2023 Fiscal Year Research-status Report
地域の食文化・習慣を考慮した近赤外分光法による調味料の客観的品質評価技術の確立
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22K02115
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
陳 介余 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (20315584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 函 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10315608)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 調味料 / 味噌 / 醤油 / 品質評価 / 近赤外 / スペクトル / 客観的 / 食文化・習慣 |
Outline of Annual Research Achievements |
味噌や醤油などの発酵調味料は、『和食:日本人の伝統的な食文化』において、陰の立役者的な存在である。発酵調味料の適切な品質評価は、和食の保護と継承、およびこれを利用した地域の活性化にとって欠かせない。本研究では、味噌や醤油などの調味料に含まれた味・香り成分及び外観特性と品評会での品質評価との関わり、さらにその可視・近赤外スペクトルとの関わりを明らかにする。また地域の食文化・習慣による調味料の品質評価の相違・特性およびその可視・近赤外スペクトルに及ぼす影響を解明しながら、多感覚性のある可視・近赤外スペクトルを利用した味噌・醤油の客観的品質評価技術の開発を試みる。 令和5年度では、4県の味噌・醤油協同組合の協力を得てそれぞれの品評会に出品された味噌・醤油試料を採集して、その風味成分及び外観値と官能品質評価との関連性を解析できた。味噌と醤油のいずれの場合、外観値と風味成分を用いてそれぞれ産地のものが分けられることができた。地域産調味料は独自の風味を有している一方、近似している風味成分組成もあり、地域の食習慣および地域の食文化の影響を受けていることが確認された。また官能評価との相関分析では、外観特性、味覚成分および無塩可溶性固形分などの値が高評価に寄与している地域、と風味成分あるいはアミノ酸組成が高評価に寄与している地域があった。さらにいずれの地域では、フルーティや甘い香りの揮発成分が高評価に寄与し、ファッティのような揮発成分が低評価に寄与していることが示された。またそれぞれの地域だけに低評価に寄与している呈味成分と揮発成分があることから、地域の評価基準と食習慣・食文化の差異が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の計画通り、4県の味噌・醤油協同組合の協力を得てそれぞれの品評会に出品された異なる地域の味噌・醤油試料を採集でき、そして、試料の色などの外観値および風味成分を様々方法で順調に分析できた。その風味成分及び外観値と官能品質評価との関連性についても、その解析と分析も計画通りに進んだ。味噌と醤油のいずれの場合、外観値と風味成分を用いてそれぞれ産地のものが分けられることができたことから、地域の食習慣・食文化の影響を受けられていることにより独自の風味特性を形成していることが示された。これらの研究結果は、本研究の目的とした地域の食文化・習慣を考慮した近赤外分光法による調味料の客観的品質評価技術の開発にとって必要な基礎データになる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、計画通り、引き続いて異なる地域の試料の採集を行い、その風味成分及び外観・物性等を各種機器で分析する上で、品質要素間の関係及び品評会での官能評価結果との関係を明らかにするとともに、各地域調味料試料の官能品質評価とスペクトルの関連性の解明および各地域に適した客観的な品質評価モデルの構築を試みる。具体的には、各地域の味噌・醤油協同組合主催の品評会に出品された味噌・醤油試料を収集してその風味成分及び外観・物性等を各種機器で分析する。近赤外スペクトルと品評会での総合的官能品質評価値の関連性、および機器で得た風味成分と外観・物性値の関連性の検討を行う。そして、各地域に適用する可視・近赤外分光法を用いた発酵調味料(味噌・醤油)の客観的品質評価モデルを構築すると同時に、地域の文化・習慣による官能品質評価の相違およびそのスペクトル分析と品質評価モデルに及ぼす影響を解明する。その結果を整理して系統的にまとめて国内外の学術会議での発表および科学雑誌に論文として投稿を行う。
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Causes of Carryover |
国際旅費の高騰により、予定していた国際学会に参加できず、残額が生じた。この差額は、今年度の学会参加および国際誌の論文校正費用などにあてる予定である。
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