2022 Fiscal Year Research-status Report
Indexing the Kansei value of traditional textiles based on the consumption process for sustainable fashion
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22K02180
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
與倉 弘子 滋賀大学, 教育学系, 教授 (50165784)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 綿クレープ織物 / 伝統織物 / 素材特性 / 感性評価 / 消費者教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、持続可能なファッションを推進するために、消費過程を踏まえた伝統織物の感性価値の指標化を目的とする。伝統織物としての綿クレープ織物について、着用から廃棄に至るまでの素材特性変化に着目し、着用時に確認する感性価値の指標化を進め、織物の基本設計や着用時間を軸として感性価値を総括する。消費過程における感性価値を明確にして、着用期間の長期化を勧める消費者教育を通して長く大切に着る消費者意識の醸成に繋げることを目標とする。 本年度は、比較的短期間の着用による布の性能変化を捉えるため、綿クレープ織物を用いた婦人用ルームウェアの繰り返し洗濯試験(20回)を実施した。繰り返し洗濯試験および着用試験(4週間)後のルームウェアから試料布を採取して、KES-FBシステムにより素材特性変化を測定した。繰り返し洗濯による曲げ特性の変化については、これまでの紳士肌着の素材特性変化と同様の傾向が示された。洗濯・着用条件の異なる試料布について、20歳代の女子大学生を被験者として正規化順位法による布の触感評価を実施した。また、布の触感評価と素材特性・基本風合い値との関係について検討した。婦人用薄手布としての綿クレープ織物(高島ちぢみ)の性能評価について、 これまでの研究成果の概要を日本衣服学会誌に解説として上梓し、研究成果を公開した。 これと並行して、伝統的綿織物を用いた中学校技術・家庭科家庭分野の教材開発と公立中学校における授業実践を行い、伝統的な綿織物を教材とした授業が中学生の衣生活意識に及ぼす影響について、日本家庭科教育学会第65回大会で報告した。伝統的綿織物を用いた被服製作実習は衣生活行動に主体的に取り組む意識を高める傾向が捉えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、比較的短期間の着用による布の性能変化を捉えるため、綿クレープ織物を用いた婦人用ルームウェアの繰り返し洗濯試験を実施した。繰り返し洗濯試験および着用試験後のルームウェアから試料布を採取して、KES-FBシステムにより素材特性変化を測定した。また、20歳代の女子大学生を被験者として、洗濯や着用条件の異なる試料布について、正規化順位法による布の触感評価を実施した。繰り返し洗濯によりたて糸方向の曲げ剛性が減少し、滑らかさや柔らかさの主観評価値が増加する傾向が捉えらた。これと並行して、伝統的綿織物を用いた中学校技術・家庭科の題材開発と授業実践を行い、伝統的な綿織物を教材とした授業が中学生の衣生活意識に及ぼす影響について、日本家庭科教育学会第65回大会で報告した。現在同学会誌に研究成果を投稿中である。 以上のように、布の力学特性・表面特性については比較的短期間の性能変化の範囲と特徴を評価することができた。消費者の環境配慮意識の醸成に繋がる消費者教育の題材開発・家庭科における授業実践も進めており、概ね順調に進展していると考える。しかしながら、本年度は滋賀大学教育学部の校舎改修のため実験装置を稼働できない時期があった。そのため、本年度購入した装置で測定する予定であった布の熱・水分移動特性の変化については充分に検討でなかったことから、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年以降も着用試験・洗濯試験、古着の収集と素材特性の計測を継続し、評価者の増員、素材特性の測定項目の改善など、質・量ともに充実を図る。触感評価・着用感評価と素材特性を関連付けて、繰り返し着用時に確認する感性価値の指標化を行う。また、糸や繊維の特性変化を測定して、綿織物の疲労現象のメカニズムを考察する。さらに、布おむつやタオルなどの広範囲な伝統的綿織物の性能変化、廃棄衣料の素材特性に基づくアップサイクルについても検討する。 これと並行して、消費者の環境配慮意識の醸成に繋がる消費者教育の題材開発・授業実践を積み重ね、持続可能なファッション素材としての伝統的綿織物を提案する。
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Causes of Carryover |
素材特性の測定に必要な消耗品の追加購入を予定していたが、年度内に追加で必要な消耗品が生じなかったため、次年度助成金と合わせて使用する。
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Research Products
(3 results)