2024 Fiscal Year Research-status Report
数学科授業に関する教授言語にみる社会文化的要素の構造:日独両国の比較を手がかりに
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22K02255
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| Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
舟橋 友香 奈良教育大学, 数学教育講座, 准教授 (30707469)
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| Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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| Keywords | 数学授業 / コモグニション論 |
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,数学科授業における教授言語及び数学科授業についての記述で用いられる教授言語にみる社会文化的要素が,教師の中でいかに構造化されているのかについて,日独両国の比較を手がかりにして,日本の特質を明らかにすることを目的とする. 令和6年度は,以下の3つの事柄に取り組んだ. 第一に,理論的枠組みの見直しを行い,Sfard(2008)によるコモグニション論を採用することとした.そのために,まず,コモグニション論の基本的立場について,スファードが依拠する諸概念との関係を踏まえながら,重要な概念の全体像を記述した.次に,コミュニケーションの効果を高めることに寄与するディスコース的動きの特徴について整理した.具体的には,対象化のプロセスと,対象化の中でも行為者に焦点をあてる主体化のプロセス,さらに主体化によって導かれるアイデンティティの概念について記述した.最後に,コモグニション論に基づく研究の展開を概観し,日本におけるアイデンティティを視点とした研究の展開の必要性を指摘するとともに,ディスコース的な産物としてのアイデンティティの捉えのもとで,文化的な営みとしての日本の算数・数学授業の特徴を分析することの可能性について指摘した. 第二に,比較文化的研究により指摘されてきた日本の数学授業にみる学習者像を問い直すための装置として,コモグニティブな立場から学習者像を捉える視点を提示した.特に,Sfard & Prusak (2005) による「指示アイデンティティ」と「実アイデンティティ」の視点を援用することで,これまで議論されてこなかった日本の数学授業の特徴の顕在化が期待できることを指摘した.そのために,中学校第 2 学年の 「連立方程式」に関する授業の後に実施されたインタビューデータを分析し,ある一人の生徒のナラティブを事例的に示した.
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的枠組みの見直しを行ったが,比較文化的研究により指摘されてきた日本の数学授業にみる学習者像を問い直すための視点が明確となった.具体的には,Sfard & Prusak (2005) による「指示アイデンティティ」と「実アイデンティティ」の視点を援用することの有用性について,事例的に示すことができた.
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| Strategy for Future Research Activity |
今後は,コモグニション論における特にSfard & Prusak (2005) による「指示アイデンティティ」と「実アイデンティティ」の視点を用いて,日本とドイツの数学授業に関するデータセットの分析を実施する.
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| Causes of Carryover |
2つの国際学会への参加を当初予定していたが,業務との兼ね合いから1つのみとなったため.当初予定していなかった国際学会が次年度韓国で開催されるため,そちらへの参加費用とする予定である.
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