2022 Fiscal Year Research-status Report
小規模若者支援団体における支援実践の実態解明と実践の持続可能性実現に関する研究
Project/Area Number |
22K02264
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
阿比留 久美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30454002)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南出 吉祥 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (70593292)
原 未来 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (90760603)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 小規模若者支援団体 / 若者支援 / 冗長性 / 委託事業 / 後継者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、小規模若者支援団体の実践における若者支援の実態と個々の若者のニーズに即した支援と学びに資する実践のあり方を探るものである。 初年度である2023年度は、①若者支援団体・当事者団体の全国交流会に参加した団体の分析、②2年目以降のヒアリング調査に向けてのパイロット調査を実施した。 第一に、小規模若者支援団体の全体像をつかむために、若者支援団体・当事者団体の全国交流会として2006年から継続的に開催されてきた若者・ひきこもり協同実践交流会(若者協同実践全国フォーラム主催)の記録にもとづき、若者にかかわる小規模団体の全体像を把握した。 その分析の結果、小規模若者支援団体の活動は、地域・主催者・参加する若者によって多様に展開されていた。大規模な若者支援団体の活動は、地域若者サポートステーションなど国・地方自治体の委託事業を受けて実施することが多い。そのため、活動内容・対象が限定される傾向にある。それに対し、小規模若者支援団体では活動に占める委託事業の割合が相対的に低く、自主事業として活動をしていることも多いために、多様な活動内容が存在しそれとともに、活動内容・対象に冗長性がある。また、冗長性が高く、活動の内容や目的が固定的・明示的にせずに実施しているために、スティグマを付与しないかたちでの参加を可能にしている側面がある。その結果として、政策的課題ではとらえきれていない、当事者あるいは地域のニーズに個別具体的に応えていることがその多様性につながっていることが見えてきた。 第二のパイロット調査としては、財政規模500万円以下で20年間活動を実施してきた若者支援団体に、活動開始の契機・展開・活動終了に至る経緯について詳細な聞き取りをおこなった。そこからは、活動の拡大が運営者の負担につながり、それが活動継続のネックになりうること、活動の長期化に伴い後継者問題が登場することが見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、初年度の課題として、①先行研究の検討と概念の整理、②小規模若者支援団体に対するヒアリング調査枠組みの設定、③第一次ヒアリング調査の実施と分析:三大都市圏における実践事例の調査、④関連領域の文献・資料の収集と検討を設定していた。 そのために、2022年度は、①若者支援団体・当事者団体の全国交流会に参加した団体の分析、②2年目以降のヒアリング調査に向けてのパイロット調査を実施し、おおむね研究は順調に進んでいる。 関連領域の文献・資料の収集および検討については、若者支援については就労支援を中心とした大規模な若者支援団体の研究が大部分を占め、小規模若者支援団体の研究自体がほとんど存在していなかったため、当初関連領域の選定および先行研究の収集が難航した。しかし、全国交流会に参加した団体の分析によって小規模若者支援団体の全体像をつかむとともに、パイロット調査によって小規模若者支援団体の活動の展開過程やそこで直面する課題の把握ができたために、現在は順調に資料の収集と検討が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、①2022年からおこなってきた実践交流会参加団体の分析、総括、②ヒアリングのための理論枠組みの設定とヒアリング調査の実施に取り組む。 小規模若者支援団体のヒアリング調査の本調査を開始し、政策課題に乗りづらい当事者・地域ニーズを浮かび上がらせるとともに、そのニーズに応える活動を継続していくための基盤がなにかを検討していく。 ただ、2023年度、研究代表者が特別研究期間を取得し、海外に渡航しているため、対面でのヒアリング調査の実施が困難となった。特別研究期間の取得は当初予定されていなかったため、本年度はヒアリング調査実施の予定回数を減らし、2024年度にそのぶんのヒアリング調査を実施し、研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
4142円と少額ではあるが残額がでた。研究を進めていく上で妥当な文献が2022年度には若干少なかったことが原因となっている。本年度に新たに生じた必要な書籍の購入に使用する予定である。
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