。以上は障害学会第19回大会で報告を行った(宮崎・松岡・原2022)。
2つ目にソーシャルワークの立場でいかなる議論が可能になるかを検討した。先行研究レビューの結果、ソーシャルワークでも「超多様性」がエスニシティに軸が議論がなされており他への広がりが見られず、それが一種の真空地帯になっていることが確認できた。そこから、日本での多文化共生のイメージや論じられ方の現状を考えた場合、「超多様性」概念のソーシャルワークへの導入は現状打破をもたらし得る可能性が示唆された。例えば、SOGIEなどに加えて「障害」を医学的観点ではなく、文化的視点で把握した「インペアメント文化」としてとらえ直すことで、「障害」を含めた「多様性の多様化」をソーシャルワークの土壌で論じられる可能性を見出せた。こちらも、日本社会福祉学会第70回秋季大会でE-ポスター報告を行った(松岡・宮崎・原2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は理論的研究に主眼を置き、その成果を踏まえて2年目以降で調査を実施する予定にしていた。ゆえに2022年度において、「超多様性」概念と「障害」との関連性、また同じくソーシャルワークの多文化共生論の中に同じく「超多様性」「障害」の両者を位置付ける理論的な検討については一定の成果を見出せたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度では、「超多様性」が障害学研究に果たし得る貢献の可能性を整理することができたが、それらの一層の具体的な検討、特に障害学の立場から「超多様性」を論じることで「多文化共生」に如何なる知見がもたらし得るかについての考察が十分踏み込めていなかった。この点を2023年度において継続していくことにしたい。
また国際的な発信を行い、グローバルな観点から本研究への批判を受け入れて研究内容の一層のブラッシュアップを果たしていくという観点から、2023年度は海外の学会での報告、または海外の研究雑誌への投稿を試みる。その過程でも本研究の内容や今後の方向について様々な示唆が得られるものと期待する。
最後に、2022年度と2023年度の理論的研究の成果を踏まえて、様々な「インペアメント文化」の諸相をインタビュー調査で浮き彫りにし、その結果を理論にも反映させる作業に着手する。まずは所属機関での倫理審査をパスすることを目標とし、年度後半より調査実施に入ることにしたい。
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Causes of Carryover |
当初は、インタビュー調査の結果を分析する統計アプリケーションソフト(MAXQDS)を2022年度に購入し、使い方を準備的に学ぶ予定にしていたが、当初の購入予定額から値上がりし、チームメンバー全員の購入となると予算が不足することになった。その結果、ソフトの2022年度の購入を見送り、キャンペーン等で価格が下落したタイミングで改めて購入することも選択肢にいれて、その対応を考えることにしたため。
2023年度では、ソフトの価格を常にモニタリングして、下落時に購入するようにしたい。もしそれがかなわない場合は予算額の範疇で許す限りの人数分を購入することで対応したい。
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Research Products
(2 results)