2022 Fiscal Year Research-status Report
Exploring how practitioners respect diversity in Community-Based Child-Rearing Support Services
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22K02084
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
橋本 真紀 関西学院大学, 教育学部, 教授 (50368495)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 多様性の“Respect” / 多様性の「尊重」 / 地域子育て支援拠点事業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の地域子育て支援拠点事業において多様性を “Respect”する従事者の働きと実践的意味を明らかにすることにある。2022年度は、研究計画に基づき“Respect”と「尊重」 の意味内容の一致や相違を確認したうえで、Rodgersの概念分析方法を用いて子ども家庭福祉学領域における「多様性の“Respect”」の意味内容、また概念分析を行うため、分析対象となる英語文献と日本語文献を検索、収集、精査を行った。結果、 “Respect”と「尊重」は、対象を大切にするという意味を共有しつつ、“Respect”は、その人の存在自体を唯一無二のものとして大切にするという意味をも含むことが捉えられた。「尊重」ではその対象は明確ではなく、このような「尊重」の意味の曖昧さも影響し、日本の多様性の「尊重」においては、他者の異なる意見を大切に捉えても、必ずしも自分の考えと交流させるものとしては捉えていないという指摘もある(濱谷、井上2021)。次に“Respect”と「尊重」の意味の差異を踏まえつつ、「多様性の“Respect”」の概念分析を行うための文献の収集精査を行った。英語文献に関しては、SSCI とGoogle Scholarを用いて、“respect for diversity”と “childhood, childcare, preschool, nursery”(or)をキーワードとして2000~2023年の文献を検索、精読して分析対象となる文献を精査し、17論文を抽出した。引き続き、“respect for diversity”と“family support”のキーワードを含む文献の検索、精査を進めている。日本語文献に関しては、CiNiiを用いて「多様性」「尊重」(いずれも含む)をキーワードに文献検索の結果、44論文が抽出され、論文を精読し精査している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度は、子ども家庭福祉学領域の国内外における多様性の“Respect”、「尊重」をキーワードにあげる主要文献を収集し、Rodgersの概念分析方法を用いて分析を行う予定であった。しかし、同年は、家族の他界、別の家族の認知の低下、自身も難病と診断され、校務と介護、自身の体調回復を優先せざるを得ない状態が続いた。 当初の研究計画では、2022年度の計画は、①“Respect”は、「尊重」と訳されることが多いため“Respect”と「尊重」が同義であるか、研究の端緒として “Respect”と「尊重」の意味内容を捉える、②Rodgersの概念分析を用いた多様性の“Respect”の用語の意味内容を捉えることを挙げていた。①の“Respect”と「尊重」の意味内容の相違に関しては、概ね成果で示すように整理できた。②については、Rodgersの概念分析方法を用いて多様性の“Respect”および「尊重」の分析を適切に進めるため、Rodgersの概念分析方法を用いた英語、日本語の論文から本研究に適した分析方法を確認した。そのうえで、成果の欄に示すように、多様性の“Respect”および「尊重」の英語と日本語の関連文献を収集した。日本語の文献における「多様性の尊重」の概念分析については、Rodgersの概念分析方法を用いてデータシートを作成し、概念を構成する「特性」、概念に先立って生じる「先行要因」、概念に後続して生じる「帰結」、「関連概念」に関する記述の抽出を進めている。 しかし、研究計画では、2022年度に関連の英語、日本語文献双方の分析を行うとしていたが、現段階で、本研究は、英語、日本語の関連文献の収集と精査、分析の途中段階にあることから、「遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、①研究1の意味内容についての見解を聴取し、実践的意味を検討する、②BelgiumのMPでのヒアリング調査から、多様性を“Respect”する実践事例におけるMP従事者の働きの構成要素を抽出し、実践モデルを生成、及び実践的意味を検討するとしていた。しかし、2023年度も家族の施設入所等への対応と自身の体調回復を優先せざるを得ないため、予定していた②のBelgiumでのヒアリング調査は2023年度に予定するが、状況によっては2024年度に実施する。2023年度は下記のとおり多様性の“Respect”と多様性の「尊重」の概念分析を進める。Rodgersの概念分析は、概ね以下の手順で進める。①関心のある概念と関連する表現を特定する。②データ収集のための適切な領域(設定とサンプル)を選択して特定する。③以下を特定するために関連するデータを収集する。④上記の概念の特性に関するデータを分析する。⑤必要に応じて、概念の典型例を特定する。⑥言外の意味、仮説、さらなる概念の発展に関連することを特定する。 本研究は、概ね英語文献に関しては③段階、日本語文献に関しては④段階にある。今後、英語、日本語の文献別にデータシートを作成し、概念を構成する「特性」、「先行要因」、「帰結」、「関連概念」に関する記述の抽出を進める。2023年度の研究成果としては、子ども家庭福祉学領域における多様性の“Respect”の用語の意味内容の明確化を目指す。
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Causes of Carryover |
2022年度は、家族の他界、別の家族の認知の低下、自身も難病と診断され、校務と介護、自身の体調回復を優先せざるを得ない状態が続いた。当初の研究計画で2023年度3月頃に実施予定であったBelgiumでのヒアリング調査が実施できなかったことから、余剰費用が生じた。 2023年度も引き続き家族の介護、自身の体調の回復を優先せざる得ない状況にある。そのため2023年度も、研究計画に示すように多様性の“Respect”と多様性の「尊重」の概念分析を進める。ただ、2024年の2月~3月にかけて、家族や自身の状態が落ち着いたら、当初2022年度に予定していたBelgiumでのヒアリング調査を実施したい。そのため、Belgiumへの旅費、調査費用等を計上する。
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