2022 Fiscal Year Research-status Report
大正新教育に与えた京都学派の思想的影響の検討-成城小学校を中心に-
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22K02265
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
足立 淳 朝日大学, その他部局等, 准教授 (50707528)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 大正新教育 / 成城小学校 / 村上瑚磨雄 / 小西重直 / 西田幾多郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
採択された研究計画に基づいて、草創期の成城小学校において重要な役割を演じた教師の一人であった村上瑚磨雄が遺した岡山大学附属中央図書館所蔵の個人文庫の調査やその他の論考・著作の収集と分析を進めた。 その結果、村上が、成城小学校に赴任する前、1910年代半ばに在籍した京都帝国大学文科大学文学部哲学科において小西重直や西田幾多郎の影響を受けて理想主義的な教育思想を形成していたこと、また、そうした教育思想が、成城小を創設した澤柳政太郎の科学的な教育研究の方針に対する批判と、村上が同校から離脱していく契機となったことが明らかになった。さらに、村上が起草に関わった成城小の創設趣意書のなかにも、澤柳が重視した科学的研究の方針を相対化し、理想主義的な教育思想との調和を図ろうとする思惑が込められていた可能性が見出された。 また、1920年代の成城小において活躍した教師の稲森縫之助に関する史料を閲覧するため、三重県津庁舎を訪問し、三重県庁環境生活部文化振興課歴史公文書班所蔵の文書の撮影と分析も進めた。 さらに、2022年9月6日に開催された国際教育史学会第43回大会のラウンドテーブルに日本チームの一人としてオンラインで参加し、日本の教育史研究についての報告 "Japanese Trends in Histories of Education" の一環として、近年の大正新教育史研究の動向について報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要においても述べた通り、採択された研究計画に沿って村上瑚磨雄に関する史料の収集と分析を進めた結果、当初の作業仮説が概ね妥当なものであったことが確認されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、採択された研究計画に沿って、草創期の成城小学校の教育研究の方針を巡る澤柳政太郎と教師たちとの相違を、彼らの論考や著作の分析を進めることで浮き彫りにするとともに、得られた知見を学会で報告し、研究論文としての投稿を目指す。 また、澤柳指導下の成城小におけるカリキュラム改革において中心的な役割を果たした教師たちの思想と実践が、それぞれ京都学派の思想的影響をどれほど受けていたのかを分析する。やや具体的には、成城小から研究叢書として刊行された教師たちの教育研究の成果を網羅的に分析し、その背景にあった教育思想が、西田幾多郎や小西重直といった京都帝国大学を発信源とする時代思潮からいかなる影響を受けていたのか、あるいは受けていなかったのかを検証する。
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Causes of Carryover |
現地での参加を予定していた国際学会にオンラインで参加することとなり、当初の予算より旅費の支出が少なくなったことが次年度使用額が生じた主な理由である。翌年度分として請求した助成金と合わせて、学会や史料調査の旅費に充当するとともに、老朽化している撮影機材の更新や購入の費用として使用する予定である。
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