2022 Fiscal Year Research-status Report
Prospects for Youth Work from Cooperative Inquiry with Youths in Rural Areas
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22K02198
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
辻 智子 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20609375)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 青年教育 / 地域青年活動 / 「地方」の若者 / レポート / 全国青年問題研究集会 |
Outline of Annual Research Achievements |
1955~1990年に作成・共有されてきた地方の青年たちの作文(レポート)の整理・分析・考察と、それをもとにした地域青年教育の現代的課題の検討および今後の展望に関する対話・議論を試みる本研究の2022年度の研究活動の実績は大きく以下の3つである。 (1)基礎的資料の整理と活用に向けた整備:1万3千余の基礎データ(エクセル)を整備しデータ資料集を作成した(『全国青年問題研究集会レポートの資料(データ)(開催年別・都道府県別一覧)第1回~第34回、1955年~1989年)』2023年3月)。(2)ヒアリング調査:北海道内の2つの自治体においてヒアリング調査を実施した。1つは、人口約3千のN町で、地域おこし協力隊として活動している若者6名と、地域おこし協力隊事業にかかわる町職員若干名に話をうかがい、文字起こしをした上で分析・考察を行った。もう1つは、人口約6千余のT町で、教育委員会において若者事業にかかわる町職員に話をうかがった。あわせて、公民館を訪問し、地域住民と町外から滞在している若者(大学生)との協同的なプロジェクトのミーティングに同席させていただいた。以上の2町には、今後も継続的に足を運び、調査等をさせていただく予定である。(3)研究の成果の発信:青年たちの作文(レポート)の分析・考察をもとに、論文1本(「地域青年活動におけるジェンダー問題を問う学習実践―1970~1980年代の女性たちの経験から―」日本教育学会『教育学研究』第89巻第4号、2022年12月)、学会発表1回(子「地域青年活動と学習論の系譜」日本社会教育学会2022年9月)を行った。本研究の準備過程での作業を元に、論文「1950年代前半期に於ける青年教育の模索―全国青年問題研究大会開催経緯にそくして―」『北海道大学大学院教育学研究院紀要』第140号、2022年6月)も発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していたデータの整備は予定通り終えることができた。全数データは確認も含めて整備が終了し、都道府県別の整理もほぼ終了したといえる(確認作業が残っている)。付加的な情報(市町村名・青年団体名、年齢、職業など)の入力・整備は継続中である。 インタビュー調査は、北海道内に限定されたものの複数自治体において実施することができた。特に、インタビュー対象者との関係構築はスムーズに行うことができたと評価しており、これをベースに今後も関係を維持し、より地域に深く入っていくような調査が可能になる見通しを得ている。他方、当初は、沖縄と秋田でのインタビュー調査の実施を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の影響が残る中で、実現に至らなかった。2023年度に繰り越す形で実施したいと考えている。本研究の研究協力者である日本青年団協議会および日本青年館とは随時、連絡や打ち合わせを行い、継続的に共同的な討議および研究・実践活動(地域で活動する若者団体の集会事業、若者団体の事例調査など)行っており、今後の研究活動の基盤を確固たるものにできていると考える。 研究成果の発信については、データを整備できたことで、そこからさまざまな分析・考察が可能となる状況ができたことで、内容の異なる2つの成果発表(論文1本、学会発表1本)を行うことができた。ここで紹介する一次資料、とりわけ論文化したものについては、従来、広く周知されていない内容であり、今回、少しずつでも研究成果として発信することができたことは意義深いと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の3つの柱に沿って進めてゆく。 (1)作文(レポート)データの整備と活用に向けたさらなる環境整備:基礎情報のデータ入力と共有は既に終了しているが、付加的な情報の入力と確認・整備は、引き続き今年度の研究活動として実施予定である。その際、執筆者の基本的な属性だけでなく、作文(レポート)の内容にそくした傾向の分析・考察をおこなってゆきたいと考える。 (2)作文(レポート)データの分析・考察の研究成果の発信:上記(1)を受け、具体的には、以下の2点を研究のテーマとして想定している。1つは、「共同学習」の理解についてである。1950年代後半から1960年代において、地域青年団や青年学級等に関わる青年たちの中で「共同学習」がどのようなものとしてとらえられ実践されていったのか、を資料にもとづいて明らかにすることである。この点に関わる実証的な研究は、従来、個別の経験など断片的なものを除けば、それほど蓄積されてきていない。もう1つは、青年議会、青年学級、子ども事業といったいくつかの具体的な取り組みの広がりとその展開について、現代的な課題との関係も視野に、地域におけるその経験の蓄積を分析・考察したい。 (3)地域でのグループインタビュー調査:上記のレポート分析と関連付ける形でグループインタビューを実施する。上記(1)において、作文(レポート)の蓄積が多い自治体が明らかとなってきた(福島、秋田、熊本、長野、新潟、福岡、徳島、石川、福井)。これらを重点的に詳細に分析しつつ、現在、当該地域など地方で活動を展開している青年団体のメンバーと、教育委員会や社会教育施設を中心とする行政職員との対話的・議論的なインタビュー調査の実施を実現に移す予定である。新型コロナウイルス感染症の拡大が抑止されれば実現可能と考えている。
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Causes of Carryover |
旅費計算の手続きにおいて使用見通し額と予算額の不一致による。次年度以降は概算請求や打切り請求等により予算と一致した使用を行う。
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Research Products
(3 results)