2022 Fiscal Year Research-status Report
A Comparative Sociological Study of the Transformation of Agents Inheriting War Experiences and the Use of War Digital Information
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22K02330
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
村上 登司文 京都教育大学, 教育学部, 名誉教授 (50166253)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 平和教育 / 平和教育研究 / 平和教育学 / 戦争デジタル情報 / 戦争体験継承 / 戦争体験証言 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦後50年以上が経過して戦争体験者が減少する2000年代は、平和教育が過渡期を迎えたと言われる。過渡期の平和教育を停滞させることなく再構築するには、学術的研究のサポートが必要である。2000年代以降の平和教育研究の動向を明らかにするために、発行年が2000年から2022年までで、「平和教育」で検索される論文・書籍についてレビューを行った。 レビューにおいては、以下の平和教育研究課題についての研究成果を検討した。①子どもの発達段階に応じたカリキュラム開発、②戦争記憶の再活性化、③戦争の悲惨さを子どもに伝える方法、④平和構築者の育成、⑤平和で公正な社会・国際関係の構築、⑥実証検証を通じた研究などである。一方で、急変する社会変革に対応した研究成果を検証する。グローバル化における比較教育研究、情報化に対応した研究、地域社会と連携した研究などの研究成果もレビューの対象とした。 次に、戦争体験継承に有効とされる「戦争デジタル情報」の分析枠組を案出した。「戦争デジタル情報」は定義として、戦争を体験した人々が生存されなくなる過渡期に、戦後世代が、平和を考え守り抜くために参考となる①戦争の記録(戦争当時の資料や映像)や、②戦争証言アーカイブであり、インターネット上に作られたデジタル情報のことを指す。この「戦争記憶のアーカイブ」とは、戦争証言を収録したアーカイブであり、戦争体験者達が戦争体験について語った生の声を集めた資料庫である。戦争デジタル情報の分析指標として、9項目を取り出した。それは、開設時期、掲載主体、情報種類、証言種類、証言方法、体験証言数、証言配置(分類法)、動画証言収録時期、開設目的、等である。戦争体験証言動画を多く掲載しているのは、「NHK戦争証言アーカイブス」1334件(2023.5.6現在)、「広島平和記念資料館」655件、「沖縄県平和祈念資料館」102件、等である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度の進捗状況として、研究方法①継承エイジェントの転換については、戦争体験を用いて平和教育を行う手法が、深められてきたことを示した。戦争体験継承の過程についてのプロセス・モデルは、a)地域の体験や体験者個人の体験と自分自身とを重ねる。b)戦争被害と戦争加害を合わせた多角的視点から戦争を立体的に認識する。c)自分の戦争観を固定化せずに変わりうるものと認識する。d)戦争体験者・展示内容・他者と対話することにより、自分の戦争観を生成(再構築)していく。e)戦争の問題(戦争体験継承など)を自分の課題として、当事者意識を持って対峙し、平和のために社会参画する、などのプロセスが想定されていることを述べた。 研究方法②戦争デジタル情報については、新旧のエイジェント間での完全な移行ではなく、戦争体験継承において両エイジェントがどう相互補完するかを分析する。2022年度は、戦争証言アーカイブによる戦争体験継承のネット資料を収集し分析した。 研究方法③国際比較調査については、2022年がコロナ禍下にあったため、台湾およびイスラエルを訪問することができず、進捗が遅れている。台湾の教育状況について文献調査を行い、日本植民地統治時期の集合的記憶の教育が、子どもの平和形成意識にどのような影響を及ぼすかを検討した。2023年4月に私事で台湾を訪問し、平和博物館の1つといえる「228国家紀念館」を実地調査し、展示内容を分析した。 研究方法④戦争デジタル情報の発信の1つとして、平和教育の公開オンライン授業を開設するために、シラバスや授業内容などの検討を行った。並行して、HP「平和教育の授業づくり~戦争を知らない教師が平和教育をどう行えばよいか~」の改訂作業を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も本研究では、①継承エイジェントの転換分析、②戦争デジタル情報の分析、③国内中学生の意識調査、④国際比較調査、⑤戦争デジタル情報の発信、の5つの研究方法で、2023年度からの3年間に渡って研究を進める。 研究方法①継承エイジェントの転換については、新旧のエイジェント間の完全な移行ではなく、戦争体験継承において両エイジェントがどう相互補完するかを分析する。2023年度も各継承エイジェントによる戦争体験継承の説明資料を収集し分析する。教育委員会による平和教育研修の目的・内容や、平和教育実践誌(『平和教育』1976年~2009年)で平和教育を始めようと思った理由を分析し、平和教育者による継承機能の分析を進める。 研究方法②戦争デジタル情報については、情報の全体像を整理するために、戦争デジタル情報の分類枠組を案出した。2023年度に、NHK戦争証言アーカイブス(約1400本)のどれが児童生徒向きか、また国内の平和博物館(約80館)が戦争体験証言をウェブ上にどのように掲載しているか内容構成を分析する。 研究方法③2024年度に行う国内中学生の意識調査によって、戦争体験の継承エイジェントの転換と戦争デジタル情報の利用が子どもにどのような啓発効果をもたらすかを分析する。全国4地域(東京、京都、広島、沖縄)の中学校で平和意識調査を行い、戦争デジタル情報と平和形成への当事者性との関連を明らかにする。 研究方法④国際比較調査については、2023年度に台湾の教科書の内容、平和博物館の展示内容をさらに分析する。日本植民地統治時期の集合的記憶の教育が、子どもの平和形成意識にどのような影響を及ぼすかを見るために、中学生意識調査の実施に取り組む。研究方法⑤戦争デジタル情報の発信のために、2023年度に平和教育の公開オンライン授業を始め、平和教育者の養成方法について検討する。
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Causes of Carryover |
2023年度に向けて次年度使用額が生じた大きな理由は、2022年度がまだコロナ禍下にあったため、外国への出張が難しく、台湾およびイスラエルを訪問することができなったことにある。本研究では、2022年度から4年間に渡って、①継承エイジェントの転換分析、②戦争デジタル情報の分析、③国内中学生の意識調査、④国際比較調査、⑤戦争デジタル情報の発信、の5つの研究方法で研究を実施している。 その内の研究方法④国際比較調査については、2022年度中に台湾とイスラエルに訪問する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で、両国で入国制限が続き、台湾・イスラエルへの研究計画に対応した実地調査を実施できなかった。2023年度は、海外への出入国の制限がなくなり、調査のための海外渡航がより簡便となったので、海外実施研究を行う予定である。。 2023年度の使用計画として、台湾については、日本植民地統治時期の集合的記憶の教育が、子どもの平和形成意識にどのような影響を及ぼすかを明らかにする中学生意識調査の実施を検討する。イスラエルについては文献調査により、ホロコーストや中東戦争の集合的記憶についての教育が、子どもの平和意識形成、及びイスラエル国内の和解にどのような影響を及ぼしているかを考察する。考察結果を実地調査で検証する予定である。
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Research Products
(2 results)