2023 Fiscal Year Research-status Report
Study on method development of the indigenous environmental education and its succession between generations through recollection method of local memory in Amami group of islands
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22K02258
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小栗 有子 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (10381138)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | indigenous knowledge / 環境教育 / 奄美群島 / wild pedagogies / 身体 / 世代間継承 / 環境文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、高齢者らが身体的に獲得してきた「土地に根ざした知(土着知)」の見える化を進めるために、三つのアプローチに取り組み、内二つは新たに手掛けたものだ。 一つは、奄美群島の環境文化を扱った社会人向け教育プログラムを事例に土着知の視点を位置づけた論文を発表した。二つ目は、英語圏環境教育研究の最新の知見にアイデアを求める方法で、wild pedagogiesおよび先住民環境教育研究者との研究交流を対面とオンラインの双方で進めた。以上の成果は、英語ジャーナルにまとめながら「土着知」を捉える理論枠組みに組み込み、世代間継承を可能とする教育方法の開発に生かすことになる。最後は、高齢者の側ではなく、「土着知」を継承する側に着目したアプローチである。特定したい「土着知」を文献の知識や調査者の参与観察にのみ頼るのではなく、「土着知」の継承を実際に望む島の生活者・青壮年層と協働して明らかにしていく方法だ。これは、試行実践予定地を調査するなかで編み出した方法であった。今回試行実践のフィールドに選んだ与論島において、協力頂く方(30代~50代)6名を選定し、継承したい「土着知」についてワークショップ形式で検討を重ねた。内容を整理・分類した検討結果は、高齢者集団の経験を追体験する「学習空間」として再現可能なものとしてさらに精査し、「イモと植物を使った自給自足体験」をテーマに高齢者3名と協力者5名とで試行実践を行った。本年度は、その試行実践の振り返りを通して得られた知見が研究成果となった。 また、以上最後のアプローチは、高齢者たちの経験した学習空間を再現し、その空間を用いて多世代が共に学ぶ試行実践でもあり、次年度以降に本格展開していくための準備でもあった。さらに次年度は、フィールドを与論島をさらに広げて研究を進めていくために、その準備として喜界島の調査と協力者の選定等を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、次の3つの課題を段階的に取り組みながら遂行する計画である。①高齢者たちの経験した学習空間(土着的環境教育)の再現:身体的に獲得してきた「土地に根ざした知(土着知)」の見える化、②①再現した学習空間を用いて多世代が共に学ぶ試行実践:世代間継承を可能とする教育方法の開発、③試行実践の教育効果の検討と研究成果の発信である。このうち、本年度は、①については、二つのアプローチで取り組み、②についても、①の検討と同時に進める形で、多世代で共に学ぶ試行実践を実施した。また、③については、研究の途中経過について、国際環境教育会議等で発表し、今後の研究に生かせる新たな知見を得ることができた。さらに、次年度以降の新たなフィールド開拓に向けた調査研究も進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究を推進するためのフィールドを広げていく。そのために各々のフィールド調査と試行実践に向けた準備を進めていく。また、異なるフィールドの比較が可能な枠組みの検討必要であり、まずは、高齢者という属性を定義するために奄美群島の社会生態史を改めて整理し、時期区分をより正確に設定のうえ「土着知」の見える化の精緻を高めていけるようにしたい。 さらに、世代間継承を可能とする教育方法の開発に向けて、二つのことの検討を進める。一つは、高齢者集団を組織化する方法を地域回想法の知見も活かしながら検討を進めること、二つには、多世代の属性についても特定しながらフィールドごとに組織化していくことである。そのうえで、協力者との共同的な研究を実施していく。
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