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2022 Fiscal Year Research-status Report

量子ビームイメージングが拓く食品の超微細構造依存的な品質変化の解明

Research Project

Project/Area Number 22K02089
Research InstitutionSaitama University

Principal Investigator

島田 玲子  埼玉大学, 教育学部, 准教授 (60331451)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 上野 茂昭  埼玉大学, 教育学部, 准教授 (80410223)
Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywordsパン生地 / 電子顕微鏡 / イメージング / デンプン
Outline of Annual Research Achievements

パン生地の状態の評価は焼成後のパンの品質に直結するため必要不可欠であるが,現在パン生地の品質評価は,生地表面の様子や生地をつまんだときの伸び具合,べたつきなど視覚的または触覚的感覚に基づいて判断している。これらの感覚的な評価法は,熟練の技術や長年の経験を要することから,職人と呼ばれる人材が必要になる。そこで,誰でも扱うことができ,パン生地に負荷をかけることなく評価する方法の開発が求められる。エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)は,電子線照射により発生する特性X線を検出し,エネルギーで分光することによって,元素分析や組成分析を行う手法である。含水量またはミキシング時間を変化させたパン生地試料に対しSEM-EDXを適用し,パン生地内部の元素分布を観察した.SEM画像を見ると,すべての画像に大きいもので15~30μm,小さいもので2~10μmのデンプン粒が確認できた。大きいデンプン粒は楕円形の様に見えるものがあり,小さいデンプン粒は球状に見えるものがほとんどだった。また,含水量が増えるにつれて,小さいデンプン粒の数が増えてデンプン粒の粗密も均一になっていく傾向が見られた。また,デンプン粒がない平坦な部分は所々球状の凹凸があり,デンプン粒を包み骨格の役割を果たすグルテン膜が観察できた。そのほか,含水量の少ない試料ではデンプン粒にひび割れのようなもの,標準的な含水量では空気の間隙が見られた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

初年度はパン生地の調製に様々な課題を有していた.具体的には,まず小麦粉の品質変化である.市販の小麦粉は製粉後1週間以内に陳列され,店舗によるものの一ヶ月以内に商品が入れ替わる.ここで小麦粉は製粉後の時間経過とともに含有タンパク質の性質が徐々に変化する.またパン生地のミキシング温度によって,含有成分であるタンパク質が僅かながらも変質を受ける.したがって,均質なパン生地を調製するためには,パン生地ミキシング時の温度,製粉後の経過時間および保存温度を厳密に管理する必要がある.
本研究ではパン生地のミキシング温度について,室温下でのパン生地の温度変化を測定するとともに,各条件における力学特性を測定した.力学特性は山電社製のレオメータを用いて,引張試験治具でパン生地の伸展性を定量的に分析した.その結果,室温下でのパン生地ミキシングはある温度以上においては伸展性の低下が生じること,また恒温機内におけるパン生地ミキシングにおいて,ある温度未満ではミキシング性能が低下することが明らかになった.以上の知見からパン生地ミキシング条件および製粉後の利用可能日数を決定した.
電子顕微鏡によるパン生地の観察は様々なノウハウが必要である.今回研究分担者が渡仏し,様々なノウハウを蓄積するとともに,それらのフィードバックを行うことにより,パン生地中の元素の3次元分布の観察がなされた.初年度中に様々な課題を見つけ解決策を見出したため,当初の計画以上に本研究を進展することが可能となった.

Strategy for Future Research Activity

ミキシング時間を変化させたパン生地に対し,SEM-EDX観察を行うことにより炭素,酸素,窒素,ナトリウムなどが主要な元素として検出され,主な構成元素は炭素と酸素であることが想定される.またSEM-EDX観察に用いた実験装置由来のアルミニウムと金も同様に観察されることが予想される。これらを除いた元素に着目すると,炭素と酸素が最も大きな割合を示し,次いでナトリウムと塩素が同程度の割合,主要な元素の中で最も小さい割合であったのが窒素だと判別できると思われる。さらにミキシング時間を変化させた際にも各元素量が一定ではなく,単調に増加や減少をする傾向ではないことが予想される.SEM-EDX観察は基本的には試料表面の元素分布を観察しているに過ぎない.そのため,パン生地のような3次元的な複雑な構造体における,ネットワーク状とされるミクロ構造の観察には限界がある.そのため今年度は原子や分子のような極めて小さなレベルでモノを観察可能な最先端の技術である量子ビームイメージング手法などを適用し,中性子線や電子線など全く新しいイメージング手法により,パン生地形成過程における水分子ータンパク質分子ーデンプン分子における相互作用を分子レベルで明らかにすることを第一に研究を推進する.研究分担者は誘電スペクトル解析をパン生地に適用し,水分子の緩和強度をもとにパン生地中の異なる分子間の相互作用を定量的に解析する手法を開発している.本研究においても,量子ビームイメージングと誘電スペクトル解析を並列的に組み合わせることにより,ミクロナノレベルの構造変化ならびにピコ秒レベルの緩和現象の相互関連性を見出す予定である.

Causes of Carryover

パン生地の品質を安定的に得るために大型恒温機を購入し,また顕微鏡下での温度を厳密に制御するための恒温ステージの購入が必要であると当初は予想していた.しかし本研究で用いたパン生地調製に用いたミキサーが比較的小規模で,安定的なパン生地調製が可能であることが分かり,大型恒温機の購入が不要となった.また当初は研究室内の顕微鏡に,新規購入する恒温冷却ステージを組み合わせることにより,パン生地のミクロ構造をリアルタイムで観察する必要があると考えられていた.現時点ではパン生地のミクロ構造をリアルタイムで観察する実験系を組むことが出来ておらず,それらの購入に必要と思われた予算が次年度使用額として発生した.ただし,電子顕微鏡による観察サンプルを増加することにより,ある程度はリアルタイム観察と同等の再現性を得られる手がかりは掴めているため,当初の実験系と変更して,リアルタイムイメージング系を再構築する.

  • Research Products

    (3 results)

All 2023 2022

All Journal Article (3 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results,  Peer Reviewed: 3 results,  Open Access: 1 results)

  • [Journal Article] 鶏胸肉の抗疲労成分に及ぼすの調理・加工の効果2023

    • Author(s)
      上野茂昭,長田仁花, 猪龍夏子, 島田玲子
    • Journal Title

      冷凍

      Volume: 98 Pages: 68-71

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Effect of High-Hydrostatic-Pressure Processing on Catechin Content in Green Tea Leaves2023

    • Author(s)
      Hsiuming Liu,Shigeaki Ueno &Tetsuya Araki
    • Journal Title

      High Pressure Research

      Volume: 234 Pages: -

    • DOI

      10.1080/08957959.2023.2195110

    • Peer Reviewed / Int'l Joint Research
  • [Journal Article] Amino acids supplied through the autophagic/endocytic pathway promote starch synthesis in Physcomitrella protonemal cells2022

    • Author(s)
      Md. Arif Sakil, Kyosuke Mukae, Ryo Funada, Toshihisa Kotake, Shigeaki Ueno, Most Mohoshena Aktar, Md. Shyduzzaman Roni, Yuko Inoue-Aono, Yuji Moriyasu
    • Journal Title

      Plants

      Volume: 11 Pages: 2157

    • DOI

      10.3390/plants11162157

    • Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2023-12-25  

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