2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K02092
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
柳井 章江 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20284854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠田 晃 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40192108)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | STB / HAP1 / 消化管 / 食欲不振 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、2つの課題を行った。 【①マウスおよびラットの小腸粘膜下神経叢におけるSTB/HAP1の発現分布】これまでに、STB/HAP1がマウスおよびラット消化管にも分布しており、胃幽門腺細胞や腸管神経系の筋層間神経叢に豊富に発現していることを報告してきた。一方、腸管粘膜下神経叢におけるSTB/HAP1免疫陽性細胞の分布や同定はなされていない。そこで、マウスおよびラットの小腸粘膜下神経叢におけるSTB/HAP1の発現分布と神経化学的特性を明らかにすることを目的とし、実験を行った。その結果、STB/HAP1は、成獣マウスおよびラットの粘膜下神経叢で、高い発現を示すことが明らかとなった。HAP1免疫陽性の粘膜下ニューロンの割合は、成獣マウスおよびラットの腸管において有意な差はみられなかった。コリン作動性および非コリン作動性分泌運動ニューロンマーカーを用いて蛍光二重免疫染色法を行ったところ、これらのほぼすべてがSTB/HAP1と共局在していた。更に、血管拡張ニューロンマーカーにおいても、ほぼすべてがSTB/HAP1と共局在を示した。STB/HAP1が粘膜下神経叢の分泌運動ニューロンおよび血管拡張ニューロンに発現していることを初めて明らかにした。本研究課題により、STB/HAP1が、腸管神経系の粘膜下ニューロンの分泌運動および血管拡張機能を調節または保護する新たな可能性が示唆されたことを論文発表した(Neuroscience Research 2023 Jun;191:13-27.)。 【②ヒト組織に応用可能な抗HAP1抗体のスクリーニング】ヒト消化管におけるHAP1の詳細な分布は明らかではない。ヒト組織に用いることができる抗HAP1抗体をスクリーニングする目的で、使用可能な抗HAP1抗体および反応条件を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正常成獣マウス、ラット消化管におけるHAP1の分布を明らかにする目的で本課題を進行したところ、腸管神経叢のうち筋間神経叢だけでなく、粘膜下神経叢にもSTB/HAP1が豊富に分布していることが明らかとなった。その結果は、論文発表することができた(Neuroscience Research 2023 Jun;191:13-27.doi:10.1016/j.neures.2022.12.023.)。また、消化管の一部である成獣マウス舌神経節にもSTB/HAP1が分布していることを報告した(Brain Sciences 2023 13(2) 258-258. https://doi.org/10.3390/brainsci13020258)。これらの齧歯類消化管におけるSTB/HAP1の分布を基礎データとし、ヒト消化管におけるHAP1局在のスクリーニングにも着手している。本研究課題による成果を公表することができており、ヒトへの応用が可能になったことから、進捗状況として、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、マウスおよびラットの消化管を用い、胃粘膜細胞層や腸管神経叢にもSTB/HAP1が豊富に分布していることから、STB/HAP1が胃内分泌液の調整や消化管の運動にも関与する可能性が示唆された。今後は、マウス、ラットのデータを基盤とし、ヒト消化管を用いた解析を進める予定である。まずは、ヒト消化管のうち胃組織を用いて、HAP1免疫陽性細胞スクリーニングとその分布、どの細胞にHAP1が発現しているかを同定していく計画である。
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Causes of Carryover |
これまでにデータ蓄積のある解析方法および機器を用いたため、経費を節約しつつデータを得ることができた。免疫組織化学法においては、齧歯類組織とヒト組織では、抗原が異なるため、使用できる抗体が異なる。今後は、ヒト組織に応用可能な消化管各細胞マーカーを購入し、条件検討を行う予定である。
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Research Products
(12 results)