2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K02307
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
田中 智輝 山口大学, 教育学部, 講師 (60780046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村松 灯 帝京大学, 理工学部, 講師 (70803279)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 知的解放の教育思想史 / 解放的教育学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、既存の権力関係からの解放や政治的主体化を企図した教育の理論と実践に着目し、その系譜を思想史的に把握することを通じて、解放の教育学が有する可能性と課題を明らかにすることである。1年目にあたる本年度では、教育を通じた個人の自由や自律の実現を目指した教育学の試みとして、批判的教育学の系譜を検討することを主な課題とし、文献の収集および検討を行なった。検討を通じて解放の教育学をめぐる思想史を描き出す際に焦点となりうるいくつかの論点を明らかにすることができた。また、当初の計画においては2年目以降に検討を予定していたポストコロニアルの教育思想を対象とし検討にも一部着手するなど、今後の研究の遂行に向けた予備的な考察も進めている。ただし、以上の取り組みを通じて得られた知見を学会発表や論文として公開するには至らなかった。よって、本年度の成果については次年度中に発表や論文執筆を行うこととしたい。 以上の文献資料の収集・検討に加えて、本年度においては、解放の教育学の系譜に位置づくものと思われる教育実践の事例を調査し、実践校への視察も実施した。事例の調査を通じて、国内外での先進的な試みについて関係者より新たな情報と知見を得られたことも重要な成果として挙げられる。こうして得られた知見をもとに、今後、検討すべき文献群や視察先(海外での実践を含む)の範囲を広げる方針で研究を進めることを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、これまで個々に検討されてきた解放や政治的主体化に向けた諸理論と実践を対象とし、思想史的洞察に基づいた包括的な解釈を提示することを試みた。とりわけ批判的教育学の系譜に着目し、再解釈に取り組むなど当初の計画に沿って研究を遂行することができた。また、解放の教育学の系譜に位置づくものと思われる現代の実践的試みについて、新たな情報と知見が得られるなど、次年度以降の研究遂行に資する進展も得られた。一方で、得られた成果の公開には至らなかったため、次年度中の公開に向けて準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究について、当初計画していたポストコロニアルの教育学についての検討に着手する。加えて、1年目に得られた研究の成果についても学会発表および論文による公開を進めていきたい。また、新たに得られた実践事例について、視察を実施し、情報収集と検討にも取り組むこととする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた学会での研究発表を見送ったことに加え、研究の進展によって次年度に視察と資料収集のために新たに国外渡航を計画する必要が生じたため、本年度の予算を繰り越し、その費用に充てることとした。
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