2023 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設退所者の「多様な親密圏の担保」に向けた施設による支援の再考
Project/Area Number |
22K02004
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
原 史子 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (20300147)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 社会的養護 / 親密圏 / 複層的構造化支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目となる2023年度は、市区町村の子ども家庭支援体制の現状をふまえ、児童養護施設等入所前の段階で地域において先駆的な実践を展開している施設・機関への聞き取り調査や先行研究をもとに要保護要支援児童の親密圏を軸とした支援のモデル化を試み、施設入所中の適用可能性を検証することを予定していた。しかし新型コロナウィルスの影響による調査計画の遅れおよび前年度に実施したモデルとなる地域への調査結果の知見をふまえ、当初予定していた複数の調査の妥当性を検討し、調査計画全体の見直しを行った。 前述のモデルとなる地域は重層的な支援が、定位家族のある地域でのコミュニティを基盤として形成されているという独自の条件を有しており、当該事例固有の条件の下に成立していると判断した。この知見をふまえ【調査1】【調査2】を全面的に見直し、広域(県レベル)での繋がり(親密圏)の複層的構造化支援のモデル化を検討することとした。具体的には、【調査4】として計画していた退所者支援のアフターケア事業所(社会的養護自立支援拠点事業を受託している事業所)の調査の一部を優先し、当該事業所の理事会、委託事業者である県の担当課への協力依頼も行い協力を取り付けた。 当該事業所は、社会的養護自立支援事業が制度化される前から実践を積み重ね、県域において様々なネットワークを形成し退所者支援を実施してきている。親密圏の複層的構造化支援の広域(一県レベル)での実践事例とするべく、各種事業や関係機関等の協働の場の聞き取り調査および参与観察を実施し、その全体像の把握に努めた。これに伴い施設の「親密圏の維持・再構築・形成と多様な親密圏の担保」における役割について、地域特性を踏まえた複数の施設を対象とする調査として実施を計画していた【調査3】の対象も当該事業所の位置づけが広域(県)レベルであることから、当該県の施設を対象として進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
【調査3】として2022年度より児童養護施設において、施設の「親密圏の維持・再構築・形成と多様な親密圏の担保」における役割について調査を開始したが、2022年度は新型コロナウィルスの影響により施設に立ち入りができない期間があり調査の進捗状況が遅れていた。さらにその後、調査依頼先施設の建替え移転などの事情により調査の継続が困難となり、予定していた調査ができなくなり調査計画全体を見直し修正せざるを得なくなった。また前年度調査による知見を踏まえた調査枠組みの変更を行い、新たな調査枠組みに基づく調査協力を取り付け行った。これらが進捗状況の遅れている要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
【調査4】は当初、退所者支援のアフターケア事業所および施設退所者の当事者組織への郵送質問紙調査および聞き取り調査を予定していたが、実績のある事業所において調査の実施が可能となったため、親密圏の複層的構造化支援の広域(県)レベルでの実践事例として位置づけ、参与観察および聞き取り調査を中心とし、事業所利用者へのインタビューも含め、質的な調査を実施する。さらに【調査3】では、地域特性を踏まえた複数の施設を対象に聞き取り調査を実施することとしていたが、調査対象のアフターケア事業所との関連性を把握することを軸とし、広域(県)レベルで複数の施設を対象に聞き取り調査を実施することとする。 上記調査に取り組むと同時に、学会発表や論文執筆等によって調査研究の成果をまとめていく予定である。なお、今後も研究計画書を基本とするが、適宜調査計画の修正を行いつつ研究を推進する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、2022年度より開始し2023年度も継続して実施を予定していたインタビュー調査を実施することができなかったことが挙げられる。調査を依頼した施設のコロナ対応、建替え移転などの事情により調査を継続することができなかった。それにより予定していた調査全体の見直しを行わざるを得なくなり、新たな調査枠組みの設定と調査対象への調査協力依頼に時間を要してしまった。この2点が主な理由として挙げられる。 次年度使用計画は、新たな調査枠組みを設定し調査対象への調査協力を得ることができたため、調査に要する費用を中心に使用する予定である。なお、2024年度も適宜調査計画を見直しつつ、研究を遂行する予定である。
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