2022 Fiscal Year Research-status Report
デジタル技術を活用した仙台地方の印染型紙の調査とその伝承
Project/Area Number |
22K02101
|
Research Institution | Tohoku Seikatsu Bunka College |
Principal Investigator |
川又 勝子 東北生活文化大学, 家政学部, 准教授 (50347910)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 地域文化研究 / 染色 / 型紙 / 印染 / デジタルアーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、仙台地方に特有な染色特産品であった印染を地域の伝統染色文化財として保存し、この地方の染色文化を伝承することである。2022年度は、筆者らに寄託された印染型紙の中から帆前掛け染色に用いられた型紙(以下、帆前掛け用染型紙)のデジタルアーカイブ研究を行った。さらに、これまでに収録したデジタルデータを活用して、仙台地方の染色文化遺産を次代に伝える教育プログラム開発についても取り組み、また、新しい型紙デジタル画像を『仙台型染資料集ⅩⅦ』に収録した。 研究対象とした型紙は、長期にわたり使用され積み重ねて保管されたものであり、多数の粉塵が付着し、大きく折れ曲がるなど保存状態は良くなかった。そのため当年度は、帆前掛け用染型紙1,506枚のうち未着手であった920枚の浄化・整形作業(粉塵除去・型紙平坦化)を行い、整理された型紙から順に、写真記録・計測・文様等の調査を行った。また、型紙の保管方法についても検討した。染色工場では、専用の木製箱で型紙が保管されていたが、破損や虫害により長期保存に向かない箱が多数を占めた。新たな保存容器についての検討を行い、約76㎝×約49㎝と大型の帆前掛け用染型紙を約100枚ずつ収納できる中性紙保存容器を導入した。 次に、デジタルアーカイブ・データベース作成の工程として、後世に型紙文様を伝えるためのデジタル画像作成と保存を行った。帆前掛け用染型紙は容易に取り扱える大きさではないため、閲覧性を向上させるためにもデジタル画像作成は不可欠である。当年度導入したA2判対応大型スキャナを用いたことで、傷んだ大型型紙を効率よくスキャンでき、高度で精緻なデジタル画像を411枚収録することができた。 仙台地方の伝統染色を学ぶ教育へのデジタルデータの活用については、授業マニュアル作成とその利用法を検討し、共有ファイルを運用して共同利用できるようにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度の目標としていた、未着手の帆前掛け用染型紙920枚についての浄化・整理作業を全て終えることができた。また、これらの写真記録・計測・文様等の調査も行い、学会報告も行った (2022年度家政学会東北・北海道支部会、2023年度家政学会全国大会にも発表登録済み)。また、今後の型紙保存の方法についても検討した。 デジタルアーカイブ・データベースの作成については、大型スキャナを導入できたことから、これまで以上に迅速にスキャニングを進められ、精緻なデジタル画像を収録できるようになり、帆前掛け用染型紙全体の27%のデジタル画像の作成を終了した。 また、『仙台型染資料集ⅩⅦ』には、219枚の新しいデジタル画像(印染型紙文様)を収録した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度以降も引き続き、帆前掛け用染型紙を対象としたデジタルアーカイブ・データベース作成のためのデジタル画像保存と画像処理を行う。画像処理を効率よく行うために、液晶ペンタブレットを導入予定である。また、画像確認やデジタルデータ活用のための原寸大出力に用いる大判プリンタを導入する。またデジタルアーカイブデータの集約・公開には、高額なオーダーメイドのデータベースシステムが通常は用いられるが、本研究では汎用データベースソフトを用いる方法について検討したい。 帆前掛け用染型紙のデジタル画像保存と画像処理終了後は、印袢纏の染色に用いられた型紙の浄化・整理作業に取り組みたい。 さらに次年度以降も研究期間全体を通して、仙台地方の伝統染色文様を現代に活かすための活用方法、および、後世に伝えるための教育プログラム作成について検討し、研究協力者を募り随時実施する予定である。また、研究期間に得られた型紙画像データ等は、これまでに発行してきた『仙台型染資料集』の続刊に掲載する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス蔓延の影響により、予定していた学会発表がすべてオンライン発表となってしまったため、出張旅費を支出できなかった。また、2月~3月に予定していた研究協力者による型紙整理・調査が予定よりも少ない回数となった。これらのような理由により次年度使用の経費が生じたが、この経費は次年度の調査費用(中性紙保存箱費用、研究協力者謝金)として使用する計画である。
|
Research Products
(6 results)