2022 Fiscal Year Research-status Report
乳児におけるフラボノイドの直接的あるいは間接的な免疫調節作用
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22K02118
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
石坂 朱里 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助教 (30724463)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フラボノイド / ケルセチン / 乳児 / 胎児 / 乳汁 / 胎盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、主要なフラボノイドの1種であるケルセチン(QUE)を飼料に1%混餌し、母マウスの妊娠17日目から分娩後13日目まで自由摂取させ、母仔マウスにおけるQUEの生体内動態を究明した。 これまで我々は、QUE代謝物3種とアグリコンのみを定量対象としていたが、本年度はQUE代謝物16種が定量可能となったため、生体試料(乳汁、血液、および膀胱尿)に含まれるQUEを網羅的に解析した。その結果、乳汁試料からはQUEアグリコンと代謝物13種が検出された。興味深いことに、乳汁中QUEアグリコン濃度は約15μMと算出され、母マウス血漿中濃度の約115倍であることが明らかになった。また、総QUEに対するヘテロ抱合体(グルクロン酸と硫酸を併せ持つ代謝物)の割合は、血漿では94%と大部分を占めた一方で、乳汁では16%に留まった。対照的に、モノ抱合体の割合は乳汁で77%と算出された。これらの結果は、血中QUE代謝物が、乳腺や乳汁で脱抱合される可能性を示唆している。 また、仔マウス血漿試料からは、QUEアグリコンと代謝物12種が検出された。3'-メチルケルセチン 7-グルクロニド 4'-サルフェイトが最も多く、血漿中QUEの68%を占めていた。尿試料においては、母仔ともに、ケルセチン 7-グルクロニド 3'-サルフェイトが主要な代謝物であることが明らかとなった。興味深いことに、母に比べて仔マウスでは尿中QUEアグリコン濃度が高いことも示された。 以上をまとめると、QUE代謝物の網羅解析によって、母仔マウス生体試料中QUEの存在形態を詳細に明らかにすることができた。このことは、乳児におけるQUEの生理活性究明に今後つながる成果であると捉えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、生体試料中QUE代謝物の網羅的な解析が可能となり、母仔マウスにおけるQUEの生体内動態について新規知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に沿って、仔マウスでのフラボノイドの生体内動態についてさらに詳細な解析を進める。乳児だけでなく胎児にも着目し、胎盤経由でのフラボノイド移行についても究明する。また、乳児期の感染症予防や免疫調節にフラボノイドが寄与するか否かについて、特に消化管内での生理活性に着目して検討を進める。
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Causes of Carryover |
人件費を計上していたが、計画変更により不要となった。
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Research Products
(7 results)