2023 Fiscal Year Research-status Report
教育・福祉における子ども・若者の地位と現代福祉国家論の構築
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22K02218
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
中嶋 哲彦 愛知工業大学, 工学部, 教授 (40221444)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 子どもの権利 / 独立権利擁護機関 / こども基本法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 モンゴルにおける子どもの権利擁護と子ども支援活動の調査 ウランバートルにおいて教育総合庁j、家庭子ども青年開発庁研究研修所及び子どもの人権委員会及(以上公的機関)並びに教育協力協会、SavetheChildren、MagicMongol(以上NPO)を訪問し、子どもの権利擁護及び子ども支援活動の状況について聞き取り調査を行った。このうち、子どもの人権委員会では、同委員会が独立子どもの権利擁護機関(Independet Human Rights Institute for Children)として20年間の活動実績について説明を受け、2023年度報告書(英文)を入手した。モンゴルにおける独立子どもの権利擁護機関の活動については情報がきわめて少ないが、非欧米圏の事例として貴重であるため、今後継続的に調査を行う。また、青年開発庁研究研修所では、共同研究を継続的に行いたい旨の提案を受け、これに応じた。その一環として、日本では知られていないモンゴルの子どもの権利擁護関係法律(モンゴル語)の提供を受けた。帰国後これを日本語に翻訳した(未発表)。 2 子ども基本法・こども家庭庁設置法の検討 2023年4月1日に施行されたこども基本法・こども家庭庁設置法を、子どもの権利保障の視点から検討した。これらの法律では子どもの意見表明権尊重が理念的に確認されている一方、それを権利として保障するための具体的な手続きがほぼ存在しないことを指摘した。 また、こども基本法に基づいて策定されたこども大綱に採用された政策カタログを検討し、同大綱では子育て支援・少子化対策に重点が置かれている一方、子どもの市民的権利保障の視点が希薄であることを明らかにした。これらは、一定程度福祉施策を展開する一方で、市民的権利を制約しまたは促進することのないある種の福祉国家の特徴が典型的に現れていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(2022年度)はコロナ禍の影響で海外調査が困難であったが、今年度はその間の研究の進展をもとに調査先をモンゴルに切り替えて調査を実施したところ、日本ではほぼ知られていない知見を得ることができた。 なお、2023年度においては、学校における子どもの権利保障・擁護の仕組みとしてスクールロイヤー制度を、本研究の一部として進めた。その成果を基礎に基づいて、共同研究者が研究代表者となって科学研究費補助金を応募したところ2024年度採択された。2024年以降は研究分担者としてこれに参加し、本研究課題とは区別して進める。
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Strategy for Future Research Activity |
1 モンゴルの独立子どもの権利擁護機関の活動状況を継続的に調査する。 2023年度の調査では独立子どもの権利擁護機関の活動を知ることができた。これは当初予想していなかったものであり、日本国内にも知見は少ない。この調査で英語による活動報告書が入手できたので、これを分析するとともに追加の調査を行う。ただし、コロナ禍などの状況によっては予定を変更する。 2 2023年に策定されたこども大綱の実施状況について調査する。 こども大綱関連予算とその執行状況について2024年度以降も継続的に調査する。また、同大綱には盛り込まれなかったものの国民から要望のある子ども施策について、政府・国会がどのように応答していくかを継続的に観察する。
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Causes of Carryover |
2022年度において海外調査を予定していたが、コロナ禍のため出張を延期したため、次年度使用額が生じた。2023年度は当初予定していた出張先をフィンランドからモンゴルに変更したため、予定よりも少額の支出となった。また、文献資料を所属研究機関の経費で購入できたため、科学研究費補助金からの支出は抑えられた。 2024年度もモンゴル調査予定しており、通訳を依頼できるモンゴル人研究者にも日本から同行を求めるため、旅費を確保する意味で、2023年度中の支出を抑制した。
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