2022 Fiscal Year Research-status Report
Interrelationships between major local industries and family changes-focusing on female labor and family relationships-
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22K02120
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 宏子 和洋女子大学, 総合研究機構, 研究員 (60165818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 由貴子 和洋女子大学, 総合研究機構, 研究員 (50331468)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 女性労働 / 基幹産業 / 家庭内労働 / 労働配分 / 世代間関係 / ジェンダー / 家族変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域の基幹産業の盛衰と家族変動との相互関係について、女性の農業労働や農外就労、家事・育児等の家庭内労働の夫婦・親子間の労働配分の変化、家庭内外における女性の労働の変化が世代間関係やジェンダー関係に及ぼした影響を明らかにすることを目的としている。本研究の初年度は、モノづくり地域の基幹産業の変動、女性労働、家族変動の関連性に着目した知見が蓄積されている京都西陣、栃木県と茨城県の県境に位置する結城紬産地、福井県内陸部の繊維産業地域、岐阜市の既製服産地などの繊維関係の地場産業が盛んな製造業地域について先行研究を収集し、検討・分析した。 第1に注目したのは、岐阜市の婦人や子ども向け既製服の一大産地に密着して、直系家族の女性の就業パターンを明らかにした『地域産業の盛衰と家族変動の社会学』(前田尚子,晃洋書房,2018)である。前田は、産業時間、世代、家族戦略という3つの視点から、在来的生産システムの盛衰と家族変動のプロセスを分析し、織物業や縫製業などの自営業では女性の持つ技能を軸として家庭内の労働力配分がなされていること、この労働配分は世代交代していくこと、世代間の相補的就業が直系家族の戦略的行動となっていることを示した。第2に『在来産業と家族の地域史-ライフヒストリーからみた小規模家族経営と結城紬生産』(湯澤規子,古今書院,2009)に注目した。湯澤は結城紬産地では、家族内で高い技能を持つ者の仕事が円滑に運用できるよう、夫も含むそれ以外の家族成員がさまざまな仕事や家事を臨機応変に分担し合う「技能に規定された分業」が行われていることを明らかにした。この他に『家族・労働に及ぼす技術・経済的変化の影響-西陣の賃機の場合』(T.K.ハレブン,『思想』768,1988)、『織物工女の就業と家族経験-近代家族規範の検討』(木本喜美子,大原社会問題研究所,2012)を分析、検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度である2022年度は、繊維関係の地場産業が盛んな製造業地域における先行研究の収集・分析を、京都西陣、栃木県と茨城県の県境に位置する結城紬産地、福井県内陸部の繊維産業地域、岐阜市の既製服産地の4つの地域について予定通り進め、基幹産業の変動、女性労働、家族変動との関連性を詳細に検討することができた。そして、農村地域・農村家族における先行研究の収集をはじめることができた。 このように繊維関連の地場産業が盛んな製造業地域における女性労働と家族関係に関する先行研究の収集・分析は順調に進めることができたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、長年にわたる研究協力者(海外の共同研究者)の韓国公州国立大学教授チェ・ジュンヨル氏およびミン・ビョンソン氏、韓国忠南国立大学准教授キム・ジュヒョン氏らとの韓国調査・共同研究を行うことはできなかった。また、ソウルでの日韓合同学術研究会を開催することもできなかった。このため、チェ・ジュンヨル氏とミン・ビョンソン氏らとは2022年8月12日と12月18日にZoomによる日韓合同オンライン学術研究会を開催した。また、キム・ジュヒョン氏とは2023年2月19日(日)にオンラインで研究会を行い、日本と韓国における女性の地場産業における労働、家事・育児等の家庭内労働の夫婦間・親子間の労働配分の変化、地場産業の世代間継承プロセス(家業の継承)などについて研究報告とディスカッション、情報交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、製造業地域における女性労働について研究を継続するとともに、令和4年度に収集した水稲単作地帯である山形県庄内地方、青森県津軽地方、山梨県勝沼地域の農家の女性労働に関する先行研究を分析し、①農村地域・農村家族では「家」に埋め込まれ、家族従業者として義父母や夫に雇用される無償労働の提供者であった農家女性の労働は注目されることがなかった実態、②「農業労働」と「家事労働」という二重の肉体的負担を負った農家女性の労働実態と意識、③家族農業経営においてジェンダー・バイアスから性別役割分業が生じる過程、④農村が劇的変化を遂げた70年代における女性労働の状況、⑤家庭内外における女性労働が世代間関係やジェンダー関係に及ぼした影響などについて分析、考察する。 また、1980年代から40年間にわたって追跡調査を実施してきた静岡県藤枝市岡部町の1970年代から今日までの産業構造と就業構造の変化、兼業化の推移などについて、①温州ミカンから茶生産への転換期、②茶生産の発展期、③茶生産の隆盛期、④茶生産の停滞・衰退期、の4期に分けて、基幹産業の変動と基本的な家族変動について明らかにする。 さらに、「地域の基幹産業の盛衰と家族変動との相互関係」に関して特徴的な国内の事例を収集・視察し、地域の基幹産業を女性労働がどのように支え、家事・育児・介護などの家庭内労働の世代間・夫婦間配分をどのように形成・変更したか等について文献研究および質的調査を行い、最終的に研究結果を報告書としてまとめる。 また、研究協力者(海外の共同研究者)である韓国公州国立大学教授チェ・ジュンヨル氏、韓国忠南国立大学准教授キム・ジュヒョン氏らと日韓の中山間地域における農村家族・農村女性の視察・調査を行い、日韓比較研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、長年にわたる研究協力者(海外の共同研究者)である韓国公州国立大学教授チェ・ジュンヨル氏、韓国忠南国立大学准教授キム・ジュヒョン氏らとの韓国人口減少地域の視察や調査を行うことができなかった。また、今年度予定していたソウルでの日韓合同学術研究会を開催することもできなかった。さらに令和4年度も多くの国内や海外の学会や研究会はオンライン開催となった。このような理由から、学会参加費や旅費の支出額が少なくなり、次年度使用額が生じた。 令和5年度は、国際学会や国内学会への対面参加、国内の女性労働が重要な役割を担う製造業地域や農業地域への視察、韓国への視察や研究集会の開催を行い、日本と韓国における女性労働の実態と変容、家事・育児等の家庭内労働の夫婦間・親子間の労働配分の変化、地場産業の世代間継承プロセスなどについての研究報告とディスカッション、情報交換を行っていく予定である。
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