2022 Fiscal Year Research-status Report
社会福祉サービスのシステムを生かした成年後見人の質の向上に関する研究
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22K02007
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
山口 理恵子 福井県立大学, 看護福祉学部, 教授 (90582263)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 成年後見 / 権利擁護 / 苦情解決 / 意思決定支援 / 障害者権利条約 / 民法改正 / 身上保護 / 日常生活自立支援事業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は成年後見人等に対する苦情解決のシステムを構築するにあたり、成年後見制度利用促進基本計画(2017)策定前から成年後見センターや権利擁護支援センターとして法人後見を担っている社会福祉法人、NPO法人に対し成年後見人等に対する苦情相談のヒアリングを行った。この結果、各センターでは自己の法人後見以外の成年後見人等、特に申立時、選任時にセンターが関与していないケースの苦情対応にを行うにあたり、事実調査等の明確な権限がないことが課題であることが明らかになった。次に成年後見人等の身上保護に対する苦情に対し、社会福祉サービスにおける苦情解決事業(社会福祉法85条)との比較を行った。とりわけ「運営適正化委員会における福祉サービスに関する苦情解決事業について」(平成29年3月7日通知 厚生労働省)における改正内容(新旧対照表)を基に、後見人等に対する苦情解決の手続きの素案となるものを構築した。また第二期成年後見制度利用促進基本計画(2022)に基づき開催されている厚生労働省成年後見制度利用促進専門家会議地域連携ネットワークワーキンググループの下で行われている議論や資料も参考に成年後見人等に対する苦情の分類と対応案の作成を試みた。この結果は日本社会福祉学会第70回秋季大会(2022年10月16日)制度・政策分科会1において口頭発表を行い、福井県立大学論集59号(2023年3月)に論文「成年後見制度における苦情対応のあり方に対する検討-社会福祉法における苦情解決事業との比較を通して-」として発表した。今年度の成果としては、成年後見人等の苦情に特化した窓口設置の必要性、苦情解決を行うにあたり対応機関が事実調査を行うための権限や根拠法令等の整備、成年後見人等に対する調査や聴き取りを行う際に成年後見人等の守秘義務等との関係整理が必要になってくることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先駆的機関へのヒアリングは、オンライン等を活用して行った。苦情解決事業については全国社会福祉協議会の調査報告書や厚生労働省の通知を中心に検討した。この結果本年度前半について研究計画にそった実行が可能であった。但、後見人等の苦情内容の分類とその対応については大まかな分類(案)の作成までであり、成年後見制度と福祉サービスに対する苦情との管轄機関や根拠法の違いもふまえた、より詳細な分類や対応案の検討は次年度以降に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
成年後見制度に対する苦情に対し福祉サービスの苦境との比較検討について一定の整理を行うことはできた。しかし福祉サービスと成年後見人等ではそもそも根拠法や管轄となる機関が大きく異なる。また広域も含め基本的に市町村単位で設置され、進捗状況に差がある中核機関における苦情対応が現実として可能なのか、あるいは都道府県の役割としてこれを担うべきなのか、また専門職団体の苦情対応体制の差をどのように整合させるか、これらは今後の課題であり、更なるを検討を行いたい。2023年1月30日に厚生労働省成年後見制度利用促進専門家会議において作成された「後見人等に対する苦情等に対する関係機関連携フロー(案)」も参照しつつ、実践現場からの声もふまえる必要がある。また苦情の原因の1つでもある専門職後見人における身上保護の範囲の認識の差等の比較検討等、現行の課題整理を行い、次年度の計画を遂行していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響による国際会議の中止と研究協力者1名の急逝により遠距離の出張2か所が延期になった。次年度は出張等が全面的に対面での実施が可能になるため先駆的自治体等をはじめとする中核機関や成年後見センター、専門職団体等に対し苦情対応の実情や身上保護の範囲に対するヒアリングを行いその成果を学会等で発表したい。
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